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災厄の魔法使い  作者: 沢地 アイ
1/10

生ける死者の旅

初の小説となります。異世界っていいな〜と想像を膨らませながら楽しく作っていきます。少しギャグ的で、少しダーク、シリアスもある舞台異世界のファンタジー小説です。どうぞよろしくお願いします。












復讐で40万人、八つ当たりの10万を含め、9つの頃、計50万人程殺した


罪の無い仲間を虐殺なんてされたら、どんな奴だって狂うぐらい腹が立つ筈だ


俺にとって、奴等の苦しむ顔は甘露、弾け飛んだ肉体からビチャビチャと激しく飛び散る血は、ワインのようだった


しかしそれは、一瞬、ほんの一瞬 心を満たすのみで

残った結果は、惨たらしく、虚しいものだった







災厄の魔法使い






それから400年、ヨハルは困っていた。魔法使いなら面白い物を出せと、子供達に無茶を振られたのである。しかも、それは同時に 「すごいもの」でなければならないらしい。

化け物でも錬成してやろうかと思ったが、流石にそれはマズイ。 ということで、杖を一振り。

途端に、ボフンッ という煙と共に、あるものが子供達の前に差し出された。

「なにこれ?」

「めっちゃ小ちゃくした月。」

「いらない。」

即座に飛んできたいらないの返事に、彼は「月の何が悪いんだ」と心の中で悪態をつきつつも、また杖を一振り。月をあるべき場所に、あるべき姿で帰してやった。

「せっかくの本物の魔法使いなのに...もっと、ドガーン!としたもの出してよー!」

と言われ、彼は少し悪戯っぽく、

「じゃあ何がいいか...あぁそうだ!北の大地で見たあのデッカ〜〜い化け物をここに出してやろう!凄かったんだぜぇ?牙がもう70センチぐらいあって...」

「お腹すいた!!一緒に食堂行こう!!」

話を遮るように、1人が必要以上に大きな声で言うと、僕も私も!と、賛同者、もとい 怖がり達が、ヨハルを促すように声を上げた。 ヨハルは子供達の本当の気持ちに勘づきつつも、気付かないふりをして、食堂へと歩き出した。

一目見ただけでそののどかさが窺える、ここ ティパニア は、まさに平和そのものだ。道端にある蓋無しの浅い側溝には透き通った水が流れ、店の前では人が和やかに談笑し、鳥達が気ままに歌い、気持ちのいい風に吹かれるまま振り向けば、そこには美しい野山が見える。あまり長居を好まないヨハルですら、ここに滞在してもう2週間になる。

「ヨハルおじさんの名字リリーっていうんでしょ?かわいいよねー!」 「ねー!」

「おじさんと言うな。ありがとね。」

旅をしているヨハルにとって、ここはかなり居心地が良かった。それは単に平和だからというだけではない。彼の故郷であり、同時に 復讐の血に塗れた場所 セテナ があるノーランザ地方から、遠く遠く離れた地であるからだ。

「(あれから400年、セテナから遠く離れたここじゃあ、俺の本名を知っても、いちいち騒ぎ立てる輩はいない。おかげで居心地は最高だが、このまま居つきたいとも思わない。 ....そろそろ発つか....。)」

そう思っていたヨハルの耳に、少し粗野だが、親しみに溢れている声が届いた。

「よーヨハル!またガキ達に付き合わされてんのか?お前も甘い男だねぇ。気晴らしって言っちゃあなんだが、どうだ!?一杯!たまには若ぇ男と飲んで、こう、フレッシュになりてぇのよ!」

「なァにがフレッシュだよ!昼間っから酒飲んで!悪ィけどガキのお守りしてるから無理。あっそうだ、俺明日発つからな。今までありがとよ。」

「は!!?おい嘘だろ?まだ一緒にまともに飲めてねぇってのに...。っていうか急なんだよ!」

その横からヌッと男が現れた。

「そうだぞ〜寂しいこと言うんじゃねぇよ酔いが醒める〜。」

酔っ払いが2人並んだことによる視界のくどさと強い酒の臭いに、ヨハルは少しめまいした。

「くっっさ!目も鼻も腐る!あっち行け!」

シッシッと追いやる仕草を見せると、2人は「旅人だからな...」と自分を納得させ、ヨハルにあつ〜い抱擁をし、「元気でな!」「また立ち寄れよ!」と 別れの言葉を述べ、また元の席へと泣きながら戻っていった。子供達はまだカウンターで注文をしている。自分が発つことを子供達に知られ、もし泣かれでもしたら、その後の夢見が暫く悪くなると思っていたヨハルは、ホッと胸を撫で下ろした。


「若い男」 と言われていたヨハルは、その通り、青年の姿をしている。みずぼらしくないよう、短めに整えられた煉瓦色の髪に、蔦のような翠の瞳。この容姿は、もう

380年前から変わっていない。


禁忌とされる不老不死の呪いを、自らにかけたからである。




死が訪れないということは、生きていないのも同然




「生ける死者」の道を歩もうとした訳は、彼のみぞ知る。

とかく彼は、また新しい世を巡るのである。



読んでくださり、本当にありがとうございます!短かったでしょうか...(汗)それでもなかなか苦戦いたしました...

しかしこれからもコツコツ楽しく書いていきたいと思っています!その時はまたどうぞご覧になってください^ ^

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