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ランドセルノート  作者: 天塚
7/21

家出計画

 ぼくのクラスには、『みんなで遊ぶ日』というものがある。これは毎週火曜日の昼休みに設定されていて、名前通り、その時間はクラス全員で一緒に遊ぶ決まりになっている。五年生でクラス替えがあったから、四月の時点では互いに名前しか知らないというような人も多かった。だけどこの時間のおかげで自然と話す機会が生まれ、一緒に遊んでいるうちにぼくたちはどんどん仲良くなっていった。人見知りのぼくにたくさんの友達ができたのも、この時間があったことが大きかったと思う。

「タッチ!」

「うっわ捕まった! ヘルプ! ヘルプ!」

 あちらこちらで、そんな賑やかな声が聞こえる。今日の『みんなで遊ぶ日』は、小体育館で氷鬼だった。体育館の四分の一くらいの大きさの小体育館内を、ぼくのクラスの面々が駆け回っている。氷鬼は鬼に捕まるとその場で固まらなければならず、再び動くにはまだ鬼に捕まっていない人からタッチしてもらわなければならない。ぼくは鬼から逃げつつも、隙を見ては固まっている人にタッチするということを繰り返していた。

「……」

 それはもちろん、すごく楽しい。だけど、少し前からぼくはなんとなく違和感のようなものを感じるようになっていた。こういう遊びは鬼と逃げる側との力が拮抗してこそ楽しいので、いつもいい勝負になるように鬼の数や人物を決めている。序盤はその通り互いに白熱した応酬を繰り広げていたのだけれど、なんだか今は明らかに鬼側が劣勢だった。鬼たちに、疲れが出てしまっているのだろうか。だとしたら、一旦集合して鬼をがらりと交代したほうがいいかもしれない。その提案を伝えようと、ぼくは隼人の姿を探した。隼人はクラスの中心人物だから、クラスで何かをするときには率先してみんなの前に立つことが多い。ところが小体育館内をぐるりと見渡しても、隼人の姿が見当たらない。あれ? 隼人は今日、たしか鬼の役割をしていたはずだったけれど……。そこまで思い至ったときに、鬼の劣勢のカラクリが解けた。

「隼人が、いないからだ……」

「ん? イオも思った? オレもさっきから、隼人の姿見えねーなと思ってたんだ」

 ぼくの呟きは、たまたま隣にいた翔太にも聞かれてしまった。運動神経抜群の隼人は、逃げる側にとってはかなりの脅威だった。その隼人がいないから、氷鬼のパワーバランスが崩れてしまっているのだ。

「どうしたんだろーな? トイレか?」

「うーん、でもそれなら、誰かに一言言っていきそうだけど……」

 翔太もぼくも、首を傾げる。そしてどちらともなしに歩き出し、隅々まで目を光らせて小体育館内をぐるりと回ってみることにした。壁際にある跳び箱やマットの陰も覗き込んでみるけれど、隼人の姿は見当たらない。

「……あ! いた、イオ。あそこ、通路んとこ!」

「え?」

 翔太の声を聞いて、ぼくは顔を上げた。見ると翔太の言う通り、小体育館と体育館を繋ぐ短い通路のところに、誰かと話し込んでいる様子の隼人の姿があった。

「おーい、どうした隼人? 何かトラブルか?」

 早速翔太とぼくは、小走りで隼人の元へと駆け寄った。ぼくたちに気が付くと、隼人とその話し相手は揃って顔をこちらに向けた。

「ん、ああ……悪ぃ。何も言わずに抜けちゃってたな」

「あ……ごめん……。今日、みんなで遊ぶ日だったんだよね? 僕の話に付き合わせちゃってて……」

 ぼくと翔太を申し訳なさそうな顔で見るのは、癖毛で茶色がかった髪型の小柄な男子だった。ぼくは同じクラスになったこともないし話したこともないけれど、名前と顔くらいは知っていた。五年二組の、佐々(ささき)(じん)君。たしか、隼人と同じ町に住んでいる子だったはずだ。

「や、こっちは全然構わないぜ? ……でも、どうした? 何か深刻そうだけど」

 翔太がそう心配するように、仁君の表情はものすごく暗かった。何かが仁君の身に起きたのは、間違いないと思えた。

「実はさ、ちょっと悩み相談乗ってたんだ。……ひでーんだぜ、仁の父ちゃん。無理矢理仁を、塾に行かせようとするんだ」

「え……!」

 隼人が溜め息まじりに言い放った言葉を聞いて、ぼくも翔太も驚いて仁君に目を向ける。仁君は力なく微笑むと、ぼくたちに問いかけた。

「二人は塾とか……行ってる?」

「オレは……行ってないな」

「ぼ、ぼくも……行ってない」

 翔太とぼくは、正直にそう答える。

「はは……二人は、頭良さそうだもんね。僕は頭悪いからさ、塾に行け塾に行けって、何回も言われるんだ」

「……」

 仁君の言葉に、ぼくは上手い返しを思いつくことができなくて黙り込んでしまう。たしかにぼくは今まで勉強で困ったことはないし、お母さんから塾に行けと言われたこともなかった。

「でもさー、勉強できればいいってもんでもねーじゃん? というか、学校で勉強してんのに放課後まで勉強したくねーって話じゃん。でもそこらへん、仁の父ちゃんわかってくんなくてさ。仁が行きたくないって言ってんのに、全然聞いてくんないんだ」

「それは……ひどいな」

 翔太の呟きに、ぼくも頷きを返した。ぼくは仁君のお父さんに会ったことはないからどんな人なのかはよくわからないけれど、無理矢理塾に行かせようとするなんてひどいと思った。人にはそれぞれ、得意なことと不得意なことがある。勉強なんて読み書きと四則計算さえできれば生活には困らないわけだし、そんなに必死になってやるものでもないと思う。

「おーい、何してんの? なんか人減ってる気がすると思ったら、こんなとこにいたのかよ」

 そうしてぼくたちがつい話し込んでしまっていると、ふいに小体育館のほうから声が掛けられた。振り向くと、思音がいつの間にか小体育館と通路の間に立ってこちらを覗き込んでいた。それに思音の後ろには、ぞろぞろといつも教室で顔を合わせているクラスメイト達の姿も見える。どうやらみんな、姿が見えないぼくたちを心配して来たみたいだった。

「あー、悪ぃ、実はさ……」

 隼人はクラスメイト達にすっと歩み寄ると、先程ぼくたちにしたように再び仁君のことを話し始めた。ぼくはこんなに話を広めてしまってもいいのかな、とちょっと心配になって仁君の顔をちらりと見たけれど、仁君に特に嫌がっている様子はないようだった。むしろ、たくさんの人に愚痴を聞いてもらいたいという気持ちでいるのかもしれない。

「……うわ、何それ。最悪じゃん、そいつの父ちゃん」

「子供は遊ぶのが仕事だろー? 塾とか行くことないって」

 そして話を聞いたクラスメイト達からも、仁君を擁護する声が次々と上がった。もちろんみんな、塾自体が悪だと思っているわけではない。だけど仁君の意志に反して塾に行かせようとする父親の行動には、満場一致で猛反対だった。いつしかぼくたちは仁君と隼人を囲むように円形に並んでいて、その場には不思議な一体感が生まれていた。

「……それで仁、家出まで考えてるらしいんだ」

「え!」

 そして隼人がぼそりと放った衝撃的な言葉に、ぼくたちの視線は輪の中心にいる仁君の元へ一斉に集中した。大人数に囲まれた中、仁君はこくりと頷いて隼人の言葉を肯定した。

「もう嫌だよ、こんな家。なんで僕のお父さんは、みんなのお父さんみたいに優しくないんだろう……。こんな家、いっそ出て行こうかな、って……」

「……」

 仁君は、そう言って顔を俯ける。その深刻そうな様子を目の当たりにして、辺りには沈黙が落ちた。すぐ傍の体育館と小体育館からは賑やかに遊ぶ声が聞こえてきているのに、この一帯だけは重い空気に包まれていた。家出、って。そんな映画やドラマでしか見たことがないような出来事を実行に移そうとしている子が、今ぼくたちの目の前にいるなんて。仁君は小柄だし、どちらかというとおとなしそうな雰囲気を纏っていて、とてもそんなことをしそうな子には見えない。それに、お金は? 泊まるところは? 家を出て子供だけで生きていくなんて、そんなこと現実的に考えて可能なのだろうか?

「それでさ、俺も付き合おーかと思って。仁の家出」

「えっ?」

 各々が俯いて考え込んでしまっている中、その場の空気を吹き飛ばすような明るい声音が響いた。顔を上げると、隼人は白い歯を見せてにかっと笑い、仁君の肩にぐいっと腕を回していた。

「家出すんならさー、一人より二人のほうが心強いじゃん? それに、なんか楽しそうだしな。サバイバル、って感じで」

「……隼人」

 仁君は、驚いた表情ですぐ傍にある隼人の顔を見つめていた。隼人はその視線をまっすぐに受け止めると、穏やかな笑みを返す。それだけで、この二人の絆みたいなものがこちらにもひしひしと伝わって来た。

「……じゃーさ、オレも混ぜろよ、その家出」

「え……?」

 そう言って一歩前に踏み出したのは、タケちゃんだった。今度は仁君だけでなく、隼人も驚いたように目を見開いている。

「その理屈だったらさー、人数が多い方がいいだろ。ってわけで、オレも参加希望! あー、なんかワクワクすんなー」

 タケちゃんはそう言うと、仁君と隼人の隣に進み出る。二人はまだ少し戸惑うような表情をしていたけれど、その顔には間違いなく嬉しさが滲んでいた。

「じゃー、あたしも参加しよっかなー」

「決めた! オレも参加する!」

「……私も参加しようかな。そのお父さんの考えには反対だし」

「……みんな!」

 すると次々と、家出参加希望の声が上がり始める。その一人一人の顔を、仁君と隼人は感激した様子で見つめていた。

「……どーする? イオ」

「翔太……、うーん、どうしよう……。力になりたい気持ちはあるけど……」

 周りで続々と参加表明が沸き起こる中、ぼくはまだ気持ちを固められずにいた。仁君に協力したいという気持ちはあったけれど、家出というものに対する不安もあったのだ。こういうところが、ぼくの臆病な部分だろう。

 キーン、コーン……カーン、コーン……。

「あ……」

「おっと、昼休み終わりか……」

 そうして迷っているうちに、昼休み終了のチャイムが鳴ってしまった。小体育館から次々と人が飛び出して来て、通路の真ん中にたむろしていたぼくたちは慌てて端へと体を寄せる。昼休みの次は、清掃の時間だ。ぼくたちも早く、それぞれの清掃場所へと移動しなければならない。

「えーっと、じゃあ、そうだな……」

 小体育館から出て来る人の波が落ち着いたところで、隼人は口を開いた。

「とりあえず、今はこの話は一旦終了! ……それで、もし家出に参加してくれる、って人は、今日の放課後、教室に残ってもらうってことでどうだ? 色々と、打ち合わせも必要だし」

 隼人の言葉に「りょうかーい!」という声が四方八方から飛んだ。ぼくも、こくりと頷きを返す。今はまだ揺れ動いているけれど、放課後まで猶予があればしっかりと答えを決められるだろう。隼人はざっとみんなの顔を見渡すと、大きく息を吸い込んで言った。

「よーし、じゃーみんな、今は掃除に専念だ!」

「おー!」

 その言葉を合図に、ぼくたちは一斉に駆け出す。その背中に、「あ、あのっ!」と少々弱々しくも決意の籠もったような声が掛けられた。

「みんな、僕のために、ありがとうございますっ! よろしくおねがいします!!」

 振り向くと仁君はまだ通路のところにいて、ぺこりと頭を深く下げていた。みんなは「おー!」「いいっていいってー!」「掃除に遅れるぞー!」なんて言葉を、グーサインをしたり手を振ったりしながら投げかける。その中に混じって走りながら、ぼくは考えていた。仁君の家出に、参加か、不参加か。ぼくは、どっちを選択すべきなのだろう?


「……よーっし。これで全員か? じゃあ仁、入っていーよ。あ、先生来た時とか隠れられるように、奥の方にいろよ」

 隼人が手招きすると、仁君はこくりと頷いて四組の教室に入って来た。ぼくの学校では、先生に頼まれた用事でもない限りは他のクラスの教室に入ってはいけない決まりになっている。だからぼくたちは仁君がドア側から見えてしまわないよう、体で盾を作るようにしてぐるりと取り囲んだ。放課後の五年四組教室に集まったのは、およそ十人。今ここにいるメンバーが、家出の参加希望者だった。

 迷いに迷って、結局、ぼくは家出への参加を決めた。決め手となった理由は、主に二つ。一つ目は、仁君のお父さんのやり方が間違っていると思ったから。そして二つ目は、参加を表明していたメンバーが信頼に値する面々だったからだ。正直言って、ぼくは仁君とは今日が初対面同然だった。友達と言っていいのかどうかすら怪しい間柄の子の家出に付き合うなんて、普通に考えたらおかしい話だろう。だけど、仁君はぼくの友達である隼人の友達だ。ぼくが隼人と話したり遊んだりするようになったのは、今年同じクラスになってからだ。だけどその短い期間でも、隼人が明るくて元気で、頼りがいがあって優しい人だということは十分に理解できていた。その隼人の友達である仁君の力になりたい、と思うのはそんなにおかしいことではないだろう。それに参加を表明したメンバーには、ぼくがよく一緒につるんでいる翔太や、学校一の美少女である思音、家のすぐ裏に住む幼馴染、夕飛、ムードメーカーのタケちゃんに、お調子者の亮、寡黙なシャイボーイアユなど、クラス内でも特に仲良しな面々が揃っていた。家出にはさまざまな困難が待ち受けているだろうけれど、このメンバーなら乗り越えられるような気がしたのだ。

「えーっとじゃあこれより、家出計画について話し合おうと思う。とりあえず、みんな、書くもの用意ー」

「おー!」

 ぼくたちは隼人の指示に従い、各々ランドセルから筆記用具やノートを引っ張り出した。この家出はレクリエーションではなく仁君のお父さんへの抗議のためのものだけれど、ぼくはなんだかわくわくしてきてしまっていた。

「えーっと、まず、家出の参加メンバーを書いとこうか。それから、決行日を決めないとな。みんなの用事や習い事と被らないような日があればいいんだけど……」

「あ、決行日に関しては、あたしから提案がある」

 そこですっと、思音が右手を挙げた。自然と今回の司会役となっていた隼人が、目線で続きを促す。

「決行日は、金曜がいいと思う」

「その心は?」

「金曜に家出したら、次の日は土曜だろ? 休日の昼間に子供がうろうろしてても、そんなに目立つことはない。だけどもし次の日が平日だったら、昼間身動きがとれなくなる。大人たちに見つかるリスクが高まるからな。っつーわけでできるだけ家出期間を長引かせるには、休日にぶち当たるスケジュールがいいと思う。つまり金曜が最適ってこと」

 思音の毅然とした物言いに、おおーっ、と自然と拍手が沸き起こった。決行日についてそこまで深く考えを巡らせるなんて、やっぱり思音は頭がいい。

「なるほどな。じゃあ決行日は、今週の金曜で決まりだ。その日、都合悪い人はいるか?」

 隼人の問い掛けに名乗り上げる人はいなかったので、これで決行日は確定した。ぼくたちは教室の床にぺったりと座りながら、手元のノートに鉛筆を走らせていく。

「次に重要なのは、泊まるところじゃねーか? 子供だけじゃ、ホテルにもネカフェにも泊まれねーしさ」

「普通に考えて、野宿しかなくない? テントとか張ってさ……」

「でも、子供だけでテントって張れるか? あれ結構ムズいんだぜ……」

 続いて話は、宿泊場所についてへと移る。タケちゃん、夕飛、亮が相次いで発言するけれど、なかなか意見はまとまらない。ぼくも一応『寝袋に入って夜空の下で寝る』というのを提案してみたのだけれど、「雨降ったらどうすんだ」と速攻で却下されてしまった。むむ……。

「あの……」

 そこでおずおずと手を挙げたのは、今回の主役である仁君だった。

「どした仁。何か思いついたか」

 隼人が目を向けると、仁君はこくりと頷いた。

「うん、ちょっと。えーっとみんな、『アート広場』は知ってる?」

「あ、知ってる。なんか変な建造物がたくさんある広場だろ」

 仁君の問いかけに真っ先に答えたのは、翔太だった。僕の頭の中にも、コンクリートの丸い大きな物体やら、太陽と月のマークが彫り込まれた金属製の変なプレートみたいなものが浮かぶ。そんなよくわからない芸術作品が大量にある広場が、ぼくたちの学区の片隅にはひっそりと存在していた。

「そこにさ、えーっと、僕の身長くらいの大きさかな? なんか柱みたいなのがたくさん集まってるところがあるんだけど……その上にブルーシートとか掛けたら、屋根みたいにならないかな? 下にもシート敷けば、座ったりもできるし……」

「おお……それ、いいアイデアだ! あそこなら広いし、この人数でも楽勝で寝れるしな!」

 隼人はそう言うと、尚も自信なさげだった仁君の肩をがっと掴んだ。ぼくたちもうんうんと頷くと、仁君は少し恥ずかしそうにしながらも微笑んでくれた。それじゃあそれぞれが家にあるありったけのシートを持ってくるように! と隼人が言い放ち、その流れで話題は持ち物のことへと変わった。

「まず水は大事だから、水筒だろ? 食べ物は調理はできないから、すぐ食べれるような物じゃなきゃダメだな。保存もきくようなやつで」

「そう考えると、お菓子か? それか全財産かき集めて、その都度スーパーとかで調達するか……」

「夜のこと考えると、懐中電灯は必須だよね。あと着替えとか? あんまりたくさんは無理そうだけど」

「腕時計も誰か一人は持ってこないとな! あと、野宿なわけだから毛布いるだろ! この時期絶対まだ夜寒いって!」

 話し合いを重ね、ぼくたちは必要な物をまとめていく。泊まりになるわけだから当然だけれど、こうして書き出していくと予想以上に大荷物になりそうだった。これは宿泊学習のときとかに使うリュックや、もしかしたらお母さんのキャリーバッグを引っ張り出してこないといけないかもしれない。

「ふう……これで一応、計画としてはオッケー、かな?」

 そして話し合いを始めてから、およそ一時間。ぼくたちはなんとか、家出計画を形にすることができた。ノートにびっしりと書かれた文字を見ていると、ぼくたちは数日後に本当に家出をするんだ、という実感が湧いてくる。みんなで知恵を振り絞って考えた計画だ。きっと、うまくいくに違いない。

「よし、じゃあ計画の決行日は金曜、明々後日だな。つまり今日から俺たちは少しずつ家出にむけての準備をすることになるわけだけど……いいか? くれぐれも親にバレないようにな? 絶対に、見えるところで荷物詰めたりすんなよ?」

 隼人の忠告に、ぼくたちは神妙な顔で頷く。絶対に、大人たちに家出計画がバレるわけにはいかない。準備の段階から怪しまれないよう、慎重に行動する必要があるのだ。

「亮とかあっさりバレてそうで怖いけどな」

「いーや! だいじょーぶだって! そんなヘマしねーよ!!」

 思音と亮のやりとりに、ドッと笑いが沸き起こる。そんな中ぼくは今回の家出計画の発端である、仁君へと目を向けた。昼休みに最初に見たときには心配してしまうほど暗い表情をしていたけれど、今の仁君は、笑顔だった。

「よーし、じゃあ、今日はこれで解散! みんな、来たる日に向けてしっかりと準備を進めるように!」

「おーっ!」

 ぼくたちは声を揃えて叫ぶと、拳を頭上に突き上げた。窓から差し込むオレンジ色の夕日が、まるで計画の成功を約束するかのようにその拳を照らしていた。


「……ふふ」

 夕食を食べ終えた後、ぼくはリビングに寝転がって家出計画が記されたノートを開いていた。子供だけで家出なんて、まるで自分が映画やドラマの主人公になったみたいだ。まあ今回の家出は仁君のお父さんに無理矢理塾に行かせることをやめてもらうことが目的だから、ぼくが主人公では決してないんだけれど、それでもわくわくしてしまう気持ちは抑えられない。リュックとレジャーシートは夕方のうちに目星を付けておいたから、あとはお菓子とかをちょっとずつ持ち出して……あ、毛布じゃなくて、寝袋のほうがかさばらなくていいかもしれない。それも、明日お母さんがいないうちに確認しないと……。

「ジャマ」

「!」

 そんな風に家出の準備について考えていたら、ふいに頭上から刺々しい声が降って来た。顔を上げると、眉間に皺を寄せた迫力のある表情のお姉ちゃんがそこにいた。お姉ちゃんはお風呂から上がったところのようで、長い髪は濡れていて肩にはピンク色のタオルが掛かっている。ぼくはその気迫に圧されるままおずおずと起き上がろうとするけれど、そのときお姉ちゃんの視線がぼくの手元へと向いていることに気が付いた。ぼくの手元にあるのは、家出計画が記された、ノート……。

 ぼくは超高速で、だけれども静かにノートを閉じた。そして近くにあったクッションの下にノートを滑り込ませると、何てことのない顔をして音楽番組が映っているテレビ画面へと目を向けた。

「だからー、ジャマっつってるじゃん」

 お姉ちゃんはイライラした様子で寝転がり続けているぼくの背中をぐりっと踏むと、棚の上から化粧水やら何やらが入ったカゴを手にとった。そしてテーブルの上に折り畳み式の鏡を置くと、それを覗き込みながら一心不乱に肌の手入れを始めた。それが終わると再びぼくの背中をぐりっと踏んで棚の上にカゴを戻し、リビングを出ていく。少しすると洗面所のほうから、ドライヤーの音が聞こえてきた。

「ふー……」

 お姉ちゃんが完全にいなくなってから、ぼくは深く息を吐いた。お姉ちゃんが特に何も言ってこなかったところを見ると、どうやら家出計画についてはバレずに済んだみたいだ。危ないところだった。

「あ、忘れてた。イオー、お母さん今日プリン買って来てたんだよねー。食後のデザートにどう?」

「え、そうなの? 食べる!」 

 そうしてほっと胸を撫で下ろしていると、台所にいるお母さんからそんな嬉しい言葉が聞こえてきた。ぼくは喜んで台所へと飛んでいくと、お母さんが冷蔵庫から取り出してくれたプリンを受け取った。

「うーん、おいしい!」

 リビングのテーブルの前にちょこんと座って、ぼくはスプーンで掬ったプリンを次々に口へと運ぶ。ぼくの隣にはお母さんも腰を下ろして、一緒にテレビを見ながらプリンの味に舌鼓を打っていた。

「おかーさん、こいつ、家出しようとしてるよ」

 しかしそんなあたたかい親子団欒の空気は、髪を乾かし終えて戻ってきたお姉ちゃんの言葉によってぶち壊されることになった。ぼくはお姉ちゃんが何を言ったのかが咄嗟に理解できず、ぽかんとした顔でスプーンを持った手を宙に浮かせ続けたまま固まってしまう。

「……なんて? 茉莉」

 お母さんも、よく意味が理解できなかったのだろう。怪訝な顔で、お姉ちゃんに詳しい説明を求める。そしてこの頃になるとようやくぼくの頭も追いついて来て、今の状況が非常にピンチであるということを理解した。

「イオのノートにさ、家出計画がびっしり書いてあんの」

「ち、違うよ。あれは遊びで書いただけだよ。今流行ってるんだよ、家出ごっことか、冒険ごっことか。学校で昼休みとかに、そういうの見ながらなりきって遊ぶんだ……」

 ぼくは必死に頭を回転させて、もっともらしい言い訳を並べ立てる。まだだ。まだ決定的にバレたわけじゃない。今からだって、いくらでも誤魔化しようはある。

「ふーん。じゃあ、別に見られても問題ないよね?」

「!」

 まずい、と思った時にはもう遅かった。お姉ちゃんはにやりと意地の悪い笑みを浮かべると、クッションの下、ぼくがさっきノートを隠した場所へと手を突っ込んだ。

「ちょっと! 勝手にとらないでよ!」

 ぼくの言葉は、もはや叫び声のようになってしまっていた。

「いーじゃん。遊びで書いてるんだったら見られても問題ないでしょ?」

「嫌だよ! だって恥ずかしいから!」

 ぼくは必死にノートを奪い返そうとするけれど、年齢の差もあって身長はぼくよりもお姉ちゃんのほうが高い。お姉ちゃんが頭上でひらひらと左右に動かすノートを、ぼくはどうしても掴めずにいた。

「二人とも、やめなさい」

 そんなぼくたちを横で見ていたお母さんが、ぴしゃりとそう言い放った。その言葉を聞いた途端お姉ちゃんは動きを止めて、顔色を窺うようにお母さんのほうを見た。お母さんは厳しい表情で、お姉ちゃんへと近づいていく。その様子を見て、ぼくはほっと息を吐いていた。よかった。きっとお母さんは、『イオのノートなんだから、イオに返しなさい』と言ってくれるはずだ……。

 お母さんは、ひょい、とお姉ちゃんからノートを取り上げた。しかし、ここでぼくの予想外のことが起きる。お母さんはノートをぼくに返すことはせず、ぺらっとページを捲って中を見始めたのだ。

「……っ!! なんで!!」

 味方になってくれたと思っていたお母さんの予期せぬ行動に、ぼくは慌てて抗議を伝える。しかし、お母さんの身長はお姉ちゃんよりもはるかに高い。ぼくがいくら手を伸ばしたところで、ノートに手が届くことはなかった。ぼくが横であーだのうーだの言ってもお構いなしに、お母さんはページの隅から隅まで目を通し続ける。

「……おいイオ、これ本気のやつだろ」

 そしてお母さんは怒気を孕んだ声でそう言うと、ノートを床へと投げ捨てた。べちっ、という音がして、ぼくのノートは床へと叩きつけられる。みんなのためにもまだまだ頑張って誤魔化さなければいけないところのはずなのに、ぼくの喉からは言葉が出てこなかった。

「家出って……何が不満なんだ。はっきり言え」

「……ちが、ぼくじゃないよ……。その、友達が家出考えてて、ぼくはそれに付き合うっていうか……」

 お母さんの気迫に圧され、ぼくはつい本当のことを喋ってしまう。お母さんはぼくの言葉を聞くと、「はあ?」といった様子で顔を歪めた。

「なんだそれ……。バカじゃないの、人の家出に付き合うとか。大体、その子が家に何の不満があるのか知らないけどさ、家出したところで何も解決しないんだよ。不満なら、家族とちゃんと話し合え、ってことだ。家出なんてしたって、なんの意味もねーんだよ」

 お母さんは溜め息混じりで、そう吐き捨てる。呆れたように首を左右に振って、もうこの話は終わり、といったところだ。家出計画は、完全にバレた。実行しようにも、それをお母さんが許すはずがない。

「……」

 だけどぼくは、ここで引き下がれなかった。だってぼくは、絶望にうちひしがれていた仁君を見ている。お母さんの言うことは、たしかに正論かもしれない。だけど、世の中そんなふうに上手くいくことばかりじゃない。上手くいかないから、こうしてぼくたちは今足掻いているんじゃないか。

「……意味なく、ないもん」

 ぼそりと呟いたぼくの言葉に、お母さんは振り向いた。ぼくはぎゅっと、両の拳に力を込めて言った。

「だって、家出するくらいに苦しんでいるってことは、伝わるじゃないか!」



「えーっと、これで全員集合したな」

「っていうかどうしたの? イオが集合かけたんでしょ?」

 隼人は、ぐるりと廊下に集まった家出参加メンバーを見渡す。夕飛からは、この緊急招集をかけたのがぼくだということに対する疑問の声が上がる。

「うん……えっと、みんなに話さないといけないことがあって……」

 残り少ない朝休みの時間。自分から集合をかけておいてなんだけれど、めちゃくちゃ次の言葉が出しづらい。きっと非難轟々だろうな……と弱気になりつつも、ぼくは意を決して事実をみんなに伝えた。

「……ごめん。家出計画、お母さんにバレちゃいました……」

 一瞬、しぃん、とした静寂が訪れた。しかしみんながぽかん、とした表情だったのもまた一瞬で、次の瞬間にはぼくに一斉に怒号が降り注いでいた。

「はぁ!? バレたって……あんだけ気をつけろって言ったじゃんか!!」

「おいおい……どうすんだよ、それじゃあ」

「バカイオ! オレだってなあ、昨日はポーカーフェイスで過ごしたというのに!!」

「ご、ごめんなさい! ごめんなさい!!」

 ぼくは両手を顔の前に突き出して、とりあえず平謝りするしかない。だけど、これで話が終わりというわけではない。みんなの勢いが少し収まったところで、ぼくは新たな提案をするために口を開いた。

「そ、それで提案なんですが……家出場所を、ぼくの家の庭に変更ってのは、どうでしょうか」

「へ?」

 ぼくの発言の意味がよくわからなかったようで、みんなはきょとん、とした顔になる。ぼくは慌てて、説明を付け加えた。

「その……お母さん曰く、家出がダメなのは安全面が心配だからってことだそうで。つまり、ぼくの家の庭でだったら、家出をしてもオッケーだって……」

 ぼくは、昨日の夜のお母さんとのやり取りを思い出す。家出計画がバレたときには絶体絶命だと思ったけれど、ぼくの言葉が何かしらお母さんの心を動かすことができたらしく、なんとか条件付きでの家出を認めてもらうことができたのだ。

「……でもそれって、家出って言えるのか?」

「だって、イオのかーちゃんにはバレてんだろ、すでに」

 タケちゃんと亮は、困惑するように顔を見合わせる。他のみんなも、迷っている様子で考え込んでいた。ぼくの額に、汗が滲む。条件付きでの家出の許可を取り付けたとはいえ、逆に言えばこの条件が呑めなければ家出はお流れになるということだ。ぼくの失態のせいでそんなことになってしまったら、みんなに、そして何より仁君に対して申し訳が立たなさすぎる。

「……いいんじゃねーの、それで」

「!」

 ぼそり、とそう呟いたのは、思音だった。みんなの視線が、頭の後ろで両手を組んでいる思音へと一斉に集中する。

「これは仁の家出なわけだしさー、極端に言えば仁の家以外ならどこでもいいわけだろ? まあそれに安全面が保障されるってのは、あたしらにとっても悪い話じゃねーし。つーか結局のところ、仁の意思次第だろ」

 思音はそう言うと、ちらり、と仁君へと目を向けた。そうだ。思音の言う通り、これは仁君の家出だ。仁君がいいといえばこの条件で家出は決行だし、たとえみんなが賛成しても仁君が嫌だと言えば家出は中止になる。ぼくたちは固唾を呑んで、仁君の発言を待った。

「……僕は、やっぱり家出したい、って気持ちが強いです。その、伊織君の提案した形でも。……でもそれだと、伊織君のお家に迷惑なんじゃないかな……」

 仁君はしっかりと、家出への決意を伝えてくれた。だけどぼくへの気遣いから、遠慮する気持ちを捨てきれてはいないようだった。

「ぼくの家は大丈夫だよ。お母さんがいいって言ってたし」

「……」

 ぼくはそう言うけれど、仁君の表情はまだすっきりとはいかなかった。うーん、本当にぼくの家は問題ないんだけれど。どうしたら、わかってもらえるだろうか。そんな風にぼくが頭を悩ませていると、ふいに隼人が仁君の隣へと歩み寄った。そしてバシッ! と丸まり気味だった仁君の背中を平手で叩いた。そのいきなりの行動に、叩かれた仁君だけでなく周りのぼくたちもぎょっとした表情になる。

「おい仁。迷惑だなんて今更そんなこと考えてんのかよ。迷惑かかるなんて当たり前だろ。家出ってそういうもんだぜ。俺達はこれから、大人全員を敵に回すんだ。そうでもしねーと、やる意味ねーだろ」

「……隼人」

 隼人の顔には、挑発的な笑みが浮かんでいた。そして隼人の言葉を後押しするように、思音も口を開く。

「そういうことだな。褒められたことじゃないってのは重々承知であたし達は集まってんだ。それでもやる価値があると思ってるから、今ここにいるんだよ」

「……!」

 仁君は、ぐるりと自分を囲むように立つ一人一人に目を向ける。そうしてみんなの決意を確認した仁君は、やがてこくりと深く頷いた。

 家出計画は、決行。ただし予定とはちょっと変わって、ぼくの家の庭で。



「おおーっ、オレ、イオん家初めて来た。学校からめっちゃ遠いな、オイ」

「オレは何回も遊びに来てるぜ。自転車はいつもここに停めてるけど……今日の人数で全員分置けるかな……」

 金曜日の放課後、ついにぼくたちの家出は始まった。幸い天気は快晴で、雨の降る心配はしなくてよさそうだ。キキッ、と自転車のブレーキ音がする度、人が到着したのだとわかる。

「どうぞ。狭いけど、入ってください」

「おー、おじゃまするぜー」

「すげー、芝生だ! 芝生って値段高いんじゃなかったっけ?」

 そして自転車を停めた人は次々と、大きなリュックやら何やらを手に庭へと移動する。庭の入口には腰ぐらいの高さの茶色の木のドアが設置されているけれど、今はそれをオープンにしてある。芝生が敷き詰められたそこは八畳ほどの広さで決して広大とはいえないけれど、まあなんとか収まってくれるのではないだろうか。ちなみに庭の真ん中には、ぼくの家にあったバーベキューのときに使う椅子とテーブルを設置しておいた。これもこの人数で囲むには小さすぎるけれど、ないよりはマシだろう。

「みんな……、僕のために今日はありがとう。よろしくお願いします」

 やがて参加メンバー全員が庭に集合したところで、仁君はぺこりとみんなに頭を下げた。みんなは「またかーい」「そんなかしこまらなくていいってー」と笑顔で仁君の肩を叩いたりしている。そんなあたたかい空気の中、ぼくは一応家出会場の主として、少しでも庭の空間の有効活用をするべくみんなの荷物の配置などについて頭を巡らせていた。

「ん?」

 と、そのとき。視界の端に、何やら両手に大きな荷物を抱えたアユの姿が見えた。なんだろう? ナイロンのような素材のそれは、折り畳みの椅子……にしては、ちょっと大きすぎるような気がする。

「アユ、それなあに?」

「……」

 ぼくが問いかけると、アユはその謎の物体を抱えたまま庭の奥のほうへと歩いて行った。みんなも不思議そうな顔で、アユの行動を注視している。

「!」

 するとふいに、アユの両手がバッと左右に開いた。手の中にあった物体が大きく広がり、いつの間にか芝生の上にはこじんまりとしたテントのようなものが姿を現す。

「お、おおおーっ!」

 みんなは一斉に感嘆の声を上げ、カラフルな配色をしたテントに駆け寄る。

「これ、歩ん家にあったボールテントだよな? ボールだけとって持ってきたのかー! ナイスだ歩!」

 亮は「懐かしー!」と呟きながら、テントの上部をボスボスと叩く。みんなからの称賛の声を浴びて、アユはちょっと照れくさそうだ。

「すっげーな! めっちゃキャンプみてぇ! これで何人かは屋根付きで寝れるな! どーする? ジャンケンで決めるか?」

 わくわくした様子で、タケちゃんが右拳を突き出す。テントは座った状態でなら四、五人は詰め込めそうだったけれど、寝転がるとなるとどう頑張っても二人が限度だと思えた。それでも膝から下あたりはは外にはみ出てしまうだろうけれど、完全に屋外で寝るよりは快適だろう。

「は? 何言ってんの、女子優先に決まってんでしょ! 私と思音がテントで寝るから!」

 しかし、さてジャンケンだ! と盛り上がっている男子陣に向けて、家出メンバーで二人しかいない女子のうちの一人、夕飛がさも当たり前だというように吠えた。ぼくたちは一斉に、「えーっ」と抗議の声を上げる。

「なんでだよ! つーかこれ歩のテントだからな? 一人は歩で決まりだろ!」

「その理屈はわからないでもないけど! でも男子を思音と一緒にしたら、どーせ寝顔見たりしてニヤニヤするでしょ! だからダメ! 私と思音がテント! それ以外に選択肢はないから!」

 亮の正論めいた言葉にも、夕飛は一斉怯むことなくビシッと言い返す。そして情けないことにぼくたち男子陣は、誰一人としてそれに対する反論を持ち合わせていなかった。テントで思音と二人きりで寝るにしても、芝生の上で雑魚寝だとしても。夕飛の言う通り寝顔くらいは見に行ってしまう自信があった。それを防ぐためには、たしかに女子陣二人がテントという選択肢しかない。

「あたしは別にどっちでもいーけどな。夜空の下で寝るってのもそれはそれで楽しそーだし」

「いやダメだから! 思音は私とテント! もう決まり!」

 思音はあまりそういうことを気にしてはいない様子だったけれど、結局は夕飛に押し切られてテントで寝ることを承諾していた。こうして男子陣全員は、外で雑魚寝をするということが決定する。まあこれがベストな形だというのは理解できるのだけれど、なんとなく男女間の力関係を表しているようでなんともいえない気持ちになるぼくたちであった。


 それからぼくたちは、まず今日出された宿題を片付けることにした。土、日のぶんもあるから普段よりも量は多いのだけれど、この家出は何日続くかわからない。早めに終わらせてしまったほうが家出に専念できるので、ぼくたちは青空の下で黙々と宿題に取り組んだ。そうして全員が宿題を終えたときには、時刻は午後五時半をまわっていた。普通ならそろそろ家に帰ろうか、となる時間だけれど、今日はそうじゃない。むしろ、これからが本番、と言ってもいい。ぼくたちは辺りが薄暗くなってきたことも気にせずに、家の前の道路でキャッチボールやバドミントンをしたり、庭の椅子に腰掛けて携帯ゲーム機で通信対戦をしたりと目一杯遊んだ。そして時刻が六時半を迎えると一旦遊びを中断し、自転車でぞろぞろと家から五分程のところにあるコンビニへと向かった。目的は、夕食の調達だ。各々がお小遣いを握りしめ、買える範囲の金額で弁当やおにぎりなどを選んでいく。

「うまー!!」

「コンビニの物って、なんでこんなにおいしいんだろうな」

「わかる! なんか、ご飯の感じからして家のと全然違うよねー」

 そしてすっかり暗くなった家の庭で、ぼくたちは夕食を囲む。庭には電源の入った懐中電灯がところどころに散乱していて、その光がまばらに辺りを照らしている。ちなみに、ぼくが食べているのは野菜サラダとえびドリア。家ではドリアみたいなおしゃれな料理が出ることはまずないので、新鮮だしめちゃくちゃ美味しかった。お互いに一口ずつ交換し合ったりして、ぼくたちは笑顔で子供だけの夕食の時間を過ごした。


「……えーっと、6マス……、あ、やった、2000ドルもらうだ」

「……おー、やったじゃん、タケ」

 しかし、そんな和やかな時間は永遠には続かなかった。周囲からは、「あはは……!」と笑い声が漏れるけれど、それもどこか力なく感じられる。辺りは本格的に夜の色となっていて、しんとした静けさが漂っている。こんな時間に屋外に出ているのなんて、町中を見渡してもぼくたち以外にはいないだろう。

「……今頃、かーちゃんとかどーしてんのかなー。オレが帰って来ないってんで、さすがに何かしら動いてんだろうけど」

「……まあそうだろうな。あれじゃね、知り合いに片っ端から電話かけてるとかじゃね」

そしていつしかぼそりと、そんな会話が漏れ聞こえ始める。夕食を終えたぼくたちは全員参加ですごろく形式のボードゲーム『一生ゲーム』で遊んでいたのだけれど、時が経つにつれてみんなのテンションが落ちてきているのは明らかだった。ゲームボードの周りにはたくさんのお菓子が並べられていたけれど、先程からみんなあまり手を伸ばしていない。これは決してゲームがつまらないとかそういうことではなくて、明らかに気持ちの問題だった。いわゆる、ホームシック。ぼくは自分の家の庭にいるから、今のところ寂しいとかいう気持ちはあまり起きていなかった。あと、すぐ裏に自分の家が見える夕飛もそうでもなさそうだ。だけどそれ以外のメンバーは少なからず、その表情のあちこちに寂しさを覗かせていた。そんな空気を察して、先程から仁君は体育座りをした体をきゅっと小さく丸めていた。今回の家出への参加はそれぞれが覚悟の上であるということがわかっているとはいえ、やはり自分が巻き込んでしまっているという意識が消えないのだろう。

「……」

 そしてついに今回の家出以来初めての、長い沈黙が場を支配した。なんとなくこのまま、家出が終わってしまうような予感がした。

「……よーっし、次は俺の番だな! いっけえええ、10出ろ10出ろおおおー!」

「!」

 そんな中、沈んだ空気を吹き飛ばそうとするかのように人一倍元気な声で勢いよくルーレットを回したのは、隼人だった。その声を聞いて、みんなもはっとした顔になる。ぼくたちは、なんのために家出を決行したのか。そのことを、唐突に思い出す。仁君のお父さんに心を改めてもらうまで、ぼくたちは決して家に帰るわけにはいかない。

「……って、嘘だろ! 1かよ!! しかも5000ドル落としただと!!?」

「……ぷはっ! ドンマイ隼人! 借金地獄が待ってるぜー?」

 辺りには、どっと笑いが沸き起こる。そうだ。せっかくの家出なんだから、キャンプか何かだと思って楽しんだほうがいいに決まっている。みんなの意識が、再び明るい方向へと向く。そんな空気を引き連れたまま、今度は亮が立ち上がった。

「っしゃあー! 次はオレの番だ! この、オレの指先でええええーっ……ん、んん?」 

 しかしその勢いは、後半で急にしぼんでしまう。一体どうしたのかと亮の顔を見ると、その視線の先は庭の入口の柵の向こう、道路のほうへと向けられていた。

「……あれ」

 そしてぼくたちも、気付く。ぼくの家の前に、一台のシルバーのワゴン車が停車したのだ。

「……ん? 家の前に停まったよな……」

「……あ、もしかして、イオのとーちゃん? かーちゃんはさっき帰って来てたよな」

 タケちゃんがそう言ってこっちを見るけれど、ぼくはふるふると首を振る。

「う、ううん……。ぼくのお父さん単身赴任で県外にいるから……急に帰ってくるなんてことは、ないよ」

「え……じゃあ……」

 ぼくたち一帯に、緊張が走る。謎の訪問者はおそらく、どうにかして子供の居場所を突き止めたこの中の誰かの保護者の可能性が……。

「……あれ、お父さんの車だ」

 そうか細い声で告げたのは、仁君だった。

「……っ! おい、仁隠せ! それから懐中電灯も全部消せ!」

「お、おう!!!」

 隼人が瞬時にみんなに指示を飛ばし、ぼくたちは慌てて動き出す。土足のまま仁君をテントの奥に詰め込んで、何人かも一緒に中へと入る。周囲に散らばっていた懐中電灯の灯りを消し、ぼくを含むテントに入りきらなかった面々は急いでその陰へと身を隠す。やがてドン、と車のドアが閉まる鈍い音がして、何者かの足音が聞こえてきた。テントの後ろに身を隠しているぼくにはその人物の姿は見えなかったけれど、まっすぐに庭のほうへと向かってきていることは足音だけでもわかった。キイ、と庭の入口の柵を開閉する音が響き、さく、さく、と芝生を踏む音が近づいてくる。

「……君達、こんな時間に何してるんだ」

「……!」

 地鳴りのような低い声が響き、ついにぼくの視界に大きな男の人の姿が映り込んだ。闇にまぎれて鮮明には見えないけれど、作業服のようなデザインのつなぎを着たがっちりとした体型の男の人。年齢は、三十代前半くらいだろうか。髪は短めで口元にはひげが生えていて、思わず怖いと感じてしまうくらい威圧感のある人だった。ぼくと、そしてぼくのすぐ後ろに隠れていた夕飛は怯みまくって、そろそろと足を引きずって後ずさってしまう。一方残りのテント外メンバーであった隼人と思音は、勇敢にもその場に踏み留まり男の人と相対していた。

「何って、お泊まり会だよ。明日は学校休みだしさ、泊まりのときくらいちょっと夜遅くまで遊んでもいいだろ。つーかなんで仁の父ちゃんがここにいんの? イオん家に用事?」

 隼人は毅然とした態度で、口から出まかせを並べ立てる。そしてその隼人の台詞で、やはりこの男の人は仁君のお父さんなのだということが明らかになった。

「……隼人君、仁はどこだ? 俺は仁を迎えに来たんだ」

 隼人を見たときに、仁君のお父さんの目の色が少し変わった気がした。だけどその話を信じる気はさらさらないようで、仁君のお父さんは淡々と自分の目的を述べる。

「おっさん、何言ってんの? 今日は四組メンバーのお泊まり会だよ。えーっと、その仁? ってやつ? そいつは参加してないよ。つーかあたしそいつと喋ったことすらねーな。だって違うクラスの奴だろ?」

「……」

 これまた堂々と嘘を吐く思音に、仁君のお父さんは一瞬面倒そうに顔をしかめた。そしてふうっ、と深く溜め息を吐くと、鋭い視線でぼくたちを見据えた。

「君達、大人を馬鹿にするのもいいかげんにしなさい」

「……!」

 ピリッ、と周囲に電気が走ったような錯覚と共に、先程よりも倍増した威圧感がブワッとぼくたちを包み込んだ。その凄まじさに、ぼくと夕飛はもちろんのこと、さっきまで威勢よく口を開いていた隼人と思音も息を呑むのがわかった。ここで食い下がるわけにはいかないことは、頭では理解していた。だけどまるで蛇に睨まれた蛙のように、体が固まってしまって動かない。額からはつーっと冷たい汗が流れて、腹の底からはふつふつと恐怖感が湧き上がってくる。知らなかった。大人の男の人が、こんなに怖かっただなんて。

「……お……おい、ダメだって……。出んな……」

 こうして膠着状態となってしまったぼくたちが為す術なく庭で立ち尽くしていると、テントの中から何やら小さな話し声が聞こえてきた。思わず目を向けるとテントはごそごそと波打っていて、中に人がいることが明らかにばれてしまっている。するとべりっと入り口を塞いでいた布が翻り、中から誰かが飛び出してきた。

「……! 仁君……!」

「……っ! バカ! なんで出てきた!」

 ゆっくりこちらへと歩いてくる小さな姿を認めた瞬間、隼人は怒気を含んだ声で叫んだ。仁君の表情には怯えの色が浮かんでいたけれど、同時に強い意志のようなものも含まれているような気がした。もう隠れている理由もなくなってしまったので、テントの中からはぞろぞろと残りの面々も出て来る。みんなが注目する中、仁君は父親の前にすっと進み出ると俯いたまま口を開いた。

「……みんなは悪くない。みんなは僕の家出に付き合ってくれただけだから」

「……仁」

 隼人ははらはらとした表情で、仁君を見つめる。体の横に下ろされた仁君の拳にはぎゅっと力が入っていて、父親の前に立つことにどれだけの勇気が必要だったのかがひしひしと伝わってきた。仁君はこのままだとぼくたちがまずいことになってしまうと思って、父親に見つかることを覚悟でテントから飛び出したのだ。

「……まったくだ。お前一人で、こんなにたくさんの人に迷惑をかけて……。なんて馬鹿なことをしてくれたんだ、恥を知りなさい」

「……っ!」

 仁君のお父さんが呆れるようにして吐き捨てた言葉に、ぼくは怒りを覚えた。たしかに、たくさんの人に迷惑をかけてしまったかもしれない。だけどそもそも、なんで仁君が家出をしたと思ってるんだ。全部、おまえのせいじゃないか! 

 しかし、ぼくがその言葉を言う必要はなかった。次の瞬間何かが決壊したかのように、仁君自身が父親にありったけの感情をぶつけ始めたのだ。

「……っ……大体っ! 全部お父さんが悪いんじゃないかああっ! お父さんは塾に行け塾に行けっていっつもそればっかりっ、僕の気持ちなんていっつも無視してっ! なんで僕ばっかりこんな目に遭わないといけないんだよ!! 他の家のお父さんだったらそんなこと絶対言わないのに!!」

「……仁、聞きなさい」

 泣きじゃくりながら声を荒げる仁君を見て、仁君のお父さんは少し面食らった様子だった。しかしすぐにまた厳しい父親の顔に戻り、説教モードの始まりを予感させる。ぼくたちは普段おとなしい仁君の取り乱した姿に若干呆気に取られてしまいつつも、黙って親子のやり取りを見守り続ける。

「わかってるよ!! 僕の頭が悪いからだろっ!! でもしょうがないじゃないかあ!! 僕は勉強が嫌いなんだよお!! 嫌いなものを無理矢理やらせたってできるようにはならないんだよお!! しょうがないじゃないかああ!! できないものはできな……」

「聞きなさい!!」

 仁君のお父さんが大きな声を張り上げ、しん、と辺りが一瞬で静まり返った。その迫力に圧され、仁君も思わず言葉の途中で口を噤んでしまう。ぼくたちも、無意識に背筋を伸ばしてしまっていた。

「……いいか、仁。この国には義務教育というものがある。小学校と中学校、合わせて九年間、お前は学校に通うことになる。これは決まりだから避けられない」

 張り詰めた空気の中、仁君のお父さんはすっとその場にしゃがみ込むと、仁君の目を真っ直ぐに見据えながら先程とはうって変わって静かな口調で話し始めた。その両手は、仁君の両肩に置かれている。一方仁君の中にはまだくすぶっている気持ちがある様子だったけれど、父親の真剣な眼差しに圧されて口を開くことができないでいるようだった。

「そして義務教育が終わっても、今の時代ほとんどの人が高校へと進学する。そしてまた、多くの人が大学へと進学するんだ。つまり仁はこの先の人生の多くの時間を、椅子に座って授業を受けるという時間に費やさなければならない。どんなに勉強が嫌いでも、学校はそういうスケジュールになってしまっているから仕方がない」

「……」

 仁君は、尚も黙り続けたままだ。だけどそれは、父親の言葉の意図を探っているようにも感じられた。

「お父さんは小さい頃から勉強が嫌いだったし、できなかった。だから、学校の授業の時間がものすごく苦痛だった。先生の言っていることは何一つ理解できないのに、一日の大部分の時間、そこにいることを強いられるんだ。少しでも理解できればちょっとはマシな時間になるかと思って勉強に手を伸ばしたこともあったが……無理だった。小学校の勉強の時点ですでにちんぷんかんぷんだったお父さんは、中学や高校の勉強なんてスタート地点にすら立てなかった。そしてお父さんの家には塾に行くお金なんてものはなかったから、もうどうしようもなかった。結局お父さんの学校生活のほとんどは、何を言っているのかわからない先生の念仏をひたすら聞き流す時間になってしまったんだ」

「……!」

 仁君の表情が、明らかに変わった。ぼくたちもいつの間にか、仁君のお父さんの言葉に聞き入ってしまっていた。今の仁君のお父さんからは威圧的なオーラは感じられず、むしろその大きな背中にはどこか寂しさのようなものが滲んでいる気がした。

「お父さんは仁に、勉強でトップになれる学力を身に着けてほしいわけじゃない。ただ、授業が退屈で苦しいだけの時間となってしまわないくらいの、最低限さえ理解できていればそれでいいんだ。塾は学校の授業とは違って、どんなに時間がかかっても理解できるまで何度でも丁寧に教えてくれる。仁には、お父さんのような辛い思いはしてほしくない。だからこそ、仁に塾を薦めているんだ」

「……お、お父……さ、だって僕、知らなか……」

 仁君の目からは、ぽろぽろと大粒の涙が流れ落ちる。ぼくたちの中でも、仁君のお父さんに対する印象ががらりと変わってしまっていた。仁君のお父さんは、仁君が憎くて塾に行かせようとしていたわけではない。仁君を愛しているから、塾に行かせようとしていたのだ。

「う、うううう……」

 仁君はお父さんの胸に顔を押し当てて、しばらくの間声を上げて泣いていた。仁君のお父さんは時折わしゃわしゃと頭を撫でながら、その体を優しく抱き留めてあげている。

 月明かりだけに照らされている夜の中で、親子の心は通じ合った。

 それはつまりぼくたちの家出が、終わりを迎えたということだった。



「なあ、どんな感じ? 塾の体験講習行ってるんだろ?」

 家出騒動から数日が経ったある日の、昼休み。トイレを済ませて廊下に出た所で、隼人とぼくは仁君に遭遇した。よっ、と手を挙げて軽く挨拶をした後、隼人は仁君に塾の話題を振った。

「それがさ……なんかイメージと違ったっていうか、すごいんだよ。紅茶とか、お菓子とか出るんだよ。それに、先生も優しいし……」

 そう話す仁君の表情は、とても穏やかだった。先週までの暗い顔とは大違いのその姿を見て、ぼくも隼人も自然と笑顔になる。

「あと、その塾って学区の端にあるから、他小の子も通ってたりするんだよね。それで体験講習に、僕と同い年の他小の子がいるんだけどさ、その子すっごい面白いんだ。そんで、すっげーバカなんだよ。きっと僕より頭悪いよ、あいつ」

「へえー、いいなー。他小の友達とか。そうだ、今度そいつ連れてこいよ。みんなでサッカーとかして遊ぼうぜ!」 

 しかしその隼人の誘いに、仁君はちょっと困ったような顔になった。ぼくと隼人が揃って首を傾げると、仁君はちょっと恥ずかしそうに口を開いた。

「あーいや、その子、女子なんだよね……。だから、サッカーとかするかなあ……」

「じ、女子? おいおい仁、お前まさかそいつに惚れたんじゃ……」

「ち、違うよ! そういうんじゃないけど!!」

 そう言って、隼人と仁君はワーワーじゃれ合い始める。ぼくはその微笑ましい様子を、少し離れたところから見守った。何はともあれ、仁君の塾生活はなかなかに楽しいものになっているようだった。

あの家出で仁君は父親の本心を知り、親子の仲は修復された。つい数日前の出来事なのにまるで遠い昔のように感じられてしまうその日を振り返ると、ぼくは同時にある言葉を思い出してしまっていた。それは家出計画がバレた日に、お母さんが言った言葉。『ちゃんと話し合え』。結局今回の件はお母さんの言う通り、家出なんてするまでもなく親子がちゃんと話し合っていれば解決していただろう。つまり今にして思えば、ぼくたちはとんでもなく遠回りなことをしてしまっていたのだ。

 だけど、ぼくは今回の家出が決して無駄な出来事だったとは思わなかった。だって、普段思っていても中々言えないことだってある。いくら家族といえど、いや、むしろ家族だからこそ言いにくいことだってあるのだ。そんな気持ちを外に出す『きっかけ』に、ぼくたちの家出はなりえたんじゃないか、と思う。

「うー、伊織君助けてよー! なんか今日の隼人、ありえないくらいしつこいよ!!」

 そのとき隼人から逃げ回っていた仁君が、助けを求めてぼくの背中へと隠れた。背中から伝わってくる温かい体温に、ぼくはふっと笑みを浮かべる。

 この家出で、ぼくには友達が一人増えた。

 小柄でおとなしくて、だけど時には大胆な行動をとってしまうような、そんな男の子だ。



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