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星の見守り人 過去の章  作者: 井伊 澄洲
ジパング修学旅行 編
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第15話 人攫い!?

 えりかは嬉しそうにその集団に声をかけた。

 

「あの~すみません・・・島田の宿場へ行く道はこちらであっていますか?」


声をかけてからえりかはしまったと思った。

遠くから見た感じでは男女の混ざった旅行者のように見えたのだが、いざよく見てみると女5人はえりかと同じような年頃だったが、男三人はガラの悪そうな若い男で、一人は侍らしく二本刀を差していて、残り二人も腰に一本刀を差している。

それは旅人というより任侠・・平たく言えばヤクザのような格好だった。

しかも女子の何人かは縄で繋がれている。

(これは人攫い・・・いえ、人買い?)

えりかは道中、人攫いや人買いには十分注意するように授業で散々教わってきた。

それが道に迷って油断していたとはいえ、とんでもない連中に声をかけてしまったと、後悔しているえりかに、一人が声をかけてくる。


「あん?どうしたい?姉ちゃん?」


自分から声をかけてしまった以上、えりかも無言でいる訳にもいかない。


「あ、いえ、その、宿場はどっちかな~って・・」

「なんだ?迷子か?姉ちゃん?」

「いえ、まあ、その・・・」

「ひゃっひゃっ!宿場何ぞよりもっと良い所へ連れて行ってやろうか?」


そう言って一人が近づいてきて、えりかの腕をグイッと掴むと、自分の方へと引き寄せる。


「いやっ!やめて!」


思わず反射的に男の顔に思いっきり平手打ちして難を逃れる。


「イッテェ!何しやがる!このアマ!」


えりかに激昂する男。

(人攫いだ!このままだと私も攫われちゃう!それにあの娘たちも助けてあげなきゃ!)

そう思ったえりかは思わず背中の背袋と水筒を落として身軽になり、反射的に自分の腰に差していた伸縮型の旋棍を抜いて構える。

えりかが手元のボタンを押すとジャキン!と先が伸びて、本来の姿である旋棍となる。


「お?なんだ?

てめえ・・・それは?やる気か?」


えりかの構えを戦いの合図と考えた男がスラリと腰に差していた刀を抜く。


「ずいぶんと変わった格好をしているが、結構上玉そうだ。

行きがけの駄賃にこの女も持っていくか?」


男がもう一人の男に話しかけると一方もうなずく。


「そうだな、確かに奇妙な格好をしているが、中身は中々良さそうだ、手伝うか?」

「あほっ!こんなアマっこ、俺一人で十分に決まっているだろ!

俺様にビンタくれた礼を含めてとっちめてやらあ!」


そう言うと男は刀をちらつかせながらえりかに近づいてくる。

その会話を聞いてえりかは確信を持った。

(間違いない!人買いだ。私を捕まえて売る気なんだ)

しかし一人ずつかかってきてくれるのはありがたい。

三人に一度で襲われたらどうしようもなかっただろうとえりかは思った。

臨戦態勢に入り、いっそう身構えるえりかに男が片手で刀を無造作にブンブンと振り回しながら、話しかける。


「おら、小娘?よくも俺の顔にビンタ張ってくれたな?

 ただですむと思うなよ!」


しかしその凄む姿にえりかが逆に驚く。

(何?この男?隙だらけじゃない?)

仮にもジパングで授業でとはいえ、護武術二段、旋棍初段、短刀初段と、履修している武術で、全て段位を取っているえりかの目から見て、その男は隙だらけだった。

えりかは同じく剣道や棒術の段位を持っている男子とも他流試合をした事があるが、少なくとも段位を持っている男子で、こんな隙だらけの者はいなかった。

勢いよく刀は振り回しているが、型も何も無く、そこら辺の子供がちゃんばらをしている様子と大差はない。

(まさか誘っているの?それとも油断?いえ、舐めているのかしら?)

旅行前に聞いた話だが、ジパングでは女子も武道は必須だが、日本では武家の中でも、よほどの女性でなければ武道は嗜まないと聞いた。

だから日本の男はジパングの女子が武道をこなすのを知ると驚くという。


「いくぞ!おらあ!」


男が声と共に勢いよく、切りつけてくるが、それをえりかはあっさりと避ける。

(いける!この男は単に刀を振り回しているだけだ)

そう考えたえりかが男の背中を旋棍で打ちつけ、さらにもう一度向かってきた所をすれちがいざまに右腕をしたたかに打ちつけ刀を落とさせる。


「ハッ!」


そのまま気合と共に、水落に一撃を加えると男が崩れおちる。


「おぅ・・なんだ・・このアマ・・」


腹を抑えながら崩れ落ちる男を笑いながらもう一人の男が参戦してくる。


「おいおい!アマっこにやられてるじゃねえかよ」


そう言ってもう一人の男が襲い掛かってくるが、こちらもえりかの敵ではなかった。

あっという間に先の男と同様にえりかにやられる。


「なんだ?このアマッこ?強ぇぞ?」

「あの変な武器はなんだ?」


地面に這い蹲りながら驚いた二人が話していると、それまで無言で見ていたもう一人が話しに入ってくる。


「ふっふっふ、お前ら無様だな」

「先生、そんな事言ってねぇで、助けてくださいよ」

「いいのか?たかが小娘一人に俺を頼って?」

「こうなりゃもう、恥も何もねえですよ」

「ま、この小娘、お前たちには、チト荷が重いとは思っていたがな」

「なんでぇ、わかって見ていたんですかい?お人が悪い」

「ふっふ、少々確認したい事があってな、様子を見させてもらった」

「じゃあ、とっととやってくだせぇよ」

「わかった・・・」


そう言うと、その浪人風の侍は片手に持っていた徳利からグビリと一口酒を飲むと、スラリと刀を抜き、えりかに対峙する。

(この人・・・強い!)

えりかは直感的にそう思った。

先ほどの連中とは比べ物にならない、年恰好は先ほどの二人より若く見えるが、構え、気迫、酔っているにも関わらず、隙が全くなかった。

(たぶん、うちの剣道の師範代・・・ううん、きっとそれ以上だ)

本来だったらそんな相手にえりかが勝てる筈もなかったが、相手が酔っているのと、こちらを舐めてくれているのが救いだった。

その男はジロリとえりかを見るとつぶやいた。



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