第二章 瓦解の残響(3)
本当のことを言うと、起きた時は朝だった。そこは寝たときと同じ茂みだ。断じて、部屋の中ではない。
何だか嫌だな……と思いつつ、茂みの外に出る。広い道路だと思っていた場所には屋台が並び、巨大な市場と化していた。高層ビルが乱立していると思えば、活気の良い屋台が並ぶ都市。なんだか、混沌としつつもバランスの取れた場所だ。
ひとまず、その辺で宝石を売っているおじさんに話しかけてみた。
「ハロー」
「波浪? なんだそれは」
うわ。
なんとも表現しづらいのだが、謎の言語を使っているはずなのに理解可能である。意味が直接脳に届いているという感覚だ。気持ちが悪いが、気持ち悪がっているとおじさんに気持ち悪がっていると勘違いされてしまうので、無理に平静を装うことにしよう。おじさんに罪はない。
「少々すみません。実は日本という国から拉致されてこの地に捨てられたようなのですが、ここは何と言う国ですか? 何大陸の国ですか?」
そんな、にわかには信じられないことを聞いてみた。
「何言ってんだ小僧……ここは、フロキシア大陸の大国ルァゴルだろうが。商売の邪魔だ。しっし」俺だって、知らないおっさんから突然拉致されたなんて聞いたら嘘つけって思う。しかし、何大陸だって? 俺が知らない間に噴火でも起きて大陸と国が増えたのだろうか。
それならば仕方ない。
教育はいつだって嘘を吐くじゃないか。
このご時世には世界地図があり、六大陸や七大州等と区分され、視覚的ではなくとも国名がリスト化され、知識として教育として様々な国名を覚える機会はあるがその国々(主要国家だけでも)に直接訪れた者はどれだけいるだろう。更に、宇宙から地球を見て、地図に載っていない大陸を探した者がどれだけいるか。
ここは、そういう所なのだろう。秘匿された大陸、隔離された文化。そういった認識だけ持っておこう。