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スナック菓子で契約が成立する究極の世界。  作者: 環蝸
第三章 従順で善良で悪逆な市民
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従順で善良で悪逆な市民(7)

 順路は守らなければいけない。それは、順路以外の道を選ぶと行き止まりだからだ。

 そして、行き止まりの先を小動物が住処にしている事がある。

 小動物、それは例えば虫。例えばねずみ。例えば──

「コウモリだ……」

 無数のコウモリがモヒカン男を襲っている。吸血しているのか、それともただの威嚇か。カウボーイ野郎も呆気にとられている。

 僕はその隙にカウボーイ野郎にタックルし、奴を転倒させる事に成功した。奴が落としたライトを拾い上げ逃走。入口の方に行けば、そのまま逃げ切れるかもしれない!

 奴らの目的は所詮、娯楽、道楽、享楽。ただの快楽が目的だ。一方で僕は大切な””もの””を守るのが目的である。

 そもそもの動機の強さが違うんだよ……!?

 ……動機の強さが、唐突な出来事への対処を可能にしたんだ。今の僕は冴えている。自宅と学校とバイトの繰り返し生活だった僕には想像も出来ないくらい臨機応変に対応出来ている。流れるまま、否──流れるだなんてそんな自発的な言葉すらもおこがましい──意思もなく流され続けてきた僕には信じられないくらい物事に対処出来ている。今までなら自分の意思なんて介在しないように生きてきた僕では想像出来ないくらい、自分の意思を行動に反映している。

 凄い……。今なら何でも出来る稀ガス(気がする)。コウモリはたまたまあの場で起立していて背の高いモヒカン男を襲っていたが(モヒカンも起立しているしな!)僕が襲われたとしても冷静に対処したことだろう。何たって、僕は覚醒したんだ! 仮にちゃんと勉強すれば東大にだって入れるだろう! 僕は何だって出来るんだ! きっと僕の拳でトラックも粉砕出来るに違いない! 誰も僕を止められないんだ!!

 ──ぽすっ。

 僕はフサフサの壁にぶつかって、尻もちをついた。痛てて。

 フサフサの壁だって? そんな言葉を未だかつて使った事があっただろうか?

 壁というよりもそれは何か大きな動物の筋肉のような……。

「あ」

 見上げると、そこには熊が立っていた。大きさにして2mほどの熊がそこに立っているのだ。

「グルル」

 熊だって? この洞窟には小動物しかいないんじゃなかったのか?

 恐らく、行き止まりの寝ぐらで眠っていた熊が僕の叫び声を聞いて出てきたのだろう。立っているのも、辺りを見渡し音を聞き危機を察知しているのだろう。

 熊て……。

「うぁあああああああ!!!!」

 熊! 熊!?

「グォオオオオオオ!!」

 熊が威嚇してる!? やめて!

 腰が抜けて動けない!

(食われる!!!)

 その時。

「グオ!?」

 僕の後方から拳大くらいの大きさの石が飛んできて、熊の頭にヒットした。熊は突然の大きな衝撃によろめいている。

 怯えつつも振り向くと、そこにはカウボーイ野郎とモヒカン男がいた。

「少年よ。お前のケツをいただくのは俺だ! そんな奴にやられるなよ!!」

 そんな少年漫画で敵から味方になった奴のような事を言いながら、2人は僕と熊の脇を走り去っていった。じゃあ助けてくれよ!

 僕は身体に力を込めて立ち上がり洞窟の奥の方へと逃げた。熊の脇を通るのが怖かったのだ。

 だが、逃げてからそのミスに気付いた。洞窟の奥がどうなっているのかを僕はしらない。もしも行き止まりなら……。いや、考えるのはやめよう。そのうち熊も諦めるかもしれない。

 どうにか逃げ切るぞ!!

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