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2.ふわふわのもふもふ

……暖かい。


瞼が上手く開かない、どれくらい眠っていたんだろう…。


なんだか、この暖かいのすごく安心するなあ。

まだ寝てたいけど…そろそろ起きなくちゃ、また夕方に目が覚めて後悔することになるし…。


夕方…?あぁっしごっ仕事!寝坊寝坊寝坊寝坊!!


「まぁっ目を開けたわ!あなた!あなた〜っ!!」


寝坊したと思って目を開けたら、人の腕の中だった。

人…人というか…猫と人を合わせたような…?

なんていうんだっけ、えーと…獣人…?


「ミーーーーッ!」


ウワー!声出ない!ていうか獣人!?そっそんなファンタジーなっ!あっそうだなんか神様が転生がどうのって言ってた気がするーーっ!


思わず頰に手を当てる。


するといつもと違った感触が帰ってきた。


もふっ


恐る恐る自分の手を伸ばして観察すると、そこには白と茶色と黒の三色の色のもふもふの腕が!

私も猫獣人になってる!!


「ミーッ!ミャーッ!」


「あらあら、お腹空いたのかしら?今おっぱいあげるからね〜」


私が混乱の声を上げていると、私を抱きかかえている獣人がゴソゴソと服を手繰り上げはじめた。


あっれ、私今ベイビー?

そういえば伸ばした手がやけに小さかったし…。

声は出ないし…。


そうするともしかして…私を抱きかかえているこの、この獣人は、お母さん…?


「さ!準備できたわよ!お腹いっぱいにしましょうね〜」


ぐいっと引き寄せられる。

えっ!?まままま、まっあー!待って!この歳でおっぱい飲むとかまじで!心のっ準備がっ!アッアッまじでええええぇぇ……





◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎





……ゲップ。


ええ飲みましたとも、ええそれはもうゴクゴクと。

赤ん坊の欲には勝てませんでした…。

今はお母さんに背中トントンされてまた寝そう。

私がウトウトしていると…


「あぁあぁっ!」


突然の大声にビクッとして、私は声のした方に顔を向ける。

そこにはお母さんより一回り大きい猫獣人が立っていた。


「あなた!お帰りなさい!」


あなた…ということは私のお父さん?


「ああ、ただいまマリアーナ!声が聞こえたから急いで帰ってきたよ!ついに僕たちの子が目を開けて!なんて可愛いんだ!」


お父さんが私ごとお母さんを抱きしめる。

やだ、可愛いだなんて…言われたことないのに、お父さんに言われると余計恥ずかしいな。


「ふふ、苦しいわ、ダイ。私もこの子も潰れちゃうわ。」


口ではそう言いながら、お母さんは喉を鳴らす。

お母さんはマリアーナ、お父さんはダイって言うのか。

お母さんは顎だけ白くて綺麗なオレンジと黒のグラデーションがかった毛並みで、お父さんは白と黒の毛並みでハチワレになっている。

ていうかさっきからラブラブすぎでしょ!

ええい、私を放ってゴロゴロ言いながらイチャイチャするなー!


「オホンッ」


私の気持ちを察したかのように低く掠れたような声が響く。

固まっているお父さんとお母さんの間から、ふさふさでまるでライオンのような艶のあるオレンジに黒で幾らか模様の入った威厳のある猫獣人の姿が見えた。


「全く、子供が生まれてからというもの賑やかじゃのう〜。」


「ローガ村長!」


村長と呼ばれたその猫獣人は、長い毛の中から舌をチロっと見せてホッホッホ、柔らかく笑う。


「村長いいところに!見てください!うちの子が目を開けたんです!」


興奮気味にお父さんがお母さんから私を受け取り、村長へ見せる。


「ミー」


「おお、ヨシヨシ。なんと顔立ちのハッキリした可愛い子じゃろうか。こりゃあ美人になるに違いない!」


私はお父さんから今度は村長へ、抱かれるとその綺麗で長い毛に埋もれてしまいそう。

あーっていうか天国か!ふわふわのもふもふなんだけど!キモッチイイー!

昔から動物は好きなんだよね。

犬とか猫とか、鳥もだし、爬虫類もなんでも。

人間以外はみんな好きだった。

よくよく考えると猫獣人に転生して良かったかもな。

人間の形だと、また嫌な思いもするかもしれないし…。


「さて、目が開いたのなら儀式じゃな。名はもう決まっておるのか?」


「ええ!この季節にピッタリの名前ですわ。」


うん?儀式?何するんだろ、お披露目会みたいなものかな。

まあ行ってみればわかるでしょう。


「さあ、村の中心、祭壇の前に皆の衆よ、集まれい!」


村長が歩きながら一声吠える。


するとワッと草むらからたくさんの猫獣人が!


「おおー!目開いたんだな!」「まぁ、素敵な毛並みをしているわ」「可愛いー!」


いろんな声が聞こえる。

猫獣人達は祭壇の両脇に、私たちに道を空けるように並び、跪いていた。


祭壇の前には村長と、抱えられた私、それから両脇にお母さんとお父さん。

そう並んだ途端さっきまでザワザワしていた猫獣人たちが静まり返る。


「天に御坐す我らが獣神様。我が村に新しき命を授けて頂きましたこと、誠に感謝いたします。」


「父に、ダイ。母にマリアーナ。間に生まれし新しき命の御名前、ここに宣言致します。」


「御名前を、 ハル と命名致す!」


村長が私を掲げる。

その瞬間、ブワっと風が吹いた。


それは雲を蹴散らし、隠れていたまん丸な月を私の前に差し出し、花びらを舞い上げた。


なんて、綺麗なんだろうーー。


「でしょでしょ〜いい演出でしょ〜僕も気に入ってるんですよぉ〜!」


!?

この、この間延びした声は…!?


「はぁい、神様ですよぉ〜。早速神託下ろしに来ちゃいましたぁ〜」


えっえっ

ええええぇぇぇぇー!!


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