1 高校生活
「ねぇ、聞いた?転校生だって!」
「うん。優しい人だといいね」
自動販売機の陰で休みながら、噂話をする朝を相手に、真月 はにこやかに答えた。
手にした水筒にはもう氷しか残っていないし、持ってても意味が無い。
けど、熱を持ったコンクリートに置くわけにもいかず、追加で自動販売機で買ったコーラを注いでいた。
世間体のイチイチが騒がしくて、落ち着く場所すら見つからないこの学園内の、唯一の逃げ場は自動販売機の影。さすがに静かだし、追っかけ【この班は何かと美女ぞろいだし強いから有名】も来ない。
山裾に近く、夏は蚊などが多いせいか近づく生徒は少ない。まあ、蚊なんて虫はこの山にいないのだが。
真月の高校は昼の部、午後の部がなく、授業は定期時に始まるが、受けるものは少ない。
寮に帰れば、ポストに参考書とノートのコピーと課題のプリントやらなんやら入っているから、学業に支障は出ていない。
つまり、授業を抜けても何も言われない自由高校ということだ。
先生との付き合いも、すれ違って挨拶だけ・・・班長である真月は頻繁に職員室を出入りしている方だからたまにはあるか。
あー、やっと一息つけた・・・。
昼は一回も休まなかったし、肩が凝ってしかたがない。
まるで肩に石がどっしりのしかかるみたいだ。
戦闘班には階級があって、班の強さによって仕事が変わってくる。うちらは何かといいメンバーが集まった最強のSクラスなので、仕事量も倍、敵の階級も倍だ。
朝の方は上機嫌で、これからやって来る転入生の
想像兼妄想空想少々現実気味兼二次元多量注意劇場の視聴中だ。
もう、今日で7件も片づけているというのに。
「ねえ、転入生って、どういう人な訳?」
「さあ」
「・・・・・分からない訳?」
「うん。あ、でも・・・以外にイケメンかも?」
「じゃあ、何で朝はこんなにドッポリ転入生に、ありもしない想像膨らませてる訳?」
「・・・・変人だからじゃないかな?」
突然。冴姫は、口を大きく開けてアハハハハハハハハハッと笑い出した。
ピピピピッ!
突如、冴姫の笑い声に紛れて、電子音が三人の輪の中に響く。
目の前で和んでいた二人の顔が一瞬にして硬直するのが分かる。
任務のメールだ。
メールを開けば、既読がつき、自動的に了承したということになるが……(給料倍になるなら)仕方が無い。
「東通り3丁目、A級のゲイドだって、行こっか」
戦闘班について
S……Aよりも遥かに上の才能をもつ。ワケアリが多く、主にレベルの高いゲイドの任務につく。
A……並より出来るがどこか劣るる所がある。主にレベルが高くないゲイドの任務につく。
B……才能あるが一般的。ここから芽吹く秀才も現れる。主に応援部隊。
c……才能あるが、精神的にヤバイらつらの集まり。主に情報収集。