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Story 8.夏奈子、性転換を考えるの巻き

 満月の日の朝、体に違和感を覚えた私は直ぐに起きて一階に降り、トイレへ入ってズボンを下げた。

 スパッツを穿いている。

 私は恐る恐るスパッツを下ろした。

 すると何と、股間にあった筈の私の一物が消えていた。

 私は他に異変が無いか、体の隅々を調べた。

 先ず頭。髪が背中まで伸びている。

 次に胸。

「ん」

 触れてみると感じてしまった。

 つーか漏れる!

 私は便座を下ろして座った。

 小便が股間を伝って便器に落ちる。

 小便をし終わり、私は紙で股間を拭いてスパッツ、ズボンを穿いて水を流し、トイレから出て洗面所に移動した。

 洗面台の鏡を覗くと、そこには美人女性が映っている。私だ。

「よっしゃー、戻ってる!」

 元の姿に戻っている事に喜びを感じた私は思わず叫んだ。

ピンポーン

 チャイムが鳴った。

 私は玄関に移動してドアを開けた。

「おはよう、有紀檸」

 と、来客の夏奈子が言う。

「おはよう、夏奈子」

 私はそう言って夏奈子の唇を奪った。

「もう、有紀檸ったら」

 夏奈子は頬を赤らめ照れてしまった。

「まあ良いじゃないか。恋人同士なんだし」

「うーん、でもやっぱり恥ずかしいわ。こんな朝っぱらから」

「大丈夫。誰も見て・・・」

 その時、背後に気配を感じた私は、恐る恐る振り向いた。

 その先には、顔を真っ青にした有紀雄が居た。

「一寸待ってて」

 私は夏奈子にそう言うと、ドアを閉めて有紀雄をリビングまで連れ込んだ。

「私たち元に戻ってるんだけどどう言う事?」

「し、知らねえよ。つーか、女同士でキス?」

「恋人同士なんだから問題無いだろ。それとも何か?本当だったらお前が夏奈子の唇を奪う筈だったのに先に取られて悔しいってか?」

「否、そうじゃなくて、女同士でキスする事自体が問題なんだよ。考えてでも見ろ。恋人と言うのは、男と女の二人組。女と女じゃ変だろ」

「じゃあお前、夏奈子に好きだって告白してこい」

「何でそうなるんすかね?」

「良いから行ってこい!」

 そう言って私は有紀雄のケツを蹴ってやった。

げしっ!

「蹴るなよ!」

五月蠅うっせえ。さっさと行け」

 私は有紀雄を睨んだ。

 有紀雄は「ひいっ!」と怯えながら玄関まで行き、ドアを開けて夏奈子と対面した。

「よう、夏奈子」

「あら、有紀雄じゃない。珍しいわね、あんたから話し掛けてくるなんて」

 へえ、有紀雄は自分から話し掛けた事が無かったのか。

「あの、俺、夏奈子の事が好きです!付き合って下さい!」

「それは何の冗談かしら?」

 夏奈子は笑みを浮かべながら訊ねる。

「冗談じゃない。マジなんだ。俺、お前の事が頭から離れず、夜もずっと眠れないんだ」

「それは重傷ね。頭殴れば綺麗サッパリ忘れられるわよ」

 夏奈子は有紀雄の告白を受け流し、拳を作って有紀雄の頭を殴った。

ポカッ!

「いてっ!何すんだコラ!?」

 有紀雄は涙目で夏奈子を睨んだ。

「今ね、付き合ってる人が居るの。だからあんたとは付き合えない。つーか、私あんたの事好きじゃないから」

「だとよ」

 と私は有紀雄の斜め右後ろに立って肩に手を乗せた。

「気にすんな。お前には黒田が居るじゃないか」

「え、有紀雄って新一と付き合ってんの?」

 その問いに有紀雄は「付き合ってねえよ!」と両手を振りながら否定した。

 するとそこへ、バッドタイミングで新一が現れた。

「か、夏奈子。来てたんだ?」

「え?」

 振り向く夏奈子。

「し、新一!?あんた、何しに来たのよ!?」

「暇だから遊びに来たんだよ」

「有紀雄とデート?」

「違うからね」

「何だ、付き合ってないのか」

「どっからそんな出鱈目な情報が出て来てるの?」

「有紀檸が」

「有紀檸って?」

 こいつ、私を知らんのか。

「私の恋人よ」

 夏奈子がそう言って私を指差す。

 すると新一が私を見て頬を赤らめた。

「新一、有紀檸は私の物だからね」

「夏奈子、やっぱりそっちの気があるんだ。別れて正解だったよ、僕」

「(なあ、姉貴)」

 と有紀雄が小声で話し掛けてくる。

「(何だ?)」

「(黒田に告白したら?好きですって)」

「はあ!?」

 訳が解らなかった私は素っ頓狂な声を上げる。

「どうかしたの?」と夏奈子。

「何でも無い」

 私はそう言うと、二人を残して有紀雄と共にリビングに移動した。

「有紀雄、私は夏奈子が好きなの。解る?」

「黒田は好きじゃねえのかよ?」

「始めてあいつを目にした時はそうだったが、今は夏奈子だ」

「マジで言ってんのか、それ?」

「ああ、マジだ」

「・・・・・・」

 有紀雄が私を可哀想な者を見る目で見詰める。

「何だ、その顔は?」

「否、別に。姉貴が夏奈子を好きなら止めやしないけど、俺はどうなるんだ?」

「お前がどうなろうと私の知った事では無い。それにお前はもう失恋しているからな。今更どうって事も無いだろ」

 私はそう言い残して玄関に戻った。

「あれ、夏奈子は?」

 夏奈子が不在である事に気付いた私は、新一にそう訊ねた。

「夏奈子なら今、用事を思い出して慌てて帰ったよ」

「ふーん。で、お前は何してるんだ?」

「僕は、澤田と遊びに行こうと思って、誘いに来ただけ」

 私はリビングに居る有紀雄を顧みた。

 かなり落ち込んでいる。

「有紀雄は今、落ち込みムードだから駄目だと思うぞ」

「そうか。じゃあ今日の所は帰る。そう伝えといて下さい」

 新一はそう言って踵を返した。

「待った」

「え?」

「お前、暇なんだろ?これから私とデートしないか?」

 何を言ってるんだ私は?

「で、デートってそんな!僕があなたの様なお美しいお方となんて勿体ないですよ!」

 その言葉に私は心惹かれた。

 今まで、私を美しいと言ってくれた男など居なかったから。

「そ、そんな事言われると、惚れちまうぞ?」

 言って私は頬を赤らめた。

 超恥ずかしいわ!

「それじゃあ惚れて下さい」

「え?」

「僕、貴方を見た時、ドキッとしました。だから、貴方も僕に惚れて下さい」

 その言葉に、私の心臓が高鳴る。

「あの、僕、黒田 新一と言います。貴方は?」

「わ、私は澤田 有紀檸。有紀雄の双子の姉だ」

「え、澤田くんのお姉さんですか!?」

 新一は驚いて目を大きく開けた。

「そんな、彼にこんな美しいお姉さんが居たなんて知らなかった」

「夏奈子とどっちが美しい?」

「夏奈子なんか比べ物にならないくらい」

「そ、それは何か、嬉しいな。よし、お礼にプレゼントだ」

 私はそう言って新一の唇を奪った。

「ん!?」

 驚き戸惑う新一。

「ぷはっ」

 私は唇を離し、新一を見詰める。

「あ、あの、僕なんかとして良いんですか!?」

「良いんだ、別に」

「で、でも、夏奈子に知られたら・・・」

「大丈夫だ」

 私はそう言って再度、新一の唇を奪った。

「有紀檸、何やってんのよ?」

 塀の陰から姿を現した夏奈子が私を睨んできた。

「夏奈子!?お前、帰ったんじゃ?」

 私は慌てて唇を離しそう訊ねた。

「帰ろうとしたんだけどさ、頭の中で戻れって声がして」

 嘘だ。此奴絶対此処に居た。

「それよりあんた、今何してたのよ?」

「何って、何もしてないよ?」

「嘘。新一とキスしてた。私見てたんだからね」

「ごめん。怒ってる?」

「当然よ!あんたがそんな奴だったなんて知らなかった!さよなら!」

 夏奈子はそう言って走り去った。

「一寸待て夏奈子!」

 私は慌てて夏奈子を追う。

「来ないで!あんたなんか大ッ嫌いよ!」

 そう言って夏奈子は速度を上げるが、道に落ちていた小石で足を躓き転倒した。

 私は近付いて声を掛ける。

「大丈夫か?」

「放っといて」

 そう言って立ち上がろうとする夏奈子だが、足を挫いてしまっていて立てなかった。

「ごめんな、夏奈子。もうしないから」

「信じられないわね」

「どうしたら信じてくれるんだ?」

「家まで送って」

「任せろ」

 そう言って私は、夏奈子を背中に乗せて家まで向かった。

 駅に着き、電車に乗り、隣の駅で降り、少し歩いて真田家に到着し、中に入って夏奈子の部屋を目指す。

「有り難う」

 部屋に入ってベッドに座らせた所で、私は夏奈子にそう言われた。

 私は夏奈子に笑みを返した。

「ねえ、有紀檸」

「ん?」

「私の事、好き?」

「勿論、好きだ。大好きだ」

「そう。良かった。じゃあさ、キスしてよ」

 その時、私の頭に有紀雄の言葉が過った。

『女同士でキスする事自体が問題なんだよ』

「ねえ、してよ。キス」

「へっ?」

「キス」

「あ、ああ。解った」

 私はゴクリと唾を飲み込み、唇を夏奈子に近付けるが、重ねる事に躊躇いが生じた。

 すると夏奈子の方から、唇を重ねてきた。

 驚き戸惑う私。

「ぷはっ」

 唇を離す夏奈子。

「有紀檸、何か変」

「今の有紀檸、心此処にあらずって感じだよ。何か悩みでも?」

「否、そんな事無いって!」

 私は両手を振りながら否定した。

「じゃ、私は帰るな」

「え、帰るの?」

「ああ。帰って有紀雄にご飯作ってやらなきゃ」

「そう。じゃあまた明日」

「ああ」

 私は夏奈子の部屋を出てドアに寄り掛かった。

「はぁ」

 と小さな溜め息。

 私、ホントに夏奈子が好きなのかな。

 私は夏奈子の顔を頭に浮かべた。

 するとその顔が新一の顔に変化を遂げた。

「やっぱそっちか」

 私はそう呟くと、真田家を跡にし、自宅へと戻った。

 家に着くと、帰宅しようとしていた新一に出会った。

「お前、居たのか?」

「あ、有紀檸さん。夏奈子はどうでした?」

「大丈夫だったぞ。つーかお前の方はどうなんだ?」

「どうって?」

「先刻のだよ。私に惚れろって言ったろ。あれ、もう少し考えてみたら?」

「うん。じゃあそうする」

 そう言って新一は帰って行った。

 何をしてるんだ私は。私はあいつが好きじゃないのか。

 なんて考えてても仕方ないか。

 私は家に上がり、部屋に入った。

 ベッドには有紀雄が横たわっていた。

「有紀雄、人の部屋で何してる?」

「人のって、俺の部屋だよ。姉貴のはあっち」

「あ、そっか。元に戻ったんだっけな」

 私は笑いながら部屋を出て向かい側にある自分の部屋に入った。

「何だこの有り様!?」

 私は部屋の散らかり様を見て驚いた。

「有紀雄、一寸来い!」

 私が叫ぶと、有紀雄が面倒臭そうな顔でやって来た。

「何だ、これは?」

「何って、散らかった部屋」

「そんなの見りゃ判る。どうしてこんなに散らかっているのだ?」

「片付け面倒だなぁって思ってたらいつの間にか貯まってた」

「ほお、そうか。お前は私に喧嘩を売っているのだな?」

 そう言って私は拳をポキポキ鳴らす。

「今すぐ綺麗にしろ。でなきゃ鉄拳が飛ぶぞ」

「メンドイ」

「そうか。ならお仕置きだな」

 そう言って私は拳を有紀雄の顔面に埋ずめ、怯んだ隙にしゃがんで顎を蹴り上げ、宙に舞った所で連続キックを1,580発程お見舞いし、飛び上がって踵落としを放った。

 有紀雄は床に激突すると数回バウンドして仰向けに横たわった。

「あ、姉貴・・・殺す気か・・・?」

「殺しはしない、安心しろ」

「けど俺、もう死にそう」

「そうか。じゃあ死ね」

 そう言って私は助走を付けて有紀雄を蹴り飛ばした。

「うぉわっ!」

 有紀雄の体は通路を真っ直ぐ飛行して突き当たりの壁に激突して床に落ちた。

「死ぬわ!」

 有紀雄が立ち上がり、私の下に駆けて来て睨みながら言った。

「それだけ元気ありゃ大丈夫だ。それより早く綺麗にしてくれ」

「自分の部屋なんだから自分でやれば良いだろ」

「お前、本当に殺すぞ?」

「・・・・・・」

 有紀雄は怯えると、私の部屋に入って掃除を始めた。

「私は下に居るからな。しっかりやるんだぞ」

「了解でーす」

 有紀雄は半ベソを掻きながら、元気の無い声で返事した。

 私はその場を離れ、階段で一階に降りるとリビングに移動し、ソファに座ってテレビを付けた。

 すると画面に病院の手術室が映り、性転換手術がどうたらかんたらとテロップが出ていた。

 私はその番組を見入ってしまい、時間が経つのを忘れた。

 そして気が付くと、時刻は午後三時を迎えていた。

 私は立ち上がり、部屋の様子を見に行った。

「ちゃんとやって・・・!?」

 私が部屋を覗くと、散らかしたたままで有紀雄が私のベッドで気持良さそうに寝ていた。

 私はその有紀雄に近付き、顔面を殴って起こした。

「貴様、何をサボっているんだ!?」

「ひいっ!」

 有紀雄が怯えた顔で飛び起きる。

「サボってないで片付けろ。でなきゃ東京湾に重り付けて沈めるからな」

「段々とスケールが大きくなってますね!」

「驚いてる暇があったら早く動け!」

 そう言って私は有紀雄をベッドから引きずり下ろしてケツを蹴ってやった。

「いてっ!」

「片付けないと蹴り続けるからな」

「今やりまーす!」

 そう言って有紀雄は掃除を再開した。

 私はベッドに座って有紀雄がサボらない様にそれを見物する。

 それはそうと、性転換手術か。

 受けるとなると相当な金が必要だな。

 性転換手術に興味を持った私はそんな事を考え始めた。

「って、何休んでんだてめえは!?」

 私は立ち上がり、手を休めていた有紀雄の頭に蹴りをくれてやった。

「いてっ!」

「やる気あんのかてめえ?」

「ありますともー」

 有紀雄は涙目になりながら元気の無い声でそう言うと手を動かし始めた。

 私はもう一度ベッドに座って性転換手術について考える。

 仮に私が性転換したとして、夏奈子は喜ぶだろうか?

「んー・・・」

 私は唸りながら、私が性転換を受ける事を知った夏奈子の顔を浮かべる。

 ・・・・・・。

 浮かばなかった。

「有紀雄、片付けながらで良いから聴いてくれ」

「何だ?」

「性転換手術って知ってるか?」

「ああ、知ってる。って、姉貴まさか受けるの!?」

「まあ、考えてはいるが・・・」

「マジで!?」

 有紀雄が手を止めて私を見る。

「姉貴、どうして急にそんな!?」

「夏奈子の為かな。まあ別にこのままでも良いんだけど、それだと将来困るからな」

「困るって何が?」

「結婚だ。私、夏奈子と結婚するつもりでいるんだ。だけど、女同士の結婚はこの国じゃ認めてない。だから」

「それ、夏奈子には相談したのか?」

「してない」

「そうか。じゃあした方が良いかもな」

「そうだな」

 私は横になり、目を瞑った。

 そしてそのまま眠りに入り、翌朝目を覚ました。

 部屋を見ると、綺麗に片付いていた。

 夏奈子ん家行くか。

 私はベッドから出ると、バスタオルを持って脱衣所に移動した。

 服を脱ぎ、裸になって浴室に入る。

「えっ?」

 中には夏奈子が居た。

「何やってんの?」

「あ、有紀檸。おはよう」

「おはよう。つーか家の風呂で何してんの?」

「見て判んない?シャワー浴びてるのよ。今朝、家のお風呂壊れちゃってさ。それで、借りに来ちゃった」

「そうか、それは災難だったな。それより聴いてくれないか?」

「何?」

「私、性転換手術を受けようと思うんだ」

「はあ!?」

 夏奈子は訳が解らず素っ頓狂な声を上げた。

「性転換手術だ。昨日、考えたんだけどさ、女同士の恋人ってのはやっぱ拙いよ。どっちかが男にならなきゃ。そうだろ?」

「駄目」

「え?」

「手術なんか受けちゃ駄目」

「何でだよ?」

「だって、有紀檸が男なんかになったら、私が有紀檸の子ども産まなきゃいけなくなるもん。だからお願い。考え直して」

「そ、それはつまり、お前も考えてるって事か?」

「まあ、一応」

「んー・・・」

 私は唸りながら、夏奈子に産ませるシーンと私が産むシーンを思い浮かべた。

「産みたいかも」

「じゃあ、私が受けるよ。その手術」

「良いのか?」

「うん。私ね、本当は男に生まれたかったんだ。だから、思い切って受ける」

 夏奈子はそう言うと[じゃあ」と残して浴室を出て行った。

 夏奈子が男ねぇ。となると私は男になった夏奈子にあんな事やこんな事をされるって訳か。何か凄く楽しみだ。

 私はそんな事を考えながら、シャワーを浴び、頭と体を洗い、浴室を出てバスタオルで体を拭き、自室へと向かった。

 その途中、階段の前のトイレから有紀雄が出て来て私の裸を見て鼻血を出した。

「あ、姉貴。裸体で家ん中彷徨うろつくのやめてくれ」

「別に良いだろ。今、男はお前しか居ないんだからな」

「そう言う問題じゃねえよ」

「じゃあどう言う問題なんだ?」

「裸で彷徨かれると襲いたくなるんだ」

「そうか。じゃあ襲えば良いじゃないか。好きなだけ襲われてやるぞ」

「マジで!?ヤッホーイ!」

 有紀雄がそう叫んで押し倒そうとしてきた。

「ふんっ」

 私は素早く避けて顎を蹴り上げ、宙に舞った有紀雄の体に2,500発の蹴りをお見舞いし、飛び上がって止めの踵落としを放った。

 有紀雄は床に叩き付けられ、数回バウンドしてうつ伏せに状態になった。

「どうした。もう襲わないのか?」

「畜生!こうなったら意地でもセックスしてやる!」

 そう言って有紀雄が起き上がった。

 私はその有紀雄の顔面に躊躇う事なく拳を埋ずめる。

「おぶっ!」

 有紀雄は変な声を出して吹っ飛び、玄関のドアにぶつかった。

「この野郎!」

 有紀雄が起き上がって駆けてきた。

 私は上にジャンプして避けた。

「うおっ!」

 有紀雄は転んで床を滑って行き、壁にぶつかって止まった。

「避けんなよ!」

「避けなきゃお前に押し倒されてGAME OVERだ」

「俺はゲームのボスか?」

「否、雑魚モンスターだ。ドラ○エで言うとス○イム辺りか」

「一撃で死ぬわ!」

「何を言う。メタルス○イムは頑丈だぞ?」

「そっちなのかよ・・・。つーか、早く着替えろ」

「ああ、わかっ・・・へくちっ!」

 私は可愛らしいくしゃみをしてしまった。

「バーカ。だから全裸で彷徨くなって言ったんだ」

「面目無い」

 私はそう言うとバスタオルを巻いてさっさと部屋に行き、服を着て有紀雄の下に戻った。

「へ・・・へくちっ!」

 再び可愛らしい嚔を放った。

「風邪だ。寝てろ」

「風邪如きに敗ける私では──」

 その時、倦怠感が私を襲い、その場に倒れてしまった。

「有紀雄、スマンがベッドまで運んでくれ」

「嫌だ」

「殴るぞ?」

「そんな状態で出来るのか?」

 私は匍匐ほふくで有紀雄に近付き、背中に乗って頭を思いっ切り叩いた。

「いてっ!」

「殴られたくなかったらベッドまで運べ」

「イエッサー」

 有紀雄はそう返事をして私を背負い、部屋まで行くと私をベッドに寝かせた。

「有紀雄、部屋はお前が?」

「否、夏奈子だ」

「そうか。じゃあお仕置きだな」

 私はそう言って有紀雄の腕を掴んで体を寄せ、上下反転して乗し掛かって顔面を痣が出来るまで殴った。

「姉貴、暴力はやめろよ」

「暴力じゃない。お仕置きだ」

「虐待だぞ?」

「虐待じゃねえ!」

ガスンッ!

 私は思いっ切り殴った。

「すびばぜん」

 有紀雄はそう言って気絶した。

 私は有紀雄の体をベッドから落とした。

 しきし気絶している為か、反応は無かった。

「つまんね」

 私はそう呟くと、布団を被って眠った。



つづく


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