Story 3.男になりました・裏!
これはStory 1の裏側で起きていた出来事です。有紀雄視点になっていますので二度美味しい筈です。
俺の名は澤田 有紀雄。今は訳有って姉の有紀檸の体になっている。
その俺に最近、彼女・・・では無く、彼氏が出来た。お相手は姉貴が惚れた黒田 新一だ。
ある日の放課後、夏奈子ちゃんと話しをする事に失敗した俺は、屋上へとやって来た。
すると、転落防止用のフェンスを越えた先の縁に、新一が立っていた。
「待て黒田!早まるな!」
俺は新一の下まで駆けた。
「黒田、何か遭ったんなら話してみろ」
「聞いてくれるのか?澤田」
「ああ」
俺が頷くと、新一はフェンスを越えた。
「実はな、夏奈子にレズの傾向が有ったんだ」
否、あれはバイだな。
「でさ、僕、振っちまったんだよ」
「それで何で自殺に繋がるんだ?」
「ショックだったからに決まってるだろ!まあ、その事より、仲直りする方法解らないか?」
「多分無理だな。新しい恋人作れ」
ああ、俺が姉貴だったらなぁ・・・。
「新しい恋人?」
「ああ、そうだ。まあ、取り敢えず今日の所は帰ろう。お前の新しい彼女作りは明日から始めような」
「ああ」
そうして一緒に帰る事にした。
「あれ?」
俺は学校から駅までの途中にある恋愛公園の桜の木の下で夏奈子ちゃんとキスをしている姉貴を見付けた。
「どうしたの?」
と新一が俺の顔見て視線を確認すると、姉貴たちの方を見た。
「やべえなあれ」
「見るな」
見たらまたショックを受けるだろうと思った俺は慌てて彼の顔を覆った。
やべ、こっち見た!
俺は新一の顔を覆ったままその場を去った。
そしてそのまま駅まで来てしまった。
「お前も早く帰れよ」
俺は新一を解放すると、そう言って駅構内へと入って行った。
自宅に帰った俺は、風呂に入っていた。
すると突然、俺の息子が中に引っ込み、髪の毛が背中まで伸びてくると言う有り得ない異変が起きた。
俺はシャワーを止め、ドアを開けて風呂から出て目の前にある洗面台の鏡を覗き込んだ。
そこに写っているのは、姉貴の姿だった。
「何で?」
俺は自分の体を改める。
どう見ても姉貴だった。
「ただいま!」
と俺の声が玄関から響いた。まさか。
俺は慌てて体を拭き、平然を装って[おかえり」と廊下に出た。
予想的中。玄関に突っ立っているのは、正しく俺だった。
「あ、姉貴・・・?」
此奴、中身は俺か。なら姉貴を装おう。
「どうした?」
目の前の俺は顔を真っ赤に染めながら答える。
「服・・・着てくれないか?」
「何だ。お前、そんな事気にして顔赤くしてんのか。姉弟なんだから気にする事無いぞ」
「俺、男だぜ?全裸で居られると襲っちまうぞ」
「ああ、大丈夫だ。もし襲ってきたら問答無用で打っ殺すからな。所で、夏奈子ちゃんとのデートはどうだったんだ?」
って、何訊いてんだよ俺!?此奴が姉貴と未だ決まった訳じゃねえじゃん!
「最悪だ」
何が最悪なのか。
「何か遭ったのか?」
「ああ。帰りに恋愛公園で伝説を確かめたんだ。そしたら女から男になっちまった」
此奴、姉貴か?
「姉貴・・・なのか?」
「お前、有紀雄か?」
「そうだけど。つーかどうなってんだよこれ?風呂に入ってたらいきなり姉貴の体になっちまったんだ。ま、それなりに楽しめたけどな」
その瞬間、姉貴がキレた。
「お前・・・私の体で弄んでんじゃねえよ!」
姉貴がいきなり襲い掛かってきた。
俺はひらりと身をかわした。
「今の俺、姉貴だから動体視力と身体能力が有紀雄の時より飛躍的に上がってるんだ」
「絶対殴ってやる」
姉貴が再び殴り掛かってきた。
俺はひらりと身をかわす。
「糞!」
姉貴は俺の胸倉に手を伸ばしたが、服が無かった為に失敗に終わった。
「姉貴、これはこの前のお返しな」
言って俺は目の前に居る俺の姿をした姉貴の顔面を殴った。
ガスンッと言う音と共に鼻から血が垂れる。
「これお前の体だぞ」
「関係無え」
もう一発殴った。
ガスン!
「やめてくれ有紀雄」
「じゃあ謝ってくれないか?俺を殴った事」
「あれはお前が殴られる様な事をするからだろ」
「不可抗力だろ」
言って俺は三度目のパンチをお見舞いした。
「えいっ」
姉貴が俺の股間を蹴ってきた。
屹度今頃、蹴った事を後悔しているだろう。その証拠に大量の冷や汗。
「そうだ。この際、姉貴にも男にしか味わえない苦痛ってもんを教えてやるよ」
言って俺は仕返しに姉貴の股間を蹴ってやった。
「うっ!」
激痛に呻き声を上げて股間を押さえる姉貴。とても痛そうだ。
「痛いか?俺がいつも姉貴にやられて味わってた痛みだ」
「お前、元に戻ったら覚えとけよ」
姉貴はそれを捨てゼリフにして去ろうとしたが、あまりにも痛くて動けなかった。
「この痛みは何時静まるんだ?」
「5分から10分くらい。長いと30分くらい痛みが残る」
「マジ・・・?」
「姉貴が悪いんだからな」
「ごめんなさい、もうしません」
と姉貴は心を込めて謝るが、目だけは笑っていた。
「目が笑ってるぞ」
そう言ってやると、姉貴は言葉が詰まった。
「あ、そうだ」
俺は風呂に入る前に電話を受けていた事を思い出した。
「先刻、剛田って人から姉貴宛てに電話が来たぜ。何でも、今夜リベンジするとか何とかって言ってたけど、何の話し?」
「何て返事したんだ?」
「何だか分からないから取り敢えずOK出した」
「バカ。お前、それ喧嘩のリベンジだ」
「マジかよ。どうすりゃ良いんだ?」
「行ってこい。そんで死ね」
「俺が死んだら姉貴、元に戻れないじゃん」
「それは嫌だ。けど受けてしまった以上、行かざるを得ない」
「解ったよ。行ってくる」
「ああ、気を付けろよ。それと服着とけ」
「服?ああ。それ着て良いか?」
そう言って俺は、姉貴が買って来たと思われる洋服の入った紙袋を指差した。
「駄目だこれは」
「だけどそれ、姉貴が着るんだろ?だったら俺が姉貴として着ても同じじゃねえか」
「・・・しょうがねえな。勝手に着ろ」
言って姉貴は階段を上って行く。
「痛みは大丈夫なのか?」
「ああ、もう落ち着いてる」
「そうか」
そう言うと俺は服を取り出した。
「あ、一寸待った!」
姉貴が慌てて降りてきて袋の中からお尻にたれパンダの絵が描かれたパンツを取り出した。
「パンダ?」
俺はそのパンツをよく改めると、腹を押さえて笑い出した。
「お前勘違いしてるから教えとくけど、これは夏奈子に上げる物だ」
「あれ、姉貴が穿くんじゃねえの?」
「私はスパッツ派だ」
「ふうん。じゃあこれを穿けば良いんだな?」
言って俺はスパッツを取り出した。
「つーか、何だこれ?男物じゃん。しかも巷で不良が着てる様なもんだぞ」
「お前もそう思うのか」
も、と言う事は。
「夏奈子ちゃんにも言われたのか?」
姉貴はコクリと頷いた。
「姉貴らしくて良いけどな」
「フォローになってないからな、お前」
「そうだな。それより姉貴、ブラは買ってねえの?」
「要らねえからな」
俺はチラッと胸を見た。
「確かに、姉貴は俎板だもんな」
その一言で姉貴はショックを受けた。
「悪い、気にしてたか?俎板」
またショックを受けた。
「お前、これ以上言うな」
「俎板をか?」
すると姉貴は更に傷付いた。恐らく、次言うと完全に落ち込むだろう。
「凄えな、俎板」
その瞬間、姉貴は完全に落ち込み、リビングに入って隅の方で小さくなった。
「どうせ私は俎板さ。幾ら栄養取っても出ないんだ」
「姉貴の場合、全部攻撃力に行くからな」
もうやめとこう。可哀想だ。
「じゃあ俺、もう行くな」
言って俺は服を着用し、家を出て待ち合わせの場所まで移動した。
「此処で良いんだよな?」
人気の無い河原に来ていた俺は辺りを見回した。
橋の下に黒い人影が10人程見えた。
「マジかよ・・・」
俺は思わず呟いた。
すると、黒い人影が一斉にこちらへやって来て攻撃を開始した。
出し抜けに攻撃を食らった俺は、あっという間にボロボロになり、その場に倒れた。
「何だ此奴。本当に澤田か?」
「呆気なかったな」
「案外、替え玉だったりしてな」
「俺たちに勝てないと見込んで自分は逃げたってか。傑作だな」
そう言いながら、軍勢は去って行った。
直後、偶々散歩をしていた新一が偶々通り掛かり、偶然俺に気付いて俺の下にやって来た。
「君、大丈夫?」
大丈夫じゃない。
そう言いたかったが、喉から先に出せない。
「意識は有るみたいだね。立てる?」
俺は徐に起き上がろうとするが、途中で脱力してしまった。
新一は俺の下に手を入れると、俺の体を起こした。
「一体何が遭ったの?」
集団リンチ。
そう言おうと思ったが、やはり声が出なかった。
「まあ良いや。僕ん家来て。手当してあげる」
黒田、お前は良い奴だ。見直した。俺が女なら惚れてる所だ。って、今女だった。
そんな事を考えていると、俺の心臓が高鳴りだした。
俺はこれが何なのか直ぐに解った。
どうやら、俺は此奴に惚れてしまったらしい。女として。
「乗って」
新一はそう言って、背中を俺に向ける。
俺は遠慮無くその背中にしがみついた。
「ふんっ」
新一はすっくと立ち上がる。
「重・・・」
今の、姉貴なら叩くだろうな。
ポカッ!
俺は無意識に新一の頭を叩いていた。
「いてっ!何か用?」
その問いに俺は笑みを浮かべた。
「???」
新一は頭にハテナを三つ浮かべて歩き出した。
「僕、黒田 新一って言うんだ。君は?」
「あー」
俺は発声が可能だと言う事を確認すると、姉貴の名前を言った。
「澤田 有紀檸」
「へえ、君があの澤田 有紀檸」
「知ってるの?」
「知ってるも何も、有名だからね。巷じゃ知らない人は居ないよ」
「何で有名なの?」
「噂になってるんだよ。夜な夜な町を徘徊して不良達に喧嘩売ってボコボコする伝説の不良女子高生って」
そんな伝説作るなよ、姉貴。
「着いたよ」
言って新一が、表札に黒田と書かれた一軒家の前で止まった。
「ただいまー」
とドアを開けて中に入る新一。
すると奥から三十路を少し越えた感じの女性が出て来た。
「おか・・・って、その娘何!?」
「河原で倒れてるのを見付けたんだ。手当してあげてよ」
「わ、解ったわ」
言って女性が新一から俺を受け取る。
「って、この娘、澤田くんのお姉さんじゃないのよ!」
「え?」
「有紀檸ちゃんよね?」
その問いに俺は頷いた。
「あなた、また喧嘩でもしたの?」
俺は首を横に振り、集団リンチに遭った事を女性に伝えた。
女性は顰めっ面になって俺をリビングまで運び、食卓の椅子に座らせた。
「一寸待っててね」
そう言うと、女性は薬箱を取りに行った。
「あの、有紀雄くんのお姉さん」
「有紀檸で良いよ」
「じゃあ、有紀檸さん」
「あ?」
「有紀檸さんって、付き合ってる人とかって居ますか?」
「お前は初対面の女性にそんな事訊いてどうしたいんだ?」
俺は新一の問いにそう問い返した。
「初対面じゃいけないんですか?」
「否、別にそんな事言ってねえけど」
此奴、姉貴の容姿に惚れたな。
新一は安堵の溜め息を吐いて「良かった」と呟いた。
「あの、初対面の方にこんな事言うのも失礼だとは思うんですけど、僕の彼女になってくれませんか?」
いきなりかよ!?普通友達とかからじゃねえ!?まあ、これは姉貴が望んでる事だし、OKしといてやるか。
「断る理由は無えな」
「そ、それじゃあ!」
俺は「ああ」と頷いた。
「何か盛り上がってるみたいね」
俺が新一との交際を受け入れた所で女性がやって来た。
「一寸沁みるかも知れないけど、我慢して頂戴ね」
そう言って消毒液を俺の傷に吹き付ける。
「んっ!」
案の定、俺の怪我は沁みた。
女性は全ての傷をバンドエイドで塞ぎ、俺の膝を軽く叩いた。
「はい、お終い」
「あざーっす」
「良いのよ、このぐらい」
そう言うと、女性は薬箱を片付けに行った。
「なあ、黒田」
「新一で」
「じゃあ新一」
「はい?」
俺は新一の後ろに手を回して抱き寄せ、自分の唇を彼の唇に重ねた。
「んっ・・・ぷはっ!」
唇を離して新一の顔を見詰める。
何やってるんだ、俺は。
「ファーストキス、頂きました」
ついでに何言ってるんだ、俺は。
新一は頬を赤くして固まった。
「じゃ、帰るな」
そう言って俺は、覚束無い足取りで玄関まで行き、靴を履いて外に出た。
そしてドアをソッと閉めて自宅まで歩き出した。
自宅に着くと、俺は静に上がり込んだ。
すると、気配を感じたのか、姉貴が姿を現した。
「なっ、どうしたんだよそれ!?」
「敗けた。まさか10人で来るとは思わなかった」
「お前、ヘタレな」
「そう言う姉貴は勝てるのかよ?」
「私は何十人掛かって来ようが返り討ちに出来る」
「凄え・・・な・・・」
あれ?何か、意識が・・・。
気が付くと、俺は姉貴の部屋のベッドの上に横になっていた。
隣の部屋からは時折、「うはっ」とか「うほっ」とか妙な声が聞こえてくる。
気になった俺は、興味本位で隣の部屋に移動した。
すると、姉貴が楽しそうにエロ本を見ていた。しかも勃ってしまっている様だ。
「姉貴、勃ったの?」
エロ本に熱中していた姉貴は、俺の声に「うわっ!」と驚いて慌ててエロ本をベッドの下に隠した。
「そりゃまあ、健全な男の子の体だからな」
「あのさ、隠したんだから答えるのもどうかと思うぞ」
「てかお前、寝てた筈だろ。何でこんな所に」
「目が覚めたんだ。そしたら俺の部屋から『うぉっ』とか『うはっ』とか聞こえたから来てみたら姉貴が楽しそうにエロ本見てたんだ。近付いて声掛けても気付かねえぐらい集中してたぞ」
「マジかよ」
「中身が女でも男の本能には逆らえないか」
「みたいだな。つーか、お前の部屋汚いからな」
「五月蠅えな。良いんだよ」
「否、良くない」
そう言って姉貴は部屋の掃除を始めた。
見る見るうちにピカピカになっていく俺の部屋。
「うぉー、マイルームがぁ!」
「悪いが今は私の部屋だ」
「こうなったら姉貴の部屋を汚してやる!」
俺はそう捨てゼリフを吐いて姉貴の部屋に移動し、そのままベッドに突っ伏した。