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第88話「土の迷宮、土流崩し」

 アースイーターが出現する位置に、オルガの矢が置かれている状況になった。

 するとアースイーターは死角を探り出そうとこれまで以上に様々な位置から攻撃を仕掛けて来る。

 しかしそのどれもをオルガが一手先読みし、矢を置く。


 相手からすれば恐ろしい状況だ。

 三度直撃した所で、これが確実なものと確信して次の行動へと移行する。


「次の攻撃、奴が怯んだ隙に俺とヴァリーで突っ込む。シュウさんはオルガの護衛を」

「うん!」

「はい!」


 オルガが矢を射ったその時、カイトシールドを収納し矢を追って駆ける。

 地面が盛り上がりアースイーターの頭が見えた瞬間、そこには矢が突き刺さり、同時に俺とヴァリスタの嵐のロングソードも叩き込まれた。

 たまらず引っ込むアースイーター、俺達はもはや土竜叩きの要領で叩き潰すだけであった。


 アースイーターもまたそれに対抗しうる手段を持たない様で、ひたすら死角からの表出を繰り返していた。

 一見するとその獰猛な腕での移動は強力だが、腕が肥大化し脚が貧弱化している事で、その行動の幅は極めて狭いのだ。

 だからこそ盾受けをされれば一目散に退避するし、地中に逃げようとする。




「終わりだ!」


 振り下ろした嵐のロングソードは、頭を叩き潰した。

 青い血が噴き出ると、アースイーターは土に消えて行った。

 不自然に床へと魔石と何か大きな物が落ち、俺達は勝利した。


「勝てたね」

「オルガのおかげだな」

「オルガは凄い」

「凄い弓術でしたね」

「えへへ」


 本来ならもっと苦戦したであろう相手だが、精霊魔法と鋭敏、使える。

 そしてそれに負けない確かな弓の腕前。

 これは誇っていい技能だろう。


 そうして俺達は土の迷宮を踏破した。

 マッピングは完璧だ、最下層まで辿り着いた。

 そのボスも倒した。


 これを報告すれば冒険者としての名はそれなりのものとなるだろう。




 さて、アースイーターが遺した物は魔石だけではない。


 魔族ゾンヴィーフ以来のドロップ品だ。

 見れば盾の様だが、アースイーターの腕を模した形状で爪が付いており、何やら格闘武器にも見える。

 しかし大きさは上半身を包める程で、カイトシールドより一回り大きいだろう。


 早速詳細を表示してみる。



爪盾パンツァー 中盾

追加効果 盾攻撃



盾攻撃 盾で攻撃を行える。



 これはその通り、盾でありながら恐らくあの爪で殴りつけてダメージを与えられるという事か。

 なかなか面白い盾だ。

 俺はどちらかといえば剣一本で行動する機会が多いから、これはシュウに持たせるべきだろう。


「攻撃も可能な盾の様なので、シュウさんが使ってください」

「良いんですか? でも何か……」


 シュウが地の爪盾パンツァーをまじまじと見つめる。


 確かにアースイーターの腕を模しているから若干気持ち悪くはあるが、性能としてはカイトシールドの上位互換だ。

 シュウは意を決して俺にカイトシールドを返却すると、前方の爪盾パンツァーへと歩み寄る。

 表面がアースイーターを模しているだけで、どうやら裏側は普通の盾と変わらないらしい。


 シュウがそれを拾った所で、異変が起きた。


 周囲が淡い光に包まれ始めたのだ。

 まさか、いや、恐らくこれは、迷宮の自壊が始まったのだろう。

 地震が起きるなどの物理的な影響が無い事から、このまま自動で外へと出されるのかもしれない。




 そんな事を考えつつ、迷宮の淡い発光と同時に起きた現象に俺の視線は釘付けとなる。




 目の前で腰を折って爪盾パンツァーを拾ったシュウの、その男物のズボンが、弾け飛んだのだ。

 俺の目前にはそれが突きだされた形となっている。

 なるほどパンツァー。


「シュウさん、その盾はパンツァーというらしいです」


 シュウにはヴァリスタに買った大人用の黒下着を渡していたのだった。

 白い肌に黒い下着――何という事だ、爪盾パンツァーはズボンだけを弾き飛ばす魔法の道具だったのか。

 何という事だ。


「ぱんつあ、ですか?」

「パンツァーです、パンツァー」

「ぱんつああああ!?」


 爪盾パンツァーを拾ったシュウは折り曲げた腰を正して、俺の言葉を復唱しつつ振り返る。

 その俺の視線を辿って状況を理解したシュウは、真っ赤になりながらシャツの裾を下方へ引っ張り丸見えのものを覆い隠したのだった。

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