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第83話「土の迷宮、雄心勃勃」

ステータスを修正しました。

「隊列を組み直す、警戒は怠るなよ」

「うん!」


 四階層とくれば、更に高レベルのモンスターが出現する事だろう。

 勿論枯渇の影響でこの先には何もない可能性もあるが、油断大敵だ。

 隊列を組みながら仲間たちのステータスを確認していく。



ヴァリスタ 獣人 Lv.10

クラス 餓狼

HP 300/300

MP 0/0

SP 10

筋力 900

体力 150

魔力 0

精神 150

敏捷 900

幸運 900

スキル 良成長

状態 隷属



 ヴァリスタはモンスターハウスと先のエレメントでレベル10に到達している。

 紺藍の髪の下、鉢金を締め直して猫耳をピクピクと震わせた。

 防御を捨てた紙装甲のアタッカー、猫耳獣人にして餓狼という謎クラス。

 縦長の瞳孔も心なしか鋭く見え、長い紺藍の尻尾もピンと一瞬強く張られる。

 準備は万端な様だ。




「ボクはマッピングした方が良いかな?」

「いや、ひとまず戦闘準備をして行こう。これまで散々罠を仕掛けられているんだ、何があるかわからない」

「わかったよ」



オルガ・エルフィード ハーフエルフ Lv.15

クラス 暗殺者

HP 144/144

MP 200/200

SP 10

筋力 224

体力 144

魔力 154

精神 200

敏捷 154

幸運 210

スキル 精霊魔法 弓術 光魔法

状態 隷属



 オルガの持つ完成された地図は俺の謎空間に収納し、代わりに満杯の矢束を渡しておく。

 攻撃だけでなく回復も、そして精霊魔法による偵察も、何でもござれの暗殺者。

 その白緑の髪と瞳はクレバーに戦況を判断して動く我らがパーティの要、ヒーラー兼アタッカーの象徴だ。

 その色合いで若干心が落ち着くのもありがたい。


「そんなに見られちゃボク……でもこんな所じゃダメ……」

「うるせえ、さっさと準備しろ」

「はーい」


 変態なのが玉に瑕だ。




「ライ様、私は前に出ても良いですか?」

「そうですね。更に強いモンスターが出る可能性がありますから、俺と並んでタンクとして行動しましょう」

「任せてください!」



シュウ 人族 Lv.17

クラス 聖騎士

HP 260/260

MP 20/20

SP 7

筋力 260

体力 260

魔力 260

精神 260

敏捷 260

幸運 260

スキル 盾術 剣術 聖剣技



 ブラッドソードとカイトシールドを握り込んで、しかと頷いて返事をした。

 粗削りだが近接戦闘好きの元村人の聖騎士。

 黒髪青目に俺好みの良い肉付きの――いや、良いタンクの女。

 黒髪というだけで得も言われぬ安心感に支配されるのは心が荒んできた証拠だろうか。




 最後に俺自身の能力値を確認し、隊列を組み終えた。



ライ 人族 Lv.25

クラス 龍撃

HP 4500/4500

MP 300/300

SP 24

筋力 2250

体力 300

魔力 300

精神 300

敏捷 1500

幸運 750(-50%)

スキル スキル? 剣術 良成長 武装刻印



 結局土の迷宮でレベルが上がったのはヴァリスタだけで、やはり経験値の減衰は非常に厳しいもののようだ。

 とはいえ戦力としては十分以上のものが完成しつつある。

 グレイディアの助言通り土の迷宮攻略を選択したのは間違いではなかっただろう。


「よし、行くか!」

「うん!」

「はーい」

「はい!」




 階段を下り始めると暗がりとなるが、それでも視界ははっきりとしている。

 下って三十分、ぱっと視界が開ける。

 俺とシュウは盾を前に警戒する。


 そこは大空洞、土をくり抜いたただけの広大な円形の広間だった。

 通路も無ければモンスターも居ない。

 しかし地面に小さく隆起したいくつもの土の山が見える。


 マップには俺達四人の青点だけで、他には何も映っていない。


「何も居ない……みたいだな」

「拍子抜けですね」

「精霊魔法、使ってみようか?」

「頼む」




 オルガが目を瞑り、辺りは静かに――ならなかった。




 地面の激しい揺れが俺達を襲い、その地震と共に俺以外の全員が一斉に臨戦態勢を取る。

 しかしシュウなどは脚が震えており、この地震で震えているのかはたまた自身で震えているのかわからないレベルだが、いくら盾を構えてもその取り乱し様では意味が無い。


「や、やっぱり地獄じゃないですか、やだああああ!」

「シュウさん落ち着いて」

「おじいちゃああああん」

「おじいちゃんじゃないけど大丈夫、大丈夫。地震ですよ」


 ついに恐怖が頂点に達したのか、シュウは俺に縋り付いて来た。

 俺の右腕にその豊満な肉体が押し付けられる。


 胸圧、胸厚、胸熱――。


 俺の右腕はこの世の絶景シュウの谷に埋もれた。

 俺の理性もその肉の狭間で圧力に押し潰されそうだ。

 これでも着痩せするタイプという奴なのだろうか、俺はラッキースケベという幸運値を超えた幸運を頭いっぱいに浮かべつつ、震えるシュウを出来るだけ紳士的に舐めまわしながらなだめた。


 ありがとうおじいちゃん、お孫さんは俺の右腕に居ます。


 右の手の甲もまた、激しく縋り付くものだから触れてはいけない所に触れている気がする。

 そこには男物の大きめのズボンに隠された秘境の迷宮があるに違いない。

 密林だろうか、更地だろうか――いやどちらでも良い、シュウなら良い。




 しかしそんな前かがみになりつつも本能を抑え込んで発した俺の紳士的な言葉に反応したのはシュウではなく背後のオルガだった。

 いつの間にかヴァリスタと共にそれぞれ俺のマントの両端を掴んで離さない。


「じ、じしん!? 何、何なのこれ!?」

「オルガも落ち着け、ただの地盤の震動だ」

「た、ただのって……」


 パーティ一クレバーなオルガがここまで取り乱すとは、地震というのはこの世界では普通ではないらしい。

 可愛い所もあるじゃないかと一瞬思ったが、いや、おかしい。

 そもそも地球基準で考えてはいけないのだ。


 普通ではないという事は何かの罠か、はたまた――。




 一際に震動が増し俺が前方へと向き直ると、隆起した土の――俺達の前方、大広間の中央――その山のひとつが吹き飛んだ。

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