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第74話「土の迷宮、未知との遭遇」

 遂に三階層に降り立ったが、どうにもおかしい。

 階段を降りて直前、まるで一階層のような大きな一本道に、左右への枝分かれした脇道がいくつかある。

 これが迷宮なのか、もしかして一階層と同じく直進で良いのではないかと思ったが、どうやらそうではないらしい。


 巨大な一本道の奥には壁、つまりこの枝分かれした左右の道から四階層への道を探り出さなければならないようだ。

 骨が折れそうだが、ようやく迷宮らしくなってきた。




 これから地図となる紙を取り出して、後衛のオルガに渡す。

 これは夜なべをして丹精込めて作った方眼紙……の様な物だ。

 夜なべといったも二十一時には寝たが。


 マス目を塗り潰すのは羽ペンでは現実的ではないので、紙を幾重にも折り重ね出来た折り目の交差点にドットを打ち込み、それを基準として記入していく。

 折り目にドットが無数に点在している形となったので、その点と点を繋いで線にする事で絵心の無い者でも綺麗に線が引けるという寸法だ。

 とはいえ一度折り目を付けた事で紙が若干くたびれてしまったので、パーティ編成の看板を下敷きに書いてもらう事にした。


 憐れパーティ編成看板、いや、有効活用だ。

 開始地点は下線部中央、階段を記して探索開始だ。




 まずは階段から少し進み、左の脇道へと進入する。

 三人ほどが横並びになれる程度の脇道はゴーレムを思い出して警戒心を煽られるが、特に何も起きる事は無く真っ直ぐと歩いて行く。

 しばらく歩いた所でオルガに呼び止められる。


「ご主人様、ボクら以外にも誰か居るみたいだよ」

「俺達が二階層を突破した事を聞き付けて来た連中かもしれないな」


 未だにそんな冒険心を持った者がいるかはさておいて、しかし未踏の迷宮であれば何かしら手に入ると考える者が居てもおかしくはない。

 現に二階層ではしょっぱい宝箱があった訳だし、俺達が開けた後の宝箱を見て欲に目が眩んだのかもしれない。

 とすれば、やはりゴーレムを倒した後しばらくは復活しないようで、撃破直後ならば素通り出来るという事か。


「しかし精霊魔法を使っているのか?」

「大丈夫だよ。MP残量には気を配っているから、全快になるまでは使ってないよ」

「そうか、また何かあったら報告してくれ」


 オルガはアタッカーであると同時にヒーラーである事も考慮すると、MP残量は死活問題となる。

 そこを理解して使用しているという事だろう。

 とはいえ精霊魔法はトグル式にMPを消費し遠方になるほど消費が増大するらしいから、そこそこの範囲をさっと探る程度で、今回もたまたま引っかかったのだろう。




 オルガに感心しつつ、巨大な通路へと到達した。

 十人は並べるであろう通路はどうやら袋小路のようで、外れ――かと思いきや、奥手には宝箱と何やらが存在していた。


「ライ様、何でしょうあれ」

「土偶かな」


 宙を浮く土器色のドーナツ状のもの、その上下からはズブリと一本の巨大な針のような物が生えており、これまた土器色にしてドーナツを貫通していた。

 ゆらゆらと浮遊するそれは、もしかすればモンスターなのかもしれない。

 遠すぎるのでマップの索敵に入っていないのもありどういった存在なのかわからないが、あって良かったターゲット情報。



エレメント 不定形 Lv.10

クラス アースエレメント

HP 500/500

MP 500/500

筋力 0

体力 0

魔力 400

精神 200

敏捷 50

幸運 50

スキル 土魔法



 魔法特化のモンスターらしい。

 この能力値だと一体では俺達にとって脅威となるものではないが、遠隔攻撃を行うのだから複数体存在すれば危険か。

 弱点属性で一気に叩くのが良いだろう。


 問題は三階層がレベル10である事だ。

 5レベル刻みで上がっているようだから、単純に考えるなら五階層まで行くとレベル20となる。

 そこまで階層があるかも不明だが、ヴァリスタのレベルをしっかり上げてから降るべきだろう。


 エレメントの魔法に対しては、現状俺は余裕で耐えられる。

 ヴァリスタとシュウも一撃は耐えられるが、問題はHPが極端に低いオルガだ。

 オルガは遠隔攻撃と回復を担当しているから本人も気づいていると思うが、戦線維持の要である。

 だから極力オルガへの攻撃は通してはいけないし、基本はオルガ自身が前に出るのも無しだ。


「オルガ、クラス暗殺者は始末という未発見時の初撃威力が上がる特殊効果がある」

「クラスに特殊効果なんてあったんだ」

「ああ、だから開幕の一撃はオルガが先手を打ってくれ」

「わかった、任せてよ」

「ただし弓の利点を活かして攻撃するんだ。残念だがオルガではあいつの魔法攻撃には耐えられない」

「そうなんだ……。能力値が見えるって凄いね」


 こうして戦略を練っているとわかるが、敵の能力が見れるというのはまさにチートと言っていい。

 これが無ければエレメントが魔法を使うという事すらわからなかったのだから。

 今回はゴーレム戦では不発した始末の効果を確認するのが目的だ。




 俺とシュウを盾として壁伝いにエレメントへと接近した。

 身を隠す場所もないが、どうにも反応してこない所を見ると視覚で感知するタイプではないようだ。

 そもそも視覚があるとは思えないが。


 遠巻きに近寄り、遂に攻撃を開始する。

 弓を引き絞り放たれたオルガの矢は吸い込まれるようにエレメントへと突き刺さった。

 ぐにゃりと若干歪んだエレメントは、なるほど種族が不定形なだけあって特殊効果に軟質化とか、そういったものがあるのかもしれない。


 とすれば軟質化の効果は攻撃速度の低下だろうか。

 自身で殴らなければならない近接であれば厄介だろうが、手元から離れて攻撃を浴びせる弓矢にとってそれは問題にはならない。

 そして何よりダメージは減衰されていないようだった。



エレメント 不定形 Lv.10

クラス アースエレメント

HP 52/500

MP 500/500

筋力 0

体力 0

魔力 400

精神 200

敏捷 50

幸運 50

スキル 土魔法



 始末によるダメージ上昇は二倍か、非常に強い。

 しかし倒し切れなかった為エレメントはオルガに狙いをつけていた。

 すぐさまに俺とシュウはカイトシールドを構え、飛んできた土の魔法に備える。


 初めて見たが、土魔法は土の柱を射出するもののようだ。

 物理攻撃にしか見えないが、魔法ダメージとして通って来るのだろう。


 土魔法を受け止めたのは俺、ダメージは85で余裕だ。


「オルガ、追撃だ」


 俺が一歩横へと退くと、すかさずオルガは第二射を放ち、エレメントにトドメを刺した。

 迷宮へと溶けて行ったエレメントは、小さな魔石を遺していった。


「倒せたよ」

「ああ、弓も上手いな」

「強い」

「オルガさんって魔法だけでなく弓も上手かったんですね」

「ありがとう。ボクまともに弓で戦うの初めてなんだよ、何だか照れるなあ」


 俺とヴァリスタとシュウ、それぞれに抱いた思いはおおよそ同じだった。

 オルガの弓術はかなりのもので、正直俺には出来ない芸当だ。

 遠距離の的を射抜けるというのは、それだけで大きな才能だろう。


 そしてゴーレム戦では物理攻撃がまともに通らない為に魔法オンリーだったが、やはり物理攻撃でも遠隔は強い。

 この能力を上手く活かす事が出来れば戦いはずっと楽になるだろう。

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