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第64話「土の迷宮、二層迎撃戦」

 俺の下にはシュウ、その下にオルガ、ヴァリスタと重なるようにして頭を出し、現れた異物を目視していた。


 俺達の覗く通路の中ほどにのっそりと現れた石造りの巨体――ゴーレムは、道を遮るほどの体格を有し、物理方面に偏った膨大な能力値を有していた。

 しかしゴーレムはレベル5であれなのだ、もし弱体化した迷宮でなかったら太刀打ち出来なかっただろう。

 そして何よりレベルが1刻みの上昇ではなく、二階層にして一気に5まで上昇しているのが衝撃的だ。


 自分の能力値を再確認しつつ、この状況からの行動を想定していく。



ライ 人族 Lv.25

クラス 龍撃

HP 4500/4500

MP 300/300

SP 24

筋力 2250

体力 300

魔力 300

精神 300

敏捷 1500

幸運 750(-50%)

スキル スキル? 剣術 良成長 武装刻印



 俺の攻撃は通る。

 一撃で1750という大打撃を見舞えるから、ゴーレム二体でもその気になれば俺一人でゴリ押せるだろう。

 しかしヴァリスタは成長途中、オルガも筋力はそこまで育っておらず、シュウもまた同様だ。

 彼女らの物理攻撃ではまともにダメージを与えられない。


「オルガ、光魔法は攻撃も使えたりするか?」

「使えるみたいだよ、攻撃する?」


 やはり攻撃にも使えるのか、であればどうするか。

 ゴーレムは精神が0だから魔法ダメージはそのまま通るはずだ。

 オルガのMPは200で、回復魔法は10MP程度を消費していた記憶がある。


「MP消費量はどうなんだ」

「ううん……ごめん、それは使ってみないとわからないよ。何よりボクは元々精霊魔法しか使えなかったし」


 精霊魔法は発動させている間はガリガリとMPをスリップ消費しつつ、精霊との繋がりを作ってそのネットワークを利用する、いわゆるトグル式の魔法だ。

 これまでオルガが利用してきた魔法はそういった単純なオンオフによるスイッチ方式の発動方法であるし、攻撃魔法も使った事が無い。

 だからその消費量は予測出来ないのだろう。


 仮に10MP消費だとして、二十発は撃てる。

 消費量を大きめに見積もって十発としておこうか。

 オルガの魔力は154だから……無理だな、魔法のみで倒すには三十発近く撃たないといけない。


 であればクラス暗殺者の特殊効果始末で初撃のみ魔法で攻撃し、後は回復に専念してもらおう。

 ヴァリスタは一応アタッカーとして動いてもらうとして、突発的だがこのゴーレム戦はシュウと俺の連携訓練に当てよう。

 油断出来ない火力を持ち膨大なHPの持ち主とくれば、メインタンクとサブタンクの役割とその動きを理解してもらうには持って来いの相手なのだ。




 しかし二体同時というのはまずい。

 シュウはMP以外の全能力値260で、しかしゴーレムの攻撃で250ダメージ、盾受けをしても210ダメージほどを負ってしまうだろうから、一撃で瀕死付近に持って行かれてしまう。

 ここでサブタンクの俺と盾役を入れ替わり、俺が攻撃を引き付けている間にオルガが回復、戦線復帰まで持ちこたえる……という流れを演じて貰わなければならない。


 俺がゴリ押しで一体を倒して、それから二体目で練習というのがベストか。


 俺がゴーレムの一発につき負うダメージは200と軽いものだが、しかし俺がメインタンクになるのは無しだ。

 今後シュウのレベルが上がって来ると防御面に関しては俺を軽く越えて行くので、馬鹿高いHPで凌ぐタイプの俺にはメインタンクは荷が重い。

 そのHP量故に回復でMP消費がかさむ事と、何より回復に無駄な時間が掛かるのが問題だ。


 龍撃というクラスはあくまでアタッカーに回るべき能力値であり、その長所を潰すのはおいしくない。

 であればシュウには早い段階でメインタンクの動きと、サブタンクを兼任する俺との連携を覚えて貰う必要がある。

 どうやらこの二階層には二体のゴーレム以外にモンスターが居ないようだし、今回の対峙は非常に幸運なのだ。




 行動の流れは決まった。

 とりあえず一体をゴリ押して――そう考えた時、異常を感じた。


 こちらへ――左の通路へと向かって来た一体のせいで肉眼ではその背後がほぼ見えないのだが、マップの赤点はまたも対照的に動いているのだ。

 つまり、もう一体はこちらに向かって来ているゴーレムの背後に続いているのではなく、逆の通路を闊歩している。


 これは――。


「挟み撃ち狙いか、尚更こいつは潰した方が良いな。オルガ、光魔法で攻撃してくれ。その後は回復に専念」

「わかったよ」


 バタフライエッジアグリアスをオルガに手渡すとそれを右手に、左手はゴーレムへと向けて、オルガの細身が淡く輝いた。


「ライトアロー」


 言葉と共に左手から光の矢が撃ち出された。


 石造りの胴体に命中した光の矢に、しかしゴーレムは怯まない。

 そのHPを見れば154しか削られておらず、どうやらというか、やはりというか、俺達の存在を感知して動き出したという事らしい。

 つまりこの階層に入った時点で、もしくはゴーレム達の初期位置である中央の入口に近付いた時点で起動するという仕組みのようだ。


 単純なモンスターの吹き溜まりかと思っていたのだが、迷宮とは思っていた以上に厄介なようだ。


「皆は此処で待っていてくれ」

「ライ、私も行く!」

「私も戦います!」

「ヴァリーとシュウさんはもう一体のゴーレム相手に活躍してもらうから力を温存しておいてほしい。オルガ、俺のHPが減り次第回復を頼むぞ」

「任せてよ!」


 しょんぼりとするヴァリスタとシュウを置き去りに曲がり角から躍り出て、未だ此処まで辿り着けない鈍足のゴーレムに一気に接近した。

 ゴーレムがその馬鹿でかい腕を振り上げる前に、俺はその懐に潜り込みロングソードを振り下ろす。

 銀色の刃が石造りの巨体に接触し、激しく火花が散った。




「うっ……!?」




 弾かれた――。


 俺の攻撃が、筋力値2250の重さの、敏捷値1500の速さでもって振り下ろした一撃が、弾かれた。

 いや、石造りであるから表面的には弾かれても、大ダメージを与えているはず。

 この世界はそういった能力値至上主義の世界であるはずだ。


 咄嗟にバックステップしつつゴーレムのステータスを見て、俺は目を疑った。



ゴーレム 人形 Lv.5

クラス ロックゴーレム

HP 4406/5000

MP 0/0

筋力 500

体力 500

魔力 0

精神 0

敏捷 50

幸運 0

スキル 格闘術 重撃



 おかしい、HPの減りが予想より遥かに少ない。

 絶対のはずの数値が、ダメージが、十全に通っていない。

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