第60話「聖騎士」
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シュウの持つクラス聖騎士。
シュウは習得条件は満たしていないはずで、聖騎士の前提条件である騎士すらクラスに出現していない。
俺にすら騎士は出ているから、シュウに騎士が無いのは高位のナナティンでなく同位の俺に仕えていたからだろう。
それと習得条件によくある出生というのは貴族なら最初から騎士にクラスチェンジ出来るというものなのだろうが、聖騎士にはそれもないから――ならば遺伝のようなものだろうか。
「シュウさん、もしかしてご親族に滅茶苦茶強い騎士とか居ましたか?」
「え、居ませんけど。私ライ様のメイドになるまでずっと小さな村で暮らしていたんですよ」
やはり生粋の村人。
しかしならばどうしてだ、思えば黒髪自体も特殊である訳だし。
悩む俺の前で、シュウはあっと声を上げて懐かしむように語った。
「おじいちゃんはよく昔は勇者をやっていたとか言っていましたけどね」
お道化て語ったそれは、しかし俺の頭に電流を走らせた。
もしかすればシュウはこの世界で子供を作った勇者の――子孫。
シュウのおしいちゃんは勇者、クラスは聖騎士。
村人として細々と暮らしており、遺伝でそれが引き継がれていたものの気付かれる事は無かった、とか。
思えば良成長自体おかしいのではないか。
50SPも消費する超強力なバランスブレイクスキルだ。
これを保有している者はごく限られるといっていい。
というかシュウ以外に見た事が無い。
そんなスキルを持てるのは多分天才とか呼ばれる者。
勇者達は、この世界に召喚された時点で多くのスキルを持っていた。
レイゼイに至ってはドラゴンの逆鱗の効果の一部であった魔力転化を保有していたからして、そのひとつに良成長があってもおかしくはない。
「おじいさんは黒い髪をしていましたか?」
「黒……? ううん、記憶にある限り白髪でしたけど、目は黒かったですね。私は黒髪ですし、もしかしたら若い頃は黒髪だったのかもしれません。結構前に死んじゃいましたからわかりませんけどね」
「ああ、お亡くなりに……すみません」
「いえいえ、でも懐かしいなあ」
シュウの祖父は結構な歳だったようだ。
この世界で、何を成そうとしたのか。
家族を作りただただ余生を平穏に過ごせたのであれば胸も痛まない。
いや、はたまた俺達の様に塔を登ろうとして、しかし無念の中に挫折したのかもしれない。
「シュウさん、多分貴女のおじいさんは勇者です」
「からかわないでくださいよ」
「この世界で黒髪黒目を見た事がありません。勿論シュウさんのような黒髪青目でさえも。一番近いのでこのヴァリスタの紺藍の髪でしょうか」
「で、でも私、ライ様のように戦ったり出来ませんよ」
「シュウさんのクラスを聖騎士にチェンジしました。これは俺が地下で一週間以上生活して未だ見た事の無いクラスで、恐らくおじいさんから受け継いだ能力の一部でしょう」
「そ、そうなんですか?」
呆然とするシュウ。
勇者を飼い殺して子孫繁栄させれば良いと思うのだが、やはりそのスキル遺伝の少なさがネックなのだろうか。
地上の連中は能力値が見れないからスキルで強さを推し量る、だからこその勇者召喚。
今までシュウが見逃されていたのもその祖父の狙い通りなのか、はたまた幸運だったのだろうか。
シュウのステータスを確認して、俺はどうするべきか迷った。
シュウ 人族 Lv.17
クラス 聖騎士
HP 260/260
MP 20/20
SP 7
筋力 260
体力 260
魔力 260
精神 260
敏捷 260
幸運 260
スキル
万能――。
まさにその言葉が合う能力値。
村人と良成長の状態で恐らくMP以外の能力値が15ずつ上がって来ており、聖騎士では全能力が20ずつ上昇していく計算になるか。
HPの上昇率こそマイルドだが、俺達の中では一番防御能力が高い。
メインタンクに、したい。
「シュウさん、嫌でなければなのですが――」
「やります! 何でもやりますから!」
「いえ、嫌だったら断って頂いても――」
「頑張りますから!」
何やら食い気味に押してきて、どうやらシュウは戦闘メンバーとして仲間になってくれたようだ。




