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第54話「戦支度」

 次は武器屋へと向かう。

 オルガには未だ武器を買い与えていないからだ。


 道すがらマップを見ると範囲ギリギリ辺りを追従して来るふたつの白点を見つけた。

 横目で微かに見るとやはりフローラだった。

 まだ尾行していたのか、暇なのだろうか。


 いやいや、何か企んでいる可能性が高い。

 とはいえ一国の姫にこちらから手出しする訳にもいかないから、うかつな行動は取れない。

 あちらは特に仕掛けて来る気配も無いから、俺が下手な真似をしないかという警戒と威圧目的というのであれば問題は無いが。


 武器屋へと到着したのでフローラの事は一旦頭の片隅に、装備を見繕う。


「オルガは弓は使えるとして、剣とかはどうなんだ」

「どうだろう、使った事ないからなあ」

「一応護身用として買っておくか、何が起こるかわからないし」


 オルガ用にロングソードを購入するとして、後は俺がタンクになる上で必要な物を探さなければ。

 壁に掛かっている盾を見て行く。

 大きさは小型の物から大型の物まであるが、中型が妥当だろうか。


 恐らくだが装備によって敏捷性に差が出てしまうので、あまり重装備はしない方が良い。

 それは俺がギ・グウと初めて会った際に咄嗟に二刀流にして力が十全に発揮されなかったように、何かしらの要素があるのだと思う。

 つまり大型の盾を持つと頭の先から足の先までカバー出来て致命傷を受けにくいが、敏捷性が削がれて回り込まれる可能性がある。


 一応店主に聞いておこう。


「店主、お勧めの盾はありますか」

「盾は使い方次第ですからね、戦闘経験やら聞かせてもらわないと何とも」

「実は盾を使った経験は無いのですが、そんな者でも扱える盾はありますか」

「未経験なら中盾ですかね。小盾は防御範囲が狭くて手練れにしか使えませんし、大盾になると視界が潰されて初心者にはお勧め出来ないですね」


 なるほど、やはり扱い易さで中盾なのか。


 それに盾は防ぐとダメージは減るが、それは盾が肩代わりするのではなくあくまでダメージに補正が働くというものだろう。

 つまり、身の丈に合わない重装備をしても無駄に敏捷性が削がれてしまうだけなのだ。

 地上での勇者パーティと共に戦った際のダメージ量などから推察するに、盾受け時にはダメージに0.85倍の補正が掛かっているのではないだろうか。


 これは中々大きな数値だから、少なくともメインタンクの居ない今の状況では俺が持っておいた方が良いだろう。

 そして盾の大きさによってダメージ軽減率が増減するといった事はないと思われる。

 そんな事があればいくらこの世界の者がいつでも数値が見える状態ではないからといって――いや、だからこそダメージ量には敏感なはずで、例えば「壁役なら大盾択一!」といった感じの優劣と常識が生まれているはずだからだ。


 さて、そんな盾だがやはり俺が選ぶべきは機動力が削がれず、不慣れでも扱える物。

 すなわち中盾だ。



カイトシールド 中盾

追加効果



 中盾のカイトシールドは逆三角形の形状をした銀色の盾だ。

 幅は半身で構えれば身体を包める程度で、高さは足元に置いても腰まである、なかなかの大きさだ。

 その裏面には腕に装着する革の帯がある。


 大き過ぎず小さ過ぎず、これくらいが使いやすいだろう。

 追加効果付きも売っていたが、空きスロット品は無かった、残念。

 カイトシールドは銀貨二十枚で、なかなかの値段だ。


 さて、肝心の弓だ。

 ショートボウとロングボウがあるのだが、暗殺者の特殊効果始末は未発見時にしか効果を発揮しないから、有効活用するには遠隔攻撃の飛距離が重要になる。

 オルガにロングボウを引かせて見ると、意外と筋力は足りていたようで少し力みつつも引けていた。

 土の迷宮は少なくとも序盤は雑魚しか出ないはずだから、進行に合わせてレベルが上がっていけば問題無いだろう。




 ロングソードとカイトシールドで銀貨五十枚。

 ロングボウと矢束で銀貨十枚。

 残りの金は銀貨十枚ほど、これ以上の出費はまずいか。

 とはいえ万全の状態で行くべきだ、一応道具屋へと寄っておく。


 木造の一見普通の家屋にも見紛う道具屋は窓は開けっ放しであり、しかしその内部は青臭い臭いが漂っていた。

 やはり草を調合したりしているのだろうか、興味深いが今回は緊急用の回復薬の購入だ。

 カウンターの向こうに座ってゴリゴリと何かをすり潰している魔女の様な婆さんに会釈をして、店内を見渡す。



治癒薬 薬

HPを徐々に小回復する



 試験管のようなビンに入った黄色の液体、治癒薬というようだ。

 銅貨二十枚で購入出来る極めて安価な薬であり、その効果は徐々にHP回復。

 スキルや追加効果に存在するHP自動回復のアイテム版といえよう。


 これは縁の下の力持ちであり、慢性的にダメージを受ける事になるタンクが使用すれば効果は絶大だが、緊急用には向かない。

 徐々に回復、これでは突発的な事態には対処出来ないのだ。

 であるから、今回探すのはもっとゲームっぽいやつ。

 要するに一気にHPを回復してくれる薬だ。



回復薬 薬

HPを小回復する



 これだ、この緑色の液体こそ塔へ入る三人組が飲んでいた回復薬だ。

 少量だが一気にHPを回復出来るというのは強い。

 しかしこれ、量は少ないとは水分なのだ、がぶ飲みはやはり辛いだろう。


 がぶ飲みして戦闘中に尿意を催してしまうと事だし、生理現象を我慢するのは辛く、何より体に悪い。

 価格も銅貨五十枚と決して安くは無いから、やはり訓練も兼ねて基本はアタッカー兼ヒーラーのオルガに対処してもらうべきだろう。


「回復薬を三つ頂けますか」

「はいよ」


 銀貨一枚と銅貨五十枚を出して、魔女の様な婆さんから回復薬を三つ受け取る。

 ヴァリスタとオルガにひとつずつ渡そうとして、そういえば二人には道具を仕舞う物が無い事に気付いた。

 俺は地上で付けていたポーチがあるし、何より謎空間でいつでも出し入れ出来るから気にしていなかった。


「すみません、これが入るようなポーチなどは置いていませんか」

「あるよ、ひとつ銀貨一枚」


 高いが必要な物だ。

 銀貨を二枚払い、ふたつのポーチを受け取った。


 小さな物で、調度試験官が六つ入る仕切りと大きなスペースが開いていた。

 少量だが素材を入れたり出来るのだろう。

 俺は謎空間があるから、二人には緊急用の回復薬だけで十分であるし、このポーチでも問題は無いか。


 二人にポーチと回復薬をひとつずつ渡すと、俺は会釈して店を出た。

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