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第45話「フルメタル・ジャバウォック 上」

 ハーフエルフ奴隷ことオルガを隷属化させた俺は、無事二人目の奴隷を手に入れた。

 オルガの契約期間は一年だが、この世界に長居するつもりはないから問題ない。


 隷属方法はヴァリスタと同様、魔力刻印だ。

 今回は金銭的な問題で隷属の首輪を諦めたのではなく、進んで魔力刻印による隷属化にした。

 首輪が無いと隷属が解除されるというのは、なかなかどうして不安が募る。


 バタフライエッジアグリアスの貫通のように、首輪を破壊される可能性も考慮してだ。




 しかし今回は仲間にしたからといって一筋縄ではいかない。

 何故なら俺は主従の関係を崩壊させてしまったヴァリスタの二の舞にならぬよう、このオルガをみっちりこってり扱いて完璧な奴隷へと育て上げるからだ。

 阿吽の呼吸ならぬ奴隷の呼吸、俺が命令すれば言う事を聞かねばならぬというレベルにまで落とし込み、俺の右腕――はヴァリスタだから、俺の左腕として、そして今後の奴隷達の雛型とすべく教育するのだ。


 しかしまことに残念ながら、俺はそんな奴隷の作り方を知らない。

 なので奴隷達をひとまず待機させ、一旦レオパルドと共に部屋を出て問う。


「ところで、私はあの犯罪奴隷のように人並みの教育を施す事は出来るのだが、どうにも奴隷らしい奴隷の調教というものがわからない。そこのところ、ご教授頂きたいのだが」

「は、はあ。でしたらまずはあのような行為は慎むべきです」

「あのようなとは?」

「例えば優しくするだとか、人前で密着するだとか、そういった行為は奴隷の自尊心を蘇らせ、人としての主張を助長してしまいますので」


 難しい話だ。

 要するに、人として扱うなという事だろう。


「であればまずは――」

「奴隷の自尊心を砕くところからですね。特にあのハーフエルフは伸び伸びと暮らしていたようなので、徹底的に破壊する必要があります」

「ふむ、難しいな」

「こちらをどうぞ」


 レオパルドは平たい板状の先端を持つ棒を出した。

 いわゆる馬上鞭という奴だ。


「これ馬に使う鞭じゃないのか」

「おお、よくご存じで。今でこそ使われておりませんが、かつて世界が広く輝かしく繁栄されていた黄金の時代に使われていた鞭でございます」


 地上では普通に居たが、地下で馬は見ないもんなあ。

 こういった物は過去の遺物という事か、何だか物悲しい。


「それで、この鞭がどうしたのだ」

「叩くのですよ」

「え?」

「叩くのです、主従を知らしめるために」


 いやいや、無いだろ。

 これは無い。

 鞭の威力とは見かけに反してかなり高いはずだ、絶対傷だらけのズル剥けになる。

 可哀想過ぎる。


「そんな事をすれば最悪奴隷が死んでしまうのではないか」

「ふふふ、ところがどっこい。何とこちら、隷属中の者には痛みはあれど肉体的な負傷は与えないのです」

「何という……」



サディスティック 鞭

追加効果 魔力刻印



 鞭の詳細を見てみると、どうやら魔力刻印が付与されているようだ。

 これによって奴隷に肉体的なダメージを与えずに済むという事か、どうなっているんだ。

 いや、魔法に突っ込んでも仕方がない。


 地下の魔法が変な方向に発展しているのはわかった。

 ただ、確かにこれなら死の危険は少ない。

 苦痛で死んでしまうかもしれないから、ほどほどにしなければならないが。


「そうか、ではこれで調教――」

「金貨一枚でございます」

「――いいだろう」


 高い。

 隷属の首輪といい、上手い抱き合わせ商法だ。

 だが完璧な奴隷軍団の足がかりの為、この出費はやむなしだ。


「ではこれで叩いて……叩いてどうするんだ?」

「ライ様は飴と鞭と申しておりましたが、もしかすればもしかしますな」


 いや、どうしろっていうんだ。

 確かに褒めて指導して、飴と鞭というのはそういったいわゆるご褒美で釣るちょっと麻薬的な理論な訳だが、レオパルドの言う飴と鞭とはこれ物理的な話だろう。

 飴を食わせて引っ叩けとでも、完全に変質者だ。


「徹底的に自尊心を破壊した後に、奴隷の暮らしへと戻すのです。地獄から、少しまともな環境へ。奴隷は少なからず主人を見る目を変えるしょう」

「ううむ」


 何だかそれこそ奴隷がブチ切れて刺されそうなのだが。

 別に残飯を食わせて生活させるとか、そんな外道な事は考えていないから――いや、この考えが甘いのか。

 奴隷の調教、難しい。


「逆襲されたりしないだろうか」

「魔力刻印がありますから……といってもやはり以前説明した通り、死ぬほどの苦痛を越えて主人を殺す事も可能ですからな」


 この口ぶりは、そういった事件があったのだろうな。

 どうしようか、例えば鞭でビシバシ叩いたり何だりで屈服させ、その後熱い抱擁、さも奴隷の為の教育であったのだと嘯く主人、奴隷感動。

 軍隊の教育法とかいいかもしれないな、ボロクソに貶して個を破壊する奴。


 嫌だな、凄い嫌な奴だなこれ。


 だが、これで行こう。

 俺には主従関係が必要だ。

 裏切らず、共に戦える者が。


 ヴァリスタのように素直で良い子ばかりとは限らないから、ここはきっちりしておかなければならない。




「ところで、鎖はあるか」

「ございますよ。今なら金貨一枚でこの特製――」

「いや、普通ので良い」

「そうですか……」

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