第43話「猫を膝に、奴隷を前に」
第42話からの展開を修正しました。
奴隷商へとやって来た俺だが、今回奴隷を買うとして、費用は金貨十枚と決めている。
これ以上は現在資金不足であり、これ以下ではげっそり奴隷だったり、何かしら問題を抱えていそうだからだ。
そしてヴァリスタという銀貨五十枚の犯罪奴隷を買ってしまった事によるマイナスイメージの払拭も兼ねて、だ。
唯一安心出来る戦力が得られる奴隷商という場で、警戒されて能力の高い上物を回して貰えなくなってはたまったものではない。
だから一度それなりに金を落とす必要がある。
面倒だが信用の問題だ。
屋敷のような奴隷商では衛兵から話が通り、すぐさまに案内される。
通された部屋は前回同様、奴隷商人レオパルドの居る部屋だ。
かわいこちゃんに出された鼻を抜けるレモンティーらしき茶の入ったティーカップを右手でもって口元に運び、気分を落ち着ける、旨い。
左手は膝の上の紺藍の髪を撫で回す。
ヴァリスタは俺の膝の上に鎮座している。
レオパルドはそれを見て目を丸くしている。
やっちまった。
主人として、奴隷に良い様に膝を占領されるとは、これはいかがなものか。
どうしよう、ナチュラルにこの体勢になってしまったせいで良い訳の言葉が見当たらない。
ヴァリスタに関しては奴隷の扱いをしていなかったせいで――それに奴隷商でも捨てる気満々で地下牢送りにされていたので、ヴァリスタには奴隷としての在り方がわからないのだろう。
俺もわからないが。
無表情にして無言――真顔でヴァリスタを撫で続ける俺を見て、苦心の表情をひた隠したのであろうレオパルドが言葉を詰まらせつつも満を持して開口する。
「た、大層懐かれておりますな」
「犯罪奴隷であれ人の子です。飴と鞭と言いますし、教育が大切なのです」
そういえば飴しか与えていない気がする。
「それは素晴らしい。先の征伐戦でも多大な功績を残したとか」
「この子のおかげです」
「そうなのですか、噂では王様とも謁見されたとか……」
バレているのか、何処から情報が……いや、俺が騎士団に運ばれた姿を直接見た者もいるだろうし、バレるに決まっているか。
高い奴隷売られそう、いや絶対売られる。
ボレアス王と謁見はしたが、金銭のやり取りはしていないので金貨十枚以上は厳しい。
「これも全て貴方に奴隷を斡旋してもらったおかげだ」
「は、はは。私は何もしておりません」
「いえ、貴方がこの子を奴隷として引き取っていなければ、私が出会う事もなかったでしょう」
やけくそである。
こういった場合は褒めちぎっておくのだ。
「それで、ライ様。今回はどのような奴隷をお求めで」
「スキルが優秀な者を」
「スキルですか……。わかりました、数名お連れしましょう」
レオパルドが部屋を出て行った所で、かわいこちゃんからお茶のおかわりを貰った。
もうひとつティーカップを出してもらいヴァリスタに飲ませてみる。
「ほら、美味しいぞ」
「んー……んん!?」
耳と尻尾をもっさりと逆立て俺に頭を擦りつけて悶絶し始めた。
その様に俺とかわいこちゃんは一時の和みを得たが、どうやらヴァリスタは柑橘類の風味がとても苦手らしい。
やはりヴァリスタには肉なのか。
しばらくしてレオパルドが戻って来ると、かわいこちゃんは退出して代わりに三名の奴隷が入室して来る。
三人共が俺の膝に鎮座し撫でまわされるヴァリスタに目を剥き、何事かを口にしようとして止める。
メンバーは相変わらずの毛の無いゴリラと、ボンキュッボンのお姉ちゃんに、白緑の髪の……多分男。
以前と同様レオパルドの話は金額以外スルーして、ステータスを盗み見る。
毛の無いゴリラっぽい男 人族 Lv.28
スキル 剣術 格闘術
金貨四十枚
以前にも見た気がする。
剣術などはその気になれば後天的に習得出来るはずなので、費用対効果としてはおいしくない。
というか金が無い。
ボンキュッボンのお姉ちゃん 人族 Lv.21
スキル 火魔法 光魔法
金貨三十枚
現在魔法使いは居ないから、優秀ではある。
ただ色気を出し過ぎではないだろうか、戦えるのかこれ。
そして金が無い。
三人目は……ほっそりスリムで性別がわかりづらいが、元の世界でも整い過ぎて女みたいな男もいたし、恐らくそのタイプだろう。
整った顔立ちは間違いなくイケメンと呼ばれる部類。
白みがかったごく薄い色合いの髪は白緑と言える色合いで、サイドこそ伸びているがバックは短めであり、不潔ではない長さとなっている。
よく見れば長い耳があって――
オルガ・エルフィード ハーフエルフ Lv.15
クラス 狩人
HP 150/150
MP 210/210
SP 15
筋力 210
体力 150
魔力 150
精神 210
敏捷 150
幸運 210
スキル 精霊魔法 弓術
状態 隷属
――種族ハーフエルフ……だと。




