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第42話「情報収集」

 カンテラを謎空間から出して土の迷宮の検問を通る。

 そういえば謎空間に出し入れしても火が灯ったままだ。

 中がどうなっているかは不明だが、いちいち火を点ける手間が省けるのは便利だ。


「何だ、もう出るのか」

「どんなものか見に来ただけなので」

「そうか、気を付けて帰れよ」


 やたらフレンドリーな検問。

 征伐戦直後だけあって冒険者も来ず、暇なのだろうな。

 マップの端で白点が動いたのが見えて視線を向けると、雑木林に頭から突っ込んだ白い影が見えた。


 頭隠して何とやら、黒い雑木林に盛り上がる白い双子山を凝視しステータスを盗み見るとやはり尻丸出しのフローラだった。

 白を基調とした清楚そうな装いに黒パンツとは、なかなかえぐい組み合わせ。

 とんだお転婆姫だ。


「何だ、誰か居るのか?」

「いえ、気のせいでした。では私はこれで」


 俺が明後日の方向を向いている事に訝しげな表情を浮かべられてしまった。

 此処で尻の観察を始めて変に思われてもアレなので、検問を去る事にする。

 しかし先程通ったばかりの道を引き返していくこの感覚はなんともいえない。


 今更ながら、陽の射さぬ地下で林やら木やらが成長するのは何とも言えない違和感だ。

 そういった植物なのか、はたまた異世界らしく魔力でも吸って成長しているのか、気にしても仕方のない事か。




 小柄なヴァリスタに歩調を合わせて数分歩いた所で、再び差し掛かった俺の落下地点付近に、股間が縮こまりなからもつい立ち止まって見上げていた。


 あの時助かったのは謎の向かい風のおかげであり、よくわからないが俺は生きている。

 考えてみれば騎士団所属というギ・グウが此処らを見回っていたのだから、もしかすれば此処で落下死する者というのは多少なりとも存在するのかもしれない。

 その処理を考えると、そして俺もそうなっていたかと思うと――肝が冷える。


 とりあえず、これからは戦力の拡充だ。

 土の迷宮については塔の街へ帰還したらグレイディアにでも話を聞こう。

 あの人は少し俺を買い被っているから、もしかすれば迷宮攻略の知らせを待っているかもしれないが。


 その後は奴隷を見て、良い奴隷が見つかれば土の迷宮で育成と金稼ぎだ。

 稼ぎが悪ければパーティ編成の仕事もあるから、もしもの事態のセーフティも確保済みだ。




 何事も無く帰路についた俺達は、冒険者ギルドへと舞い戻る。

 奥で椅子にちょこんと座っていたロリババアに会釈すると、カウンターから出てこちらへと歩み寄って来たので、他の冒険者の邪魔にならないよう端へと移動する。


「どうした、もう攻略したのか」

「今回は下調べです、現地調査って奴ですね。攻略はこれからですよ」

「ふん、つまらん。それで、わざわざそんな事を言いに来たのではあるまい」

「ええ、実は土の迷宮のマッピングされた地図なんか頂けないかなと思いまして」


 突然にたあっと笑みを浮かべて俺を見上げたグレイディアに、嫌な予感しか覚えなかった。


「マッピングとは、またそれらしい知識が出て来たな。残念ながらそういった地図は今は無いな」

「今は……ですか?」

「数十年前であればそういった事も普通に行われていたがな、今は攻略自体が盛んではない。現在の土の迷宮は弱体化が進んでおり、このままではじきに自壊するだろうな」

「自壊って……どういう事です?」

「私も詳しい訳ではないが、人が来なくなった迷宮は弱体化するらしい。人を呼び込んでいるのかもしれんな。それでも人が訪れなければ弱体化の末に消滅するのだという。つまり今が狙い目だな」


 そう言ってグレイディアはギルド内の飲んだくれを眺めた。

 しかし自壊という現象を持っているとは、謎すぎる。

 つまり迷宮自体が衰退し続けた結果が、ゴブリンレベル1迷宮という訳か。


 といってもモンスターのステータスが見れるのは俺だけだから、何回攻撃すれば倒せるだとか、そういった感覚的なもので計っているのだろう。


「土の迷宮への道は結構踏み均されていたように感じたのですが」

「よく見ているなあ、塔が混雑すれば当然そちらにも流れる。一番近い迷宮だからな。といっても一階層にたむろして魔石を集めて帰還という流れだそうだが」

「ああ……。それではもしかしてマッピングされた地図を売ったりとかも……」

「今の冒険者共に言い値で売るのは厳しいだろう。といってもギルドでは資料として買い取るし、要らぬ争いを生まぬためにもそれが懸命だな」


 マッピングした地図で荒稼ぎは厳しいか。

 個人で売買して逆恨みされてもうまくないし、もしやるとしてもギルド相手の小銭稼ぎか。

 少し思い悩んでいると、グレイディアがわざとらしく手を叩き、首を傾げて見せた。


「ああ! 塔は駄目だぞ、塔は。五階層までは冒険していない魔石拾いの冒険者だらけだから、お前にはお勧めしかねるなあ」

「そ、そうですか」


 どれだけ迷宮攻略させたいのか。

 魔石が売れるというのもまた、不思議な話ではあるが。


「それだけ売られて魔石は値下がったりしないんですかね」

「それはないな、生活必需品だからな。街灯にしても、水にしても、我々の生活に密接に関わっている」

「なるほど、それはそうですね」

「お前知らなかっただろう、なあ」

「ハッハッハまさかそんな、善良な冒険者たる私が」


 魔石を動力に街を照らしたり、水を生み出したりしている訳か。

 しかし些細な事でも上から来た人、もしくは異世界人に繋がってしまう。

 知識が無いというのは恐ろしい。


 何にしても今のところ塔に魔石拾いへ行くつもりはない。

 塔は五階層毎にボスが居て、しかもそのボスが恐ろしい強さを持っているという事はドラゴン戦で痛感している。

 であるから、戦力が整うまで塔を登る事は避けるべきだ。


 ボスといえば――。


「あれ、そういえば迷宮にもボスは居るのですか?」

「ボス? ……ああ、守護者か。居るぞ」

「ふむ、やはり五階層毎でしょうか?」

「いや、迷宮はそれぞれに違いがある。これといった決まりは無いな」

「なるほど、ありがとうございました」

「次は攻略の知らせを頼むぞ」

「善処します」


 さて、色々聞けたし、土の迷宮はボスが居るというのもわかった。

 であれば一階層レベル1という自壊寸前の迷宮とはいえ、それなりに注意して進むべきだろう。

 やはり二人パーティというのは辛いから、せめて後衛が一人は欲しい所だ。




 いざ、奴隷商。

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