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第23話「中毒質なパーティ編成」

「安くて早くて安心! 銀貨五枚で請け負いますよ!」


 パーティ編成職人の朝は早い。

 今日も朝五時から支度をして、塔の入り口でパーティ編成の仕事だ。


 ヴァリスタはまだ少し寝足りない様子だったが、心を鬼にして連れ出した。

 これは生活していく上で必要な仕事だからだ。

 代わりに今日からは早めに眠らせてあげよう。




 ヴァリスタは俺のあぐらの中であぐらをかいている。

 そのヴァリスタは文字の書かれた木板と、バタフライエッジアグリアスを鞘に入れたまま抱いており、何だか満足そうだ。

 黒い俺と、紺藍のヴァリスタに、紺藍のバタフライエッジアグリアス、マトリョーシカの如き風貌だ。


 バタフライエッジアグリアスの逆光は、能力値の反比例で威力が増すという。

 恐らく筋力パラメータの事だろう。


 つまり筋力0のヴァリスタが持つことで俺以上に活用出来るのではないだろうか。

 しかしそれは龍を撃滅せしめる剣なのだ、それもヴァリスタは俺以上の使い手。

 街中では振り回さないよう口酸っぱく言っておいたので大丈夫だろうが。




 さて、何故ヴァリスタをこんな身近に置いておくのかというと、一応護身用に最強の剣を持たせたとはいえ、塔付近の荒くれ共に目を付けられるのが心配な為だ。

 それ以上に俺がその頭を撫で回しているからではあるのだが。


 実は昨日、眠る際に撫でていたら癖になった。

 最初は大変微妙な表情をしていたが、耳は無造作に前方を向き、目と口はだらしなく半開きである。

 動物の猫と同じなら、大変リラックスしているのではないだろうか。


 そういえば猫耳に気を取られ過ぎていたが、尻尾もある。

 ズボンのお尻の方に穴を開けて出せるようにしたのだが、これがまた可愛い。



 そんな惚気はさておき、いつもの十組の客が訪れて、稼ぎは十分、時刻は十時。

 今日はヴァリスタの解呪が必要だし、ここらへんで切り上げても良いだろうか。

 そう思っていると、客が増えだした。


「噂の黒い兄ちゃんだな」

「特殊パーティ組んでくれ」

「本当に銀貨五枚かよ」


 どうやら口コミにより客が増えて来たようだった。

 特殊パーティというのは、どうやらHPMP表示が可能な俺のパーティ編成の事のようだ。

 三日続ければ広まりもするか。




 そうして売り上げが順調に伸びつつ、時刻は十一時となる。

 客足も途絶え、今度こそ切り上げようという時、俺は塔周辺の喧騒にも似たざわめきが一瞬途切れたのを感じた。




 周囲に目をやると、暗く黒い――まるで暗黒の如き鎧を全身に纏った剣士が、対照的な白銀の甲冑一団を引き連れて向かって来るのが見えた。


 暗黒の化身を筆頭に、その背後には総勢十二名の白銀。

 手練れだろう、誰もが全身鎧を身に纏い、各々武器を引っ提げて、扇状に幅を利かせて行進して来る。

 革鎧や壊れかけの鉄鎧を着たいわゆる普通の冒険者たちはそそくさと離れていき、避けるように道を譲る。




 甲冑の音だけが辺りを支配して――。




 俺はヴァリスタの頭を下げさせて、自身も俯き気味に視線を落とした。

 地下街の荒くれ共の変貌を目の当たりにし、関わりたくないと思ってしまった。

 暗黒甲冑が十二名の白銀甲冑を引き連れ行進する、この粗雑な地下街においては違和感と威圧感の塊でしかない。




「貴方が特殊パーティ編成の――黒い男」

「そうですが……何か」




 ヘルムにくぐもった声、明らかに俺に向けられたもの。

 俺は返答しつつ、後ろ手にした右手へ謎空間からブラッドソードを取り出す。

 ヴァリスタを抱える左腕に力を籠め、少しだけ頭を上げる。

 目前には暗黒甲冑、その後ろにはずらりと十二の白銀甲冑。


 そのヘルムの下で、どのような表情で見下げているのか。


 俺はこの地下街で、何かしただろうか。


 冷や汗が噴き出そうな思いの中、平静を装ってその暗黒甲冑の下腹部を凝視した。



冷泉神流子 人間 Lv.26

クラス 暗黒騎士

HP 1260/1260

MP 100/100

SP 16

筋力 860

体力 800

魔力 860

精神 800

敏捷 40

幸運 40

スキル 達人 重撃 魔力転化 HP自動回復 MP自動回復 暗黒剣 剣術 闇魔法



 あれ


 この名前

 この種族

 このスキル


 もしかして――勇者じゃないか。

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