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第22話「ヴァリスタ」

「とりあえず、隣にどうぞ」

「はい……」


 ベッドに座る俺の隣に奴隷が腰掛け、一息ついて話を切り出す。


「さて、落ち着いた所で君について聞きたいんだけど、良いかな」


 頷いた奴隷を見て、俺はステータスを再確認する。



――― 獣人 Lv.1

クラス 溢者

HP 20/20

MP 0/0

SP 1

筋力 0

体力 20

魔力 0

精神 20

敏捷 50

幸運 0

スキル

状態 喪失 隷属



 まず――いや、もう名前だな。

 名前が無いというのが気になる。

 いつまでも君とか奴隷とか呼ぶのは嫌だし。


「君の名前は?」

「無い」


 無いのか。


「これまではどう呼ばれていたんだ?」

「黒いのとか、チビとか……」


 なるほど、いわゆる愛称……というか蔑称というか、そんな感じだったのか。

 俺も此処では黒い兄ちゃんと呼ばれているし、やはり似た者同士だ。


「これから一緒に暮らしていく上で呼び名に困るんだけど、俺が名前を付けてしまってもいいか?」

「うん……」

「じゃあ、何か好きな物とかあるか」

「肉!」


 肉かよ、そんな声高々に宣言されても。

 ミディアムちゃんとか、ウェルダンちゃんとか、どうなんだ。

 レアちゃんなら可愛げがあるな。


 でも肉由来の名前はちょっとないよな。

 一緒に戦っていくのだから、むしろ武器名とかの方が良いんじゃないだろうか。


「じゃあ使える武器はあるか」

「剣と、弓は、狩りで使った……のを見た、です」


 ソードちゃん、ブレードちゃん、ないな。

 弓というとボウ、ボウちゃんはないだろ。

 アルバレスト……ああ、バリスタとか良いな、呼びやすいし。


 レアかバリスタ、そのままもアレだし、ちょっと格好付けてヴァリスタとか。

 あれ、俺のライよりも格好良いな、ヴァリスタ。


「よし、ヴァリスタだ。今日から君はヴァリスタ!」

「ヴァリスタ……」



ヴァリスタ 獣人 Lv.1

クラス 溢者

HP 20/20

MP 0/0

SP 1

筋力 0

体力 20

魔力 0

精神 20

敏捷 50

幸運 0

スキル

状態 喪失 隷属



 おお、ステータスに名前が刻まれた。

 感動ものである。

 なんというか俺が名前を付けた訳だし、あんな所やこんな所まで見てしまった訳だし、娘の様に育ててあげよう、そうしよう。


 さて、ヴァリスタとは常に行動を共にするのだし、パーティは組んでおいて大丈夫だろう。


「わっ……これ、なに?」

「パーティ申請だ、承諾して」


 ヴァリスタは手を動かして、パーティとして認証された。


「あの、目に何か……」


 その紺藍の瞳は左上に向けられている。


「ああ、それはHPとMPの表示だ」

「え!?」

「HPが危険になったら逃げるんだぞ」

「え! あ、は、はい……」


 ヴァリスタは困惑と驚愕と、ちょっとだらしない表情で呆然と固まった。




 さて、喪失状態は明日にでもギルドに行って僧侶のエティアに見てもらうとして、クラスはどうなのだろう。

 このままでは筋力は伸びないけれど、防御面とやたら高い敏捷で謎の回避タンクに成長しそうなのだが。

 これがゲームであれば嬉々として回避タンクにしただろうが、さすがに筋力0ではもしもの事態に対処出来ないし、最悪村人でもいいから他のクラスに変えるのが得策だ。


「あれ、クラスチェンジが出来ない」


 クラスチェンジが効かない。

 試しに自分に使ってみると、しっかりと機能している。

 おかしい、これも経験を失うという喪失のせいなのだろうか。


 何にしても明日、解呪してからだな。

 仕方ないのでクラス溢者の詳細でも見る事にする。

 ちなみにパーティメンバーのものしか見れないので、凄いクラスの人が居たとしても習得条件を盗み見たりは出来ない。



溢者ブラックレーベル

得意 敏捷

苦手 MP 筋力 魔力 幸運

特殊効果 架橋(???)

習得条件 溢者



 詳細表示が仕事を放棄した。


 特殊効果の架橋はよくわからない。

 橋を架けるのが上手いのだろうか、いやいやまさか。

 習得条件だが、まぁあぶれたから、溢者なのだろう。


 やっぱり独り地下におとされた俺みたいな境遇だ。

 凄い親近感、守ってあげたくなる。

 いかんいかん、イケメンナルシストみたいになる所だった。




「さて、すぐというわけではないが、仲間として戦ってもらう事になる。大丈夫か、ヴァリスタ」

「はい……。あの……」

「何だ? 言いたい事があるなら言っていいぞ」


 ヴァリスタは頷いて、目を逸らしながら話し出す。


「どうして、仲間なの……です?」

「あれ、嫌だったか?」

「違う。何で、奴隷なのに……」


 全く気にしていなかった。

 奴隷だから仲間とか以前に、隷属しているのだった。

 でもしかし人間の業か、信頼関係ってものが欲しくなってしまう。


「主人と奴隷の関係ではあるが、背中を任せる以上、俺達は仲間だ。これじゃあ駄目か」

「わかった、わかりました。仲間、です」

「無理に敬語使わなくてもいいぞ」

「……うん」


 ヴァリスタは頬を染めて俯くと、指先を弄り出した。

 可愛い、これが娘を持つ親の心境か。


「しかし口にしてみるとヴァリスタって長いな、やっぱりレアとかの方がいいか?」

「ヴァリスタ!」

「お、おう、ヴァリスタ」


 ヴァリスタという名前を随分気に入ったようだ。

 初めて付けられた名前だからなのかもしれない。

 ヴァリスタに関しては、これ以上は解呪してからの再確認が必要だし、後はもう寝るだけか。


 持ち物の確認でもしておこう。



魔石【中】 4

魔石【特大】 1

龍の鱗 1


ブラッドソード 剣

特殊効果 HP吸収


バタフライエッジアグリアス 騎士剣

特殊効果 逆光 神速 貫通 HP自動回復 MP自動回復


ハードジレ 胴

追加効果 硬質化


コンバットブーツ 脚

追加効果 硬質化



 そういえば戦闘していなかったから忘れていたが、バタフライエッジアグリアスのスキルを確認していなかった。

 イケメンが俺にダメージを与えられなかったのが気がかりだし、確認しておく事にする。



逆光 能力値に反比例して威力が増す。

神速 接敵速度、攻撃速度が上昇する。

貫通 特殊効果の影響を貫く。

HP自動回復 5秒毎1%HP回復。

MP自動回復 5秒毎1%MP回復。



「逆光やっべえええ!」

「わっ!?」

「……んん、すまん。取り乱した」

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