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第14話「小さな悪魔」

「それで、これからどうするんだ」

「オラは冒険者ギルドさ行って報告済ませるゾ」


 冒険者ギルドか。

 俺は今無一文だし、稼げるなら冒険者になるのもアリだろうか。


「冒険者って稼げるか?」

「頑張り次第だナァ」

「俺でもなれる?」

「登録だけなら誰でも出来るサ」

「おお、ならついていこう。ついでに冒険者登録をしてしまおう」


 再び歩き出したが、治安はさほど悪いとは思えない。

 よく見れば、衛兵っぽい兵士が稀に巡回しているようなのだ。

 これならば表立って犯罪行為に及ぶ者はいないだろう。


 そうして辿り着いたのは大通りの真っただ中にある巨大な施設。


「これが冒険者ギルドか」

「ホレ」

「これは?」


 俺が渡されたのは銀色の硬貨だった。

 登録には金が必要らしい。

 それでもって、この簡素な百円玉の様な物が代金だという。


「悪いね」

「イイサ、魔法が使えるようになったのはオメサンのおかげだしナ。何かあればいつでも頼ってクレ」

「ありがとう」


 そうして中へ踏み入ると隅で飲んでいた連中から一瞬視線が飛んで来て、すぐに外れた。

 冒険者ギルドは居酒屋も兼業しているのだろうか、いくつか大きなテーブルと雑多に椅子が置かれており、朝っぱらから飲んでいるオッサンが多い。

 いや、地下で朝も夜も無いのかもしれないが。

 もしかすれば、此処でパーティメンバーを募集したりするのだろう。


 俺は一旦ギ・グウと別れ、受付の女性に話しかける。

 その後ろには事務処理をしている者が何人か居る。

 全員制服を着ており、何だか銀行に来たみたいだ。


「すみません、冒険者登録をしたいのですが」

「あら、まるで勇者みたいな風貌ですね」

「ハッハッハ、ヨクイワレマス」


 これバレてんじゃないのと思うのだが、知らぬ存ぜぬだ。

 いや、バレた所でどうこうなる訳ではないとは思うが。


「じゃあステータスを登録しますね」

「はい」


 おもむろに渡された石版を持って、ステータスを表示させてから返す。


「ちょ、ちょっと! これ、何?」

「え?」

「ドラゴン……バスター? もしかしてドラゴンでも倒したの? いや、でもレベル1だし……」

「ハッハッハ、ヨクイワレマス」


 詰所のザル検問と違ってがっつり石版を見ている。

 村人にしておけば……いや、剣士辺りが妥当だったのかもしれない。

 今突然クラスチェンジなんてしたらそれはそれで目を付けられるし、早速しくじったな。


 思えば地下では低レベルのモンスターが出るのだろうし、地上は富裕層の連中しか居ないだろうから年齢的に成熟してからモンスターの戦闘に及ぶ。

 そもそも俺みたいにレベル1で止まる者なんて居ないのだろうし、いやなんかもう怪しまれて当然なのか。


「ええと、ちょっと待っててくださいね」




 そそくさと立ち去った女性に入れ替わり、奥でぼうっとしていた少女っぽい外見の職員が受付にやって来て、立ったままテーブルに片手をついて、置かれた石版を眺めている。

 背の丈はそこまで大きくない、金髪に赤い眼をした、うら若いように見えてどこか場馴れした雰囲気の何とも神秘的な姿だ。


「ほう、龍を撃滅する者か」

「え?」

「ふむ、レベル1と。何とも不思議な小僧だ。スキル? とは何だ、なあ?」


 こちらを見上げて来て視線が合いそうになったので、逸らしておいた。

 何だよ小僧って、ロリババアとでも呼んでやろうか、いや、ババアかは知らないが。

 この人知識がありそうだし、やばそうだ。

 先程までは露程も心配していなかったけど、勇者だ殺せーとかならないよな。


 一人だけ小さいから制服特注じゃねえかロリババアとか思っていると、関心を失ってくれたのか奥へと戻って行ったので、その長い金髪を見ながらステータスを表示した。

 ちなみに相手の何処かしらの部位を肉眼で捉えていないとステータスは表示出来ないので、ガン見が癖になりつつある。



グレイディア・クレシェント 吸血鬼 Lv.77

クラス セイバーカリス

HP 4620/4620

MP 308/308

SP 77

筋力 770

体力 308

魔力 616

精神 616

敏捷 3080

幸運 3080

スキル 吸血 剣術 闇魔法 鋭敏 残像回避 保持



 化け物じゃねえか、まずレベルがおかしい。

 そしてスキルの保持は肉体の状態を保持するという、なるほどロリババア。

 しかしこれは――


「ヒトじゃねえ……」


 ぼそりと呟くと、俺の視界にはもうロリババアは居なかった。

 ジレをつままれちょいちょいと引っ張られて、釣られて視線を落とすと最高の笑みをたたえたロリババアが俺を見上げていた。


「小僧、視たな?」

「はい、髪の美しい女性は素敵ですね」

「……」

「……」


「此処は居心地が良いよなあ、陽光が射さぬ空間というのは最高だと思わんか?」

「そうですね、そうですかね?」

「……」

「……」


 ロリババアは知っているのだろうか、笑顔とは、元来威嚇の為の表情であったという。

 是非鏡を見てほしい、最高の笑顔のまま目だけを見開くと、それはもう恐怖の権化となるのである。

 しばらく沈黙が続いたが、受付嬢が戻って来た事でロリババアは奥へと引っ込んだ。


 冒険者ギルドは、怖かった。




 知らないスキルが大量にあったので、まとめておこう。


吸血 出血している者からHPを吸収し続ける。

鋭敏 感覚が鋭くなる。

残像回避 攻撃回避時に注意を引き付ける残像を出す。

保持 肉体を保持する。


 吸血がタンク的にはチートレベルのスキル。

 ロリババアことグレイディアは回避タンクが似合いそうだ。

 出来ればもう会いたくないけど。

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