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暗殺の勇者の物語  作者: ぴょこ
リカント王国
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勇者の能力

「.....あまり言いたくはないのだがな」


 王は不機嫌そうな表情を浮かべながら言った。


「勇者の固有能力は本人の性質に大きく左右されると言われておってな」

「えっ?ほんとに?」


 思わず聞き返してしまう。

 衝撃の事実だった、ちょっと信じられない、そんなこと絶対にないはずだ。

 俺は少し焦りながら王に弁明する。


「いやでも俺、人を殺すだなんてそんな酷いこと絶対にしませんよ!日本にいたときにも虫一匹殺そうとはしませんでしたし、何かの間違いなんじゃないですか!?」


 このままだと変に誤解されそうだ。

 世界を救うための旅に出ても感謝するどころか怯えられるかもしれない。

 それに王の不信を買ってしまってはこの国での生活も少しやりずらくなってしまうだろう。

 ていうか何で俺がこんな状況に立たされているんだ?

 そっちの都合で勝手に呼び出しておいてその顔はないだろう。


「俺は人殺しなんてしません!信じて下さい!!」


 俺は必死になって話したが王の態度は変わらなかった。


「そなたの言い分は.....まあ分かった事にしてやろう。とにらえずこの件は一旦保留とする。そなたもそれでいいな?」


 一方的に話を切っておいて、なにがいいな?だ。

 明らかに不信そうな目をしている、こいつ絶対に信じてないな。


「では、我輩からは以上だ!勇者には援助金として800メルを贈呈しよう!そのかわり、今後は自らの力のみで旅をしていくがよい。では勇者よ、世界を救う旅へ出るのじゃ!!」


 王の強引な宣言で謁見は終わった。




 王から援助金という名の手切れ金をもらった俺は、勇者についての簡単な説明を聞いた後で城の外に出た。

 あいつ絶対に俺のこと犯罪者か何かだと思ってるな、ふざけやがって。

 この世界を救う勇者様だぞ?扱いがぞんざいすぎるだろ。

 俺が怒って魔力溜まりの破壊をしなかったらどうするつもりだ。

 .....いや、あの態度を見るにもしかして勇者ってそこまで重要じゃないのか?それとも今すぐに破壊しなくても1000年ぐらいは大丈夫だとか?

 どちらにせよ勇者だからって何をしても良いという感じではなかったな。

 まあ俺は例外というだけかもしれないが。

 とにかく装備品を買いにいこう、さすがに制服着たまま素手で戦って旅する訳にもいかないし。

 旅の仕方なんてよくわからないが、しばらくはここで宿を探して滞在しておこう。

 ある程度準備が出来たらその時本格的に旅に出れば良いだろう。

 そう思い街を歩いていると香ばしい肉の臭いをだす屋台が目についた。

 ちょうどお腹も空いてるし少し買っていこうか。

 大きな豚の丸焼を歯車みたいなもので回しながら客引きしている店主に話しかける。


「らっしゃい!!どれだけほしいんだ?」

「軽く食べる量で」

「まいどっ!!」


 大きな鉈のような刃物で肉を削ぎ落とし、油取り紙に包んでいく。

 兵士としてもやっていけるんじゃないかと思うような筋肉だな、このおっさん。


「しかし兄ちゃん珍しい格好してんな、どこから来たんだ?」

「まあ、東の方からだ」


 俺の住んでた場所は東京だったので嘘は言ってないだろう。

 そんな俺の考えに気づいていないのか、顎に手を当てて店主は言った。


「東って言うとディーバの街か?あそこの酒は旨いからなあ.....」


 何だか良く分からないがどうにか誤魔化せたようだ。

 暗殺の勇者だなんて下手に言えば余計な不安を与えそうだからな。

 肉を貰って食べ歩きしながら街を歩く。

 街には行商人らしき人や大きな大剣を肩に担いだ冒険者など色々な人がいた。

 さすがに東京と比べると少ないが、それでもそこそこの活気は見てとれる。


 適当にぶらつきながら歩いていると剣や槍などが飾ってある店を見つけた。

 あれは武器屋だろう。

 店の奥からはカンカンと金属がぶつかる音が聞こえる、何か作っているのだろうか。

 俺は店に入って無造作に剣が突っ込んである所を見た。

 様々な長さの剣が置いてある。

 俺はその中のちょうど中くらいの長さの剣を手に取った。

 持ち手に硬い布が張ってあり、すらりと伸びた薄身の刀身は鈍く光っている。

 本物の剣など初めて触った、ずっしりとした重さと鉄の冷たさが身に染みる。

 手で触れて初めて気がついた、これは只の鉄の塊ではないなんて簡単なことに。

 命を刈り取り、潰すための刃と刀身。

 人を殺すための重さ。

 この剣は命を殺すためにある、そんなことが手に取った剣から体へと伝わって来た。

 この刃を皮膚へと刺し込み肉を切り裂く。

 そのための手段が戦ったことなんて一度もないのに、手に取るように感覚として理解できた。

 この不自然さは勇者としての能力の一つなんだろう。


 そう言えば、さっき城で教えてもらった事の中にそんな話があったな。

 勇者として持っている先天的な能力は、言葉の翻訳、基礎的な戦闘技能の取得、魔力溜まりの完全破壊、そして勇者専用のスキルと装備。

 何でも勇者のスキルを使うにはその勇者に適した武器を使わなければいけないらしい。

 それ以外の武器も使うことは出来るようだが、スキルの発動が出来なくなってしまうそうだ。

 それに専用の武器でないと勇者の能力の戦闘技能が使えないらしいので、どっちにせよ専用の武器を使うつもりだ。

 いちいち剣の振り方から習ってたら何年かかるか分からないしな。

 俺の使う武器は刀と針で、二刀流も出来るそうだが今のところは一刀で良いだろう。

 ていうか針って本当に暗殺者みたいだな、勇者の使う武器じゃないだろう。

 この他にも勇者の能力は色々あるそうだが、詳しい能力は余り分からないらしい。

 まあ、追々調べていけば良いだろう。

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