VSBIT
みんなゲームをしてる、そう疑いなんて持ってない。
俺の親父が小学生の頃から一般家庭にゲーム機は普及したんだ。
誰でも気軽に楽しめる。
ゲームをしない子供は仲間はずれにされる。
上手い奴は尊敬を集める。
だが、このゲームって誰が何の為に与えたか、俺達はしらなかった。
そう、戦闘員長期育成計画なんて思っても見なかったんだ。
ある日突然現れた黒服はまるで映画の中に登場するような奴等だった。
「桐崎淳一君だね、君を国家特別法の下で徴兵させてもらう」
「え、何いってるんだよ、っておい放せって」
「手荒な真似をするな、まず説明を聞いてもらう」
「ハッ」
目の前の女性は周りの人より偉いのか…
「すまないね、優秀な人材を速やかに集めろと言われているんだ、まず確認だが君は先日アミューズメントパークで通称VSBIT(VirtualSystemBattleInterfaceTool)で歴代最高得点を記録した、これに間違いはないね」
なぜ知ってるんだ、少なくとも本名は一切使ってないのに。
「どうしてそれが僕なんですか」
「ふむ、なかなかに慎重な性格らしいが、実はね、カードの認証機には指紋の読み取り装置もあるんだ、そしてインターフェイスを通じて君の画像がこの通り記録されている」
「それって犯罪じゃないですか」
「いや、これは国家特別法で決められて許されている行為なんだ、君の様な優秀な人材を集める為のね」
「それで、僕を徴兵っていうのは」
「うむ、流石に此処で説明することは出来かねるのだが、そうだな、君の家か私たちの施設どちらか選んでくれ」
どっちかだって…安全なのは家かもしれないけど、家族に危険が及ぶのは避けなきゃ。
「施設で」
「ほお、てっきり家を選ぶと思ったが…意外だな」
「どっちでもいいさ…で、説明だろ、連れて行ってくれ」
「よし、車まで御案内しろ」
そして僕は郊外にある基地まで連れて行かれてヘリに乗りさらにジェット機で連れて行かれた。
聞いてないぞ、と言いたくなるほどの移動距離だ、一言だけ此処まで遠いなら言ってくれと伝えたら、君の場合が特別なんだと言われた。
自慢じゃないが勉強は平均並み、運動も得意かといわれたら頭を傾げるレベルの人間だ。
ゲームは確かに得意だけど基本的に家でしかしないし、偶々家庭用のゲームと同じゲーム筐体があると聞いて学校の帰りによってやっただけだ。最高得点とか言われてもその店の最高得点ぐらいで騒ぐほどじゃないだろうし、この扱いは意味が解らない。そもそもゲームをやってて国が監視してるだなんて陰謀論かよって話しだ。
そして連れて行かれた島は島ではなく洋上に浮かぶ空母のような島だった。
携帯を調べたが既に圏外だった、普通の一般家庭の高校生を攫うには手が込みすぎてるよな。
それだけが基地を経由してきた僕の唯一の安心だった。
「唐突だけど、就職した事にするのと、転校して寮生活、君はどっちが好みかな」
何言ってるんだこの女性は、それが人生の分かれ道を既に決めた後の最初の選択肢だったなんて僕は気が付かなかった。