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人数差なんて個人の実力で埋められる

 蒼は村の皆に送られてそこを去った。そして今、森の中にいる。


 絶賛迷い中


 何しろあまり村から離れたことがなく、初めて訪れたかもしれない場所で、まわりは同じような景色。

 能力を使えばましにはなるのだろうが、それだとつまらない。と本人は思っているので、余程のことがないと使わない。そして何より蒼自身が迷いやすいかもしれないためだ。

 だがまあ、歩いていたら何かしらあるだろうということで、本人はあまり気にしていないようだが。

 ちなみに三日たっている。

 食事は無し。睡眠は……一日の半分(これでも少ない方なんです!)。

 蒼だから腹が減って死にそう……ということにならない。


「……飽きたな」


 気にしてはないようだが飽きたようだ。

 確かに三日も同じような景色だと飽きるだろう。蒼には餓死という危険性が無いため、ピクニックのようなものなのだ。普通なら餓死という死の恐怖があるため、こんな呑気にはならないのだが。


「…………」


 しばらく歩いているとなんか見たことある開けた場所に出た。その先にはなんか見たことあるような村が。

 戻ってきちまったか、と蒼が心の中で呟いていると、村の入り口から目算数メートル先に何やら団体がいた。

 蒼はそれを離れて“見る”。

 これは能力の応用で、ある特定の人物を何処からでも見ることができる。

 視線だけそこに行く。

 要するに、壁の向こうの何かを見ることができるというわけだ。

 これは、距離を一定の間隔で離すことができる。

 蒼は右目をつぶっているので、右目でそいつらを見ているのだろう。

 そしてそいつらが何かわかった蒼はそれに向かって走り出した。


「あいつら……!」



△▽



「妖怪だ……!!」


 ひぃぃぃぃっ!とか、恢菜をよべ!と、皆が慌て始める。御存知村人だ。

 それを見て飛代路理は心震わせる。

 飛代路理は最近大妖怪になったばかりだ。なったばかりだから、その妖力は、それなりに長く生きた中妖怪とさほど変わらないが。

 とにかく飛代路理は、記念にこの村を食べちゃおうと計画していた。

 何故この村がたいした妖怪に襲われなかったかというと、飛代路理が手をまわしていたからだ。

 少し前に、自分の能力がさほど効いていなかったせいか、一人の妖怪が勝手に襲撃した。と報告を受けていた。

 ちょうどそのとき村に気をかけている暇はなかったので、それをきいたときヒヤヒヤしたものだが、なんとか撃退できたと聞いてほっとしたものだ。

 それだけ、この村を育てていた。


 ほんと……。勝手に手を出しちゃこまるなぁ。


 とりあえずこの村の退治屋が来たみたいなので応戦することにする。

 何しに来たといっていたが……きまってるじゃん。


 たべるんだよぉ


 連れてきた妖怪含め此方は数十人。一対十では勝てない。

 それに反対側にもいる。この村は確か退治屋は一人しか居なかったから恐らく反対から……。

 それを考えていたら飛代路理の口はニヤニヤしてしまった。

 それを押さえる気は飛代路理になかった。勝利を確信しての笑みだった。

 しかし、それを見ていた妖怪が一人……。



△▽



 蒼は飛代路理に見つからないように村の反対側に回っている。

 先程、恢菜に加勢しようと思ったが、飛代路理の心を“見て”、今現在の行動を起こしている。

 久しぶりに見た飛代路理にたいし、何を考えているんだと思い、飛代路理の心を見てみたのだが……。


 恢菜……耐えてくれよ


 そんな思いを胸に、蒼はかけていく。

 そして“残光”を抜刀。今にも殴りにかからん妖怪を斬る。

 スッ……という音でも聞こえそうな静かな断ち筋で首を落とす。ついでに胸を蹴っておく。血が下の若者にかからないようにするための配慮だ。

 そして、妖怪が後ろに倒れていく。

 地面についた音に気づいたのか、周りの妖怪は止まって、刀を構えた蒼を見る。

 蒼はそれらを、冷めていてなお、威圧するような視線で返す。このとき、蒼はおかしいことに気づく。皆、虚空を見つめていた。瞳のなかに光が入っていないように感じた。

 そんな蒼を危険と判断したからか、妖怪達は一斉に蒼を潰しにかかる。

 蒼はそれで思考を一旦中断させ、応戦する。

 今回は急いでいるので、能力の出し惜しみはしない。

 蒼は的確に避け、攻撃する。

 数分後、それらを始末した蒼は周囲を“見て”(自分以外の)妖怪がいないことを確認したあと、村を突っ切って、恢菜の所へ向かう。周りの恐怖するような視線を気にせず。



△▽



 蒼が目標地点についたのは、ちょうど恢菜が吹き飛ばされたときだった。ちゃんとガードをしていたので、死んではいないだろう。そう考えた蒼は、飛代路理達の前に姿を現す。


「蒼ぉ!どこにいってたんだよぉ」


 蒼は返事を返さない。

 飛代路理の周りの妖怪もやはり、虚空を見つめていた。


 飛代路理だけ違うというとあいつがリーダー的存在。確か飛代路理の能力は『毒を扱う程度の能力』。それで妖怪達を操ったか?


 ここまで考えて、決定付けるために飛代路理に質問をする。


「その妖怪はどうした」

「その妖怪?」

「てめぇの周りのやつらだよ」

「ああ、こいつらなら……


 毒で操ってるんだぁ

「毒で操ってるんだぁ」


 それを聞いた瞬間、蒼は歩き出す。

 それに応戦しようと前に出る妖怪。


 …………攻撃予測線。後ろ。頭上から周り。を“見る”。


 一人が左で殴りにかかる。

 蒼はそれを、体を少し右斜めに倒し、避け、刀を右に握っているので、斜めに避けたときの勢いを殺さずに回転して、それを斬る。

 本来敵に敵に背を向けるなんてことをするのは危ないのだが、能力で周りの情報は分かるため、蒼はたいして問題なかった。

 そして跳び、刀を水平に刀の光を残しつつ左右に二閃し、着地。二人が倒れる。

 それに少しばかり驚く周りの妖怪。

 上から攻撃が来たので、そいつの正面に立つような形で避ける。蒼との身長差があるので、そいつは少し屈んでいた。それを見た蒼は一瞬で懐に入り、ちょうどいい位置の首をはねる。そして後ろに跳んで離脱。三人目が前に倒れる。先程蒼がいたら、のしかかられていただろう。

 片腕が無くなった妖怪が蹴ってくるが、それを左に避け、足をなかばから上空に向かって残光を振って、斜めに切り落とし、左から相手の右太股を水平に斬る。

 そして、バランスの崩れたところを切ろうと思ったが、横から殴られかけたので、前に避ける。そして結局残光を上段下ろしで、首を斬る。

 段々ヒートアップしてきたのか、先程よりも蒼は速く動いていく。

 斬って斬って斬って……。

 やがて飛代路理だけになる。

 よほど衝撃的だったのか「ぐぬぬぬ……」と唸っていた。


「こ…このやろう。………いや、いっか。どうせあげる気無かったしぃ」


 蒼は飛代路理を、それはもう冷めた目で見ていた。


「蒼ぉ……。邪魔するなら容赦しないよぉ」


 飛代路理の心を見てみると


 どちらにせよ殺すけどね


「注目浴びたからって調子にのるなよぉ」


 それは蒼が前に目覚めて岩を吹っ飛ばしたときの事だ。

 その時、蒼が注目を浴びたので、それを利用してやろうと飛代路理は思った。嫉妬も少しはあったのだろうが。ちなみに蒼を使って何をしようとしたかは闇に葬られる(作者が何も考えてないんですね。分かります)。

 飛代路理は蒼の強さを見誤っていた。調子に乗っていたのは飛代路理と言えよう。

 蒼を格下に見たのだ。


 蒼が飛代路理を斜めに斬りに行く。

 飛代路理はそれを後ろに下がって避ける。

 飛代路理は、蒼の持つ刀を全くといっていいほど知らないが、触れると不味いと先程見て知ったので、避ける。


 蒼は後ろに避けた飛代路理に追い討ちをかけるように腹を斬る。先程よりも断然素早く動いたので、避けれない。

 しかし、体は後退していたため、真っ二つにはできなかった。

 蒼は、血がかからないうちに避難する。


 くそ、おれの血がかかれば幻覚を見ると言うのに


 どうやら、飛代路理の血も毒のようで、蒼は表情に出さず、心の中でほっとため息をついた。


 誰が好き好んで毒を浴びるか


 蒼は再び斬りに行く。

 飛代路理は腕を振り、いかにも毒です、という色の液体をとばす。

 まあ、どんな色でも触れることはないだろうが。

 蒼はそれをかいくぐり、飛代路理を切り刻む。……本気で。

 飛代路理が避けれるはずもなく、身体中からドバッと血が吹き出る。

 蒼は更に突く。そして、勢いよく抜く。

 そこからも血がででくる。

 飛代路理が出血死するのも時間の問題だろう。故に混乱していた。


 自分が手も足も出ないだと?


 それにより硬直した飛代路理を、蒼が容赦なく攻撃する。光を残す速さで懐に入る。飛代路理は高身長なので蒼はジャンプし、首を正確にかっ切る。

 そして、飛代路理は絶命する……。

 恐らく一時間もかかっていないだろう。

 蒼は恢菜に声をかける。


「恢菜、大丈夫か?」

「蒼さん……。来てくれたんですか?」

「偶然な」


 蒼は残光を振って血をとばし、鞘に納める。

 恢菜は血を出してるだけで、たいした怪我は無さそうだ。


「っと、じゃあな」

「え?」


 蒼は言葉を待たず走り去る。

 先程の周りの視線……恐怖が混ざっていたため、長居すると何されるかわかったもんじゃないからだ。

 少し名残惜しみながらも再び村を去る。

 もう来ることはないと思うが……。



△▽



 もうすぐ日が沈む……というときにそいつらはやって来た。

 妖怪の集団。

 十人はいるだろう。

 まず、一人が門番を殺す。特に鍛えてもいないのであっさりやられる。それでも、大声をだし、皆にしらせる。

 それを聞き付けた恢菜が駆けつけた。


「何しに来たんですか」


 恢菜は思わず聞く。ただ、人間を殺している時点で何しに来たかはわかっている。

 長身の毒々しい髪色の妖怪が答える。


「くいにきたんだよぉ」


 それを合図に散開する。

 恢菜は霊弾を複数展開し、当てていく。しかし、ほとんど避けられてしまう。だが、恢菜は避けたときの隙をつき、妖怪一人一人に物理攻撃を加えていく。

 それでも、敵は複数。一人潰したところで意味がなく、すぐに構える。

 霊弾という、遠距離攻撃手段があるが、それは霊力があるだけしか撃てず、恢菜はそれほどあるわけではない。

 よって、ほどなくしてつきてしまう。それにより、隙をつくれなくなり、防戦一方になる。

 あいにく、そこは鍛えられているので、よけれるのだが……それだけだ。攻撃が加えられない。

 なかなか倒れない恢菜にイライラしたか、遠くで見ていた妖怪が


「実はねぇ……、反対側にもいるんだよぉ」


 それを聞いた恢菜は一瞬止まってしまう。

 それが命取りになる。

 恢菜は吹き飛ばされた。

 死んではいないが、すぐに動けそうになく、体が横たわる。

 このままではなすがままになるが、そこに、蒼い何かが割り込んでくる。

 それは、数日前に村をでていた蒼だった。

 恢菜は声をかけようとするが、しびれているのか、だせない。

 蒼が妖怪たちに向かって歩いていく。

 恢菜は蒼が妖怪だということを思い出した。そして、もしかして、協力関係にあるのでは、と考える。

 しかし、向こうが攻撃しているところをみると、それも違うようだ。

 相手が殴り、蹴るを繰り返すが、蒼は全て避ける。そしてそこから切れていく。

 そして一人だけになる。そいつは一番強いようだが、蒼はすぐに倒す。そして、


「っと、じゃあな」


蒼はすぐに去っていく。


 え?


 もっと聞きたいことがあった。

 それなのになんでいってしまったのか……。

 すぐに恢菜にはわかった。

 周りの皆の眼が……。

 悔しかった。あのまま蒼がいたら、皆がどう思うだろう。


 いってらっしゃい……


 もう会うことはないと思うが、蒼を心の中で送り出した。

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