『Prologue』
とある県とある市内の水族館――――。
とても賑わっているのは駐車場等を見れば丸分かりで、殆ど空いている場所がない状態みたいだ。
数日前はこの水族館の一番人気だった双子イルカが亡くなったとは思えない程の人気ぶりを持ち続けている。
館内はこの暑苦しい夏には有難い程冷えていて、涼しい、キラキラ光る水槽の水、優雅に泳ぐ魚、それらを見ながら広い館内を移動していく。
――――どれくらい時間が経ったであろうか、壁にかかった時計を見るともうお昼時になろうとしていた。
カチッ、カチッ、と小さな音を立てて進んでいく秒針を見ながらお昼はどうしようかな、なんて頭の片隅で考える。
秒針と時針が重なったとき、12時を知らせる放送がなったので、それを聞きながら先ほどのお昼の事を考えながら瞬きをする。
『――――……?』
目を開けたら、どうだろう、目の前にはさっき居た水族館――――が、廃墟になっていた。
壁はところどころ剥がれ落ち、床には少しヒビが入っていたり、魚の死骸が転がっていたりしているのに……水槽には傷一つついていない。
出入り口は――――と、扉に手をかけて力いっぱい押したり引いたりしてみたが、どうやらピタリと閉じられていて開かない。
空は――――水色の空が広がっているが、白い雲は全く動いていない、まるで絵のようだ。
どうしてしまったのだろう、どうやってここに入ってしまったのだろう……知るわけがない、瞬きをした一瞬の出来事だったのだから。
館内は丁度良い涼しさだったのが、今は寒気すら覚えるほど冷えている。
自分は、どうしたら良いのだろうか……、考えたがじっとしているのも意味がないと自分で解釈すれば、とりあえず他に人がいないかという事と、どうやったら出られるか、というのを探らなければならない。
自分は、この水族館から出られるのだろうか。
『Aquarium Escape』とは、某掲示板でオリジナルなりきりとして作らせてもらっていたものを、自分で小説化したものです。