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なおこちゃんの手紙【モキュメンタリー】  作者: 武州青嵐(さくら青嵐)


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33話 立花邸②

「家庭科室で、それをした?」

「……最初は、誰かのおうちの部屋でしようって話になったんだけど、これ以上呪われたらいやだって、みんなが……。だから学校の空き教室で、鍵がかかっていないところを探したの」


「なるほどなるほど。で、こっくりさんで、なおこちゃんを呼び出そうとしたんだ」

 涼子が言い、凛は頷くが、他の大人ふたりは置いてけぼりの顔をしていた。


「こっくりさんはご存じですよね? あれって一番簡単な交霊術なんです。なんか日本ではその辺にいる浮遊霊を呼び出すイメージですが、本来は死んだ家族とか、知り合いをおろすんですよね。だから、この場合、凛さんたちは、『なおこちゃん』を呼び出そうとした。そうだよね」


「うん。それで、なおこちゃんにもう……その、帰ってもらおうと思って。つきまとわないでって」


 彼女たちは日を合わせ、一斉下校の日にこっくりさんを決行した。

 集団下校ののち、それぞれがこっそりと再度校舎内に忍び込み、家庭科室に集まった。


 文字盤に「あいうえお」表を書いてきたのは丸田杏だったという。

 横書きに「あいうえお」が五十音順に書かれており、一番上には鳥居のマークと「はい・いいえ」が書かれたオーソドックススタイルなもの。


 5人の女児たちは、十円玉に指を置き、「こっくりさん、こっくりさん」と呼びだした。

 なおこちゃんを。


「来た?」

 伊勢が尋ねる。凛は震えた。


「来た。すぐに、10円玉が動いて……。『なおこちゃんですか?』って仙田さんが聞いたら、『はい』のところに移動して……」


 涼子は興味津々だが、隣の石島はかなり冷静だ。

 まあ、涼子も言いたいことはわかる。どのようにでも説明がつく事例。


 だが、説明のつかないことがこの世ではまま、起こるのだ。


「アンにゃんが『ごめんなさい、私たちはあなたと遊べません。帰ってください』って言っても、『いいえ』のところから10円玉が動かなくて……。その、私、あんまりそんなことしちゃいけない、って言われたけど。怖いから、10円玉を『はい』のところに移動させようと指で引っ張ったのに、ぜんぜん動かなくて……。実はみんな、そうやってたのに、動かなくて……」


 ぽろりと凛の頬を涙が伝う。


「それでどうなったの?」

 涼子が尋ねる。


「しばらくしたら、10円玉が急に動き出して。『あそぼ』って。ずっと、あ・そ・ほ・“のところをぐるぐる動いてて……」

「かなり強情だったんだね」


 涼子が言うと、凛がうなずく。また、涙がこぼれた。


「ジュリアが、『じゃあ、一回だけだよ!』って言ったら、『はい』ってなって……。『なにする?』って仙田さんが尋ねたら、『おにごっこ』って」

「おにごっこ?」


 涼子は目を細めた。違和感がある。

 なおこちゃんは。

 かくれんぼをするのではないのか?


「じゃあ、鬼を決めようって……。それで10円玉から指を外していいかを聞いて……。『はい』って言うから、私たち、じゃんけんをしたの。負けた人が鬼ね、って」


 5人はまるく円になった。

 凛が、「最初はグー」と言ったのだそうだ。

 誰も言わないから。


 最初はグー、じゃんけんほい。

 誰がなにを出したかはわからなかったが、一回目はバラバラだった。


 凛は鬼になりませんように、と思いながら、「あいこで、ほい」と言った。


 今度は5人がみんなグー。

 ひとりだけがチョキ。


 凛はほっとした。

 みんなもホッとした顔で顔を上げた。

 丸田杏だけが、ひきっつた顔をしている。


 きっと彼女が負けたのだと思った。


 だけど。

 彼女が棒のようにのばしているのは、グー。

 丸田杏が震える声で言った。


「手が、6本ある、って」


 自分たちは5人。

 5人でじゃんけんをした。


 そして5人ともグー。


 では、このチョキを出したのは誰なのだ。

 凍り付いた家庭科室に、甲高い笑い声が響いた。


『なおこちゃんが、鬼!』


 その声を聞いた途端、みなが我先に教室を飛び出したのだという。

 結果的に、凛と仙田、佐藤、大林は階段付近で骨折。丸田は教卓の中に隠れているところを教員に保護されている。



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