29話 11月15日 ◎◎小学校 昼休み
ごめんね、三沢さん。佳花さん、かな? 昼休みに急に呼び出して……。
「いえ、別に……」
担任の先生にも同席してもらうから緊張しなくていいよ。あ、先生のことはわかるかな?
「教頭先生」
そう。で、教頭先生の隣にいらっしゃるのが、石島先生。石島先生は知ってる?
「カウンセラーの先生です」
一緒にいてもらうけどいいかな?
「はい」
ここで先生たちと話したことを、石島先生がメモするけど。それは?
「いいです」
ありがとう。さて。3年生は事件があって……。大変だと思うけど、三沢さんはどう?
「別に」
担任の小川先生に聞いたんだけど、事件にあった女の子たちとは……あんまり、仲が良くなかったのかな?
「私は嫌いでした。あっちも嫌いだったと思います」
嫌い、か……。仲良くできなかったのかな。
「少なくとも向こうはなかったと思います。私、いじめられてたから」
……まあまあ、小川先生。
そうか、いじめられてたんだね。気づかなくて申し訳なかった。教頭先生から謝る。
具体的にはどんな風だったんだろう? ものを隠された、とかかな。
「班決めのときに私と誰も一緒になってはいけない、とクラスの女子全員に言いました。プリントを後ろに回すときに、私がさわったところは汚いからさわっちゃいけない、とか。小川先生のところに毎回、『プリント交換してください』って向田さんが行ってましたよね?あと、今度クラスで出し物をするんですが、芸人の◇の真似をしろ、としつこかった」
小川先生、あとで私と話をしましょう。石島先生も同席よろしいか? ありがとうございます。……そうですね、教育委員会にも報告をしましょう。
小川先生、黙って。
三沢さん。じゃあ、『なおこちゃんの手紙』というのも、いやがらせのために誰かが君に渡したのかな。
「いいえ」
ん? 違うのかい。
「はい」
君は……その、『なおこちゃんの手紙』をもらったよね?
「はい」
そして、それを……誰かに出した?
「はい」
誰に出したか教えてくれるかな。
「はい。仙田さんに」
仙田さんだけ? あの事件で怪我したのは、他にも立花さん、佐藤さん、丸田さん、大林さんがいるけど。
「たぶん、他の4人に出したのは仙田さんじゃないですか? 残りの一通は誰に出したかしりませんけど」
5人に出さないといけなかったんだったかな。
「そうです。仙田さんに出せば、彼女は怖がってほかの4人に出すだろうな、とは思ってました」
でも、仙田さんの友達なんだろう? ほかの4人は。
「友達? さあ」
お手紙を読まない、とは思わなかったのかな。仙田さんが。
「読みますよ、絶対」
どうして?
「仙田さん、姫野くんが好きなんです。姫野くんからのラブレターだと思わせたので」
あ……。告白の手紙っぽくしたのか。
「そうしたら、絶対封筒、開けるでしょう? 喜んで」
……なるほど。で、彼女がほかの4人に手紙を回したの……かな。
ええ、それはわかってます、石島先生。しっかりとそこは本人たちに確認を。
そうか……。そうだな、あとひとつだけ質問させてくれるかな。お昼休みも終わってしまうしね。
「はい、かまいません」
三沢さん自体は誰から『なおこちゃんの手紙』をもらったのかな。
「なおこちゃんからです」
なおこちゃん……。
……ということは、なおこちゃんからもらったから、「なおこちゃんの手紙」なのかな? 小川先生のクラスには……。あ、そんな子はいない。
他のクラスかな? あるいは他学年?
「いいえ。なおこちゃんはこの学校にはいません」
うん? じゃあ、塾で知り合ったとか?
「いいえ」
じゃあ、なおこちゃんはどこにいる子なのかな。
「そこです」
そこ? え……?
「そこです。夜はうちの部屋によく来るけど。いまは学校の駐車場にいます」
駐車……場?
「いますよ。見えませんか? なおこちゃんから聞いて、手紙を出したんです。私が」
小川先生……。はい、見てきてください。
「教頭先生」
なんだい?
「いじめられる方が悪いんですか? いじめるほうが悪いんですか?」
そりゃ、いじめるほうが悪いんだよ。
「じゃあ、私、悪くないですよね? あ。昼休み終了の予鈴がなりました。失礼してもいいですか?」




