ライブ審査前②
スタジオ練習が終わり、僕は一刻も早く帰りたかった。
ほのちゃんとの一夜について、根掘り葉掘り聞かれたくなかったからだ。
恥ずかしいし。
なので会計をそそくさと済ませ、パッとスタジオを出たところであっちゃんに捕まった。
「どこいくの?いつも通り、飲もうよ?」
「い、いや、今日は予定が…」
「なに?ほのちゃんとデート?」
僕は言葉に詰まってしまった。
負けだ。
菜奈さんがあっちゃんの後ろからひょっこり顔を出して言った。
「いくよ、ビジン」
さらに後ろにいるほのちゃんはもう諦めたみたいだ。
「先輩…いきましょう…」
こうして僕たちはいつもの居酒屋へと連行されたのだった。
ほのちゃんと僕は奥に並んで座らされ、対面にあっちゃんと菜奈さんが座った。
逃げられない。
僕は観念して乾杯をした。
しばらくの沈黙のあと、あっちゃんが問いかけてきた。
「ヤったの?」
僕はビールをこぼしそうになった。
ほのちゃんは下を向いている。
僕は動揺しつつも申し上げた。
「あっちゃん…!そんなこと聞くもんじゃないよ…!」
「否定しないってことはそういうことね?」
あっちゃんはニヤニヤしている。
ニヤニヤしているけど少し怒っている?
微妙なところだ。
ただ、隣の菜奈さんは明らかに不機嫌だ。
「私が誘ったときは何もしなかったのに…」
血の気が引いた。
付き合う前のこととはいえ、ほのちゃんの前で!
「な、菜奈さん!?」
「ほのちゃんも知ってるわよ」
「え」
「付き合う前にほのちゃんが聞いてきたのよ。『せ、先輩の家…泊ったこと…あるんですか…』って。心配だったのね。可愛かったわよ。」
ほのちゃんが真っ赤な顔を上げて言った。
「な…菜奈さん…!」
菜奈さんは舌を出して、ウィンクをした。
意地悪な時の菜奈さんだ。
あっちゃんが話題を戻す。
「ヤったんだよね?どうだった?」
僕は思わず大きい声を出してしまった。
「どんな質問だよ!」
店内に響き渡ってしまった。
幸い、にぎやかな店内ではそこまで目立たなかった。
ボリュームを下げ、改めてあっちゃんに言った。
「もう聞いて来ないで!何にも話さないから!」
あっちゃんは残念そうに言う。
「えー…」
すると、ほのちゃんが話題を変えるチャンスだと思ったのか、切り出した。
「べ…別の話をしましょう…!ライブ審査の話とか…!」
僕は思った。
ナイスだ、ほのちゃん。
しかし、菜奈さんがすかさず返してきた。
「とにかく練習して、審査当日に備えるだけよ!」
ごもっともだ。
あっちゃんが続ける。
「そうですね!練習あるのみ!それだけ、それだけです!…じゃあ話題を戻しましょうか」
この二人…今日はしつこいぞ…




