作詞③
19時過ぎ、時間通りにチャイムが鳴った。
ドアを開けるとほのちゃんが立っていた。
ダメージジーンズにバンドTシャツ、靴はVANSだ。
相変わらず声は小さい。
「あの…お邪魔します…」
「どうぞどうぞ」
僕は以前と同じく、座布団代わりにクッションを差し出した。
「お茶で良い?」
「いえ、大丈夫です…持ってますので…ありがとうございます」
そう言うと彼女はペットボトルの炭酸飲料を取り出した。
「そのジュース、学生時代から好きだったよね」
僕はふと思い出して、思わず口にした。
細かいことを覚えていて、気持ち悪かったかな?
そう思っていると、彼女は笑った。
「そうなんです…よく覚えてますね」
苦笑いだろうか。
それとも愛想笑いだろうか。
万が一にも覚えてくれていて嬉しいなんて思ってくれてたらいいのだが…
「そういうところですよ…」
ほのちゃんは言った。
「ん?」
僕は聞き返す。
「先輩はいつも会話の途中で困った顔をします…色々と考えているんですよね?」
僕は戸惑っている。
彼女はお構いなしに続けた。
「それだけじゃないです…先輩ってめちゃくちゃ他人に気遣いますよね…?私みたいな気の弱い後輩にも…」
すると、彼女は僕の目をまっすぐ見て言った。
「私は、先輩のそういうところが面白くて好きです。人より何倍も考えて、気を遣って。そんな先輩が書く歌詞が面白くないわけないんです。」
僕は、涙を流していた。
何故だかは明確には分からない。
でも何だか本当の自分を見てもらえた、そして評価してもらえた気分になったのだろう。




