作詞②
菜奈さんと喫煙所で会った翌日、僕はノートではなくスマホとにらめっこをしていた。
何で僕に作詞を頼んだのか、ほのちゃんに直接聞こう。
そう思って連絡しようとしていたら、いつの間にか次の日になっていた。
何故だか躊躇ってしまう。
多分、ほのちゃんに聞くことを『近道』だと思っているからだろう。
何か困難を乗り越えるとき、苦労をするべきだという考えに僕はなってしまっていた。
そう思い込むことで、本当の苦労、人との衝突を避けていたのだ。
人とぶつかる位なら、一人で苦労をした方がマシ。
助けを求めるくらいなら、自分で何とかする。
そうやって、自分にとっての本当の挑戦、他者とのコミュニケーションを避けてきたのが僕だ。
このままじゃ僕は変われない。
仕事も辞めたんだ!
僕は無敵だ!
そう自分を奮い立たせ、スマホを手にした。
ほのちゃんに電話を掛けた。
いや電話!
普通、まずはメッセージでしょ!
勢いのあまり通話ボタンを押してしまった自分にツッコみつつ、終話ボタンを押そうとしていると、ほのちゃんが応答してしまった。
「もしもし…」
声が小さい。
僕は通話音量を上げつつ、謝罪から入った。
「もしもし?今大丈夫?ごめんね急に電話かけて!もし都合悪かったら…」
「大丈夫です…」
ほのちゃんは答えた。
必死に言い訳していた自分が恥ずかしくなった。
とにかく、もう後戻りは出来ない。
「あの、作詞の事で聞きたいことがあって…いいかな?」
「はい…大丈夫ですよ…どうしましたか?」
「なんでほのちゃんは俺に作詞をしてほしいの?前、俺の事が面白いから、って言ってたけど、どういうことか詳しく知りたくて…」
「…」
沈黙だ。
何かまずかっただろうか…
そもそもそんな深い意味はなかったのかもしれない…
「あの…今晩会えますか?」
ほのちゃんの返答は意外なものだった。
「大丈夫だけど…」
「そしたら、今晩先輩の家に伺います…この後バイトなので、19時過ぎになってしまいますが、大丈夫ですか?」
「う、うん」
「分かりました…それでは後程…」
電話が切れた。
なんだ。
なんなのだ。
もやもやしながら、ほのちゃんが家に来るのを待つしかなかった。




