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パーティを追放された俺、なぜか女だけの最強ハーレムパーティを作っていた  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)


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第4話王城再訪

第4話王城再訪

王城の石造りの回廊は、朝の光を吸い込んだみたいにひんやりしていて、足音がいつもより遠くまで響いた。

俺は胸の奥でひとつ息を整えて、まっすぐ前だけを見て歩く。

追放されたあの日から、ここに戻ることを想像したことは何度もある。

でも、今こうして本当に戻ってきている自分は、想像より少しだけ落ち着いていた。

ゆっくり、確実に。

そうやって積み重ねてきたものは、意外と体を支える。


「ユウマ、顔が怖いよ。

もうちょっと力抜いてもいいんじゃない?」横でマリアが覗き込んできて、きらきらした目で笑う。

彼女の笑顔は、緊張した空気に小さな穴を開けて、そこから優しい風を入れてくれるみたいだ。


「気合入れてるだけだ。

怖がってない」

「ふふん、そういうことにしておく。

ほら、深呼吸」

言われるままに息を吸って吐くと、肩にかかっていた重さが少しだけ軽くなった。

セリアは前を歩きながら、王城の石壁に目を走らせていた。

何かを測るみたいな視線だ。


「地下に“記憶の部屋”がある。

古代の保持の紋が濃く残っている場所。

あなたが触れれば、きっと応える」

「応えるって、俺に?」

「ええ。

保持は橋。

橋は渡る人間を選ばないようで、選ぶの。

あなたは、落とさない人」

セリアの言葉はいつも短いのに、胸の中心にまっすぐ届く。

リリィは少し後ろで黙っていた。

王城に戻ってくると決めたとき、彼女は反対もしなかったし、歓迎もしなかった。

ただ、目だけが揺れていた。

それを俺は見ていた。

ケイルは杖を肩に担いで、いつも通りの余裕の笑みを作っている。

けれど昨夜、村で俺が眠りと呼吸を整えたのを見てから、彼の目の奥の色は変わっていた。

警戒、というほど強くもないけれど、ただの軽口じゃない距離感がそこにあった。


王城の門をくぐると、兵士たちの視線が一斉に集まった。

「あれ、追放された支援魔法使いだ」「戻ってきたのか」「王の命令か」そんな囁きが波みたいに広がる。

俺は気にしないふりをするのが下手だ。

だから、堂々と歩いた。

気にしても、歩みは止めない。


謁見の間は空気が重い。

玉座に座る王は年を重ねているのに、瞳は澄んだ刃物みたいだ。

俺をまっすぐに見て、王は口を開いた。


「支援魔法使い、優真。

お前が古代紋章庫の扉を開いたと聞いた。

保持の紋が応答した、とな」

「はい。

ゆっくり、確実に、触れました」

「王城は数字で成果を測る。

討伐数、時間、被害の少なさ。

だが保持は数字にできぬ。

数字にできぬものを、どう扱えばよい?」

王の声は低くて、石床に染み込んでいくみたいだった。

俺は一歩前に出る。


「橋は数字で測れません。

でも、橋がなければ数字は立ちません」

謁見の間に短い沈黙が落ちた。

王は目を細め、やがて小さく笑った。

「面白い。

ならば証明してみせよ。

地下の“記憶の部屋”に触れ、制御できれば、王城はお前の力を認める」

俺は頷いた。

セリアも頷いた。

マリアは握っていた俺の袖をぱっと離し、満面の笑みで親指を立てた。

リリィは口を開きかけて閉じ、視線を足元に落とした。

ケイルは「任せた」とでも言いたげに肩をすくめた。


地下へ続く階段は冷たくて、足音が吸い込まれていく。

薄い光が壁の刻印をなぞって、古い傷を浮かび上がらせる。

深く降りるほど、空気の温度が少しずつ下がっていくのが分かった。


重厚な扉の前に立つと、胸がじわりと熱くなった。

扉には無数の紋が刻まれていて、その線の一本一本が過去の息をしているみたいだ。

手を伸ばすより先に、背中に視線を感じた。

振り返ると、リリィがわずかに口を開いていた。


「ユウマ。

……行くの?」

「行く」

「怖くないの?」

「怖い。

でも、怖いのは合図だ。

速度を落とすって合図」

リリィの睫毛が小さく揺れて、彼女はほんの少しだけ頷いた。

マリアは「ユウマは落とさない」と何度も言っていたから、今は何も言わないで俺の横に立つ。

セリアは扉の縁を見て、「入る前に、呼吸を整えて」とだけ言った。

ケイルは杖の先を床に軽く着き、真剣な目をしていた。


扉に手を置いた瞬間、頭の中に洪水が押し寄せた。

戦争の叫び、英雄の勝ち鬨、敗走する兵の背中、誓いの言葉、裏切りの鋭い笑い、祈りの涙、子供の笑い声、誰かが誰かの名前を呼ぶ声――すべてが一度に流れ込んできて、膝が浮くみたいに意識が揺れた。


「ユウマ!」マリアの声が遠くで響く。

セリアの「集中して」という低い声が、胸の真ん中を掠める。

リリィの息が止まる気配、ケイルの杖が石を擦る小さな音。

全部が混ざる。


俺は逃げなかった。

手のひらにある自分の紋を、思い出す。

追放された日、震える指で撫で直した紋。

失ったものを数えながら、ひとつずつ結び直した糸。

橋を落とさないためだけに、編み直した俺の保持。

流れは流れのままじゃなくて、渡るための道に変えればいい。

俺は、流れの中に幅を作る。

足を置く場所を、見つける。

見つけた場所に、次の足を伸ばす。


扉の重みが、ゆっくりと内側に引かれていく。

中は広い円形の部屋で、中央に大きな水晶が鎮座していた。

水晶の中には光が渦巻いていて、それはまるで、誰かの夢の断片みたいだ。


「これ……全部、記憶?」マリアが小さく呟く。

セリアは頷き、「触れれば応える。

あなたの手なら」と言う。

ケイルは肩を少しだけ前に出して、「俺の魔力でも開けられるか確かめてみてもいいか?」と訊いた。

リリィは部屋の縁に立って、唇を噛んだ。


「待って」俺はケイルに手を挙げて止めた。

「ここは壊す場所じゃない。

急ぐと、落ちる」

「分かってる。

だが俺にもやらせろ。

王城は数字が要る」

「数字はあとだ。

今は橋が要る」

言葉の応酬に熱はない。

ただ、それぞれの仕事が違うというだけだ。

ケイルは俺を睨まない。

俺も彼を貶さない。

彼は壊して組み立てるのが上手い。

俺は落とさない橋を編むのが上手い。

役目が違う。


水晶に近づくと、空気が少し甘くなった。

古い果実の匂いみたいな甘さだ。

指を伸ばして、そっと触れる。

光の渦が一度だけ強く明滅して、すぐに落ち着いた。

心臓の拍が、少し早くなる。

ゆっくりを思い出して、息を合わせる。


「全部受け止めなくていい。

必要な分だけ、渡せばいい」自分に言い聞かせるみたいに呟いて、目を閉じた。

光は言葉じゃない。

けれど、意味はある。

誰かが勇気を出した瞬間。

誰かが愛を告げた瞬間。

誰かが悔やんだ夜。

誰かが笑った朝。

ひとつずつ触れて、ひとつずつ離す。

残すのは、渡るために要るものだけ。


「どう?」背中からリリィの声。

怖いのを隠さない、柔らかい声だ。


「大丈夫。

落ち着いてる」

「……ユウマ。

すごいね」

マリアの言葉はまっすぐで、俺の肩に軽く乗る。

セリアの視線は水晶と俺とを行き来して、何かを確かめるみたいに頷く。

ケイルは息を止めて、技術屋の顔になっている。


水晶の中のひとつの光が、肩に触れるみたいに温かくなった。

指先から腕へ、胸へ、背中へ、優しい重さが広がっていく。

誰かの名前を呼ぶ声がした。

聞き覚えのない声なのに、懐かしい。

俺はその声をそっと受け取って、心の中の机の上に置いた。


「ユウマ」リリィが一歩近づいた。

「ねえ、聞いて。

あなたを追放したとき、私、正しいと思ってた。

王城の依頼は火力が要る、数字を出さなきゃいけない、って。

あなたの保持は助かってるけど、遅いって言われ続けて……私は、あなたを守るためだと思って、あなたを外したんだ。

傷つけないための、決断だって。

でも」

「でも?」

「でも、間違ってた。

あなたは、誰より早かった。

急がないで、確実に、誰より早く、たどり着いてた。

今は、それが分かる」

水晶の光が呼吸をするみたいに静かになった。

俺は目を開け、リリィを見た。

彼女の目は濡れていない。

濡れていない目は強い。

「戻ってきて」と言われる準備をしていた自分を見つけて、笑ってしまいそうになった。

彼女は言わない。

俺も言わない。

言葉のない場所で、ちゃんと確認した。


「ユウマ。

王城はあなたを必要としている。

数字はあとからついてくる。

今は、橋を見せて」セリアの声は柔らかかった。

彼女が柔らかい言葉を選ぶときは、決めているときだ。

ケイルが「認める。

今は任せる」と小さく言った。

その言葉は長くはないけれど、重さがちょうどいい。


俺は水晶に両手を置いた。

深く息を吸って、吐く。

吐くたびに、部屋の空気が少しずつ温かくなる。

渦の光は穏やかに流れて、突き刺してくるような記憶はもうない。

代わりに、静かな景色が広がっている。

誰かの畑。

誰かの台所。

誰かの家の梁。

誰かの子供の寝息。

そういうものは、橋に向いている。


足を一歩前へ。

音は立たない。

目を閉じて、次の一歩。

落ちない。

落ちないことは、強さだ。

強いのは、派手じゃない。

派手じゃない強さを、ここへ置く。


「ユウマ、戻ってきて、と言ったら?」少し遅れて、リリィはやっぱりその言葉を口にした。

彼女は正直だ。

正直なのは、痛いこともあるのに、それでも言葉にする。


俺は笑って、首を横に振った。

「今さら戻れと言われても遅いんだが」

それを言ったとき、心は驚くほど静かだった。

あの日のように、乾いた音はしない。

むしろ、優しい水の音がする。

マリアがぱあっと笑って、「そういうところ、ほんと好き!」と両手を叩いた。

セリアは口元だけで笑って、ケイルは肩をすくめた。


水晶の光が最後にひとつだけ弾けて、部屋の壁をなぞるみたいに薄く広がった。

王城の石が古い呼吸を思い出したみたいに、冷たさが柔らかくなる。

俺は手を離した。

指先は震えていなかった。

背中も、重くなかった。


「終わった?」マリアが首を傾げる。


「終わった。

ここはもう、静かだ」

「王城に報告を」セリアが真面目な顔に戻る。

ケイルは杖を回して、「数字の話は後だ。

まずは王に見せてやろう」と笑った。

リリィは何も言わず、俺の横に並んだ。

足音が揃う。

揃った足音は、少し誇らしい。


階段を上がる途中、王城の空気が少し変わった気がした。

硬さは残っているけれど、角が取れたみたいに歩きやすい。

誰かが扉の陰から俺たちを見て、「戻ってきたのか」と囁く。

その声に刺はない。

俺は数珠の留め具を指先で撫でた。

冷たさが心地いい。


謁見の間に入ると、王は待っていた。

兵士たちも、家令も、見えないところで噂好きの侍女たちも。

全部の視線が集まる。

俺は深呼吸をひとつ。

ゆっくり、確実に、前へ。


「記憶の部屋は静まりました。

王城に残っていた過去の揺れは、もう人を眠れなくさせたり、焦らせたりはしません」

王は目を細めて、俺たちを順に見た。

セリア、マリア、リリィ、ケイル。

最後に俺。

「どうやって、制御した?」

「落とさないようにしました。

急がず、確かめながら、必要なものだけを残して、渡るための道にしました」

「数字は?」

ケイルが一歩前に出る。

「王。

数字はあとからたっぷりついてきます。

討伐も、時間も、被害の少なさも。

こいつの橋があるなら、俺の火力はもっと正しいところに撃てる。

無駄が減る」

王はふっと笑った。

「なるほど。

お前が言うなら、そうなのだろう。

支援魔法使い、優真。

王城はお前の力を認める。

依頼は、来る。

お前は、鍵だ」

鍵、という言葉は嫌いじゃない。

比喩は好きだ。

けれど今は、ただ頷いた。

マリアが「やったー!」と飛び跳ね、セリアが「よかった」と短く呟き、リリィは口元に手を当てた。

彼女の目は、濡れていない。

濡れていない目は強い。


謁見の間を出ると、王城の中庭に朝の光が広がっていた。

木の葉の間をすり抜ける風が気持ちいい。

マリアがベンチを見つけて座り、「ユウマ、休憩」と言った。

座ってみると、背中に残っていた緊張が音もなくほどけていった。


「ねえねえ、ユウマ。

王城で一番美味しいパン屋さん、知ってる?」マリアが身を乗り出す。


「知らない」

「じゃあ行こう!頑張ったご褒美!」

セリアが「後でね。

報告書」と真顔で言って、マリアが「えー、セリアは真面目だなぁ」と唇を尖らせる。

ケイルは笑って、「報告は俺がやってくる。

お前らはパンでも食ってこい」と肩を叩いた。

意外と頼もしい。

リリィは静かに俺の隣に座って、空を見上げた。


「ユウマ。

あなたが“戻らない”って言った意味、今なら分かる。

戻らないのは場所じゃなくて、気持ち。

あなたは前にしか橋を架けない」

「そうかもしれない」

「でも、前を向くあなたの背中に、私は並べる。

戻ってきてって言わない。

並ぶから」

言葉が静かに胸に落ちた。

俺は「ありがとう」とだけ答えた。

余計な言葉はいらない。

今は、朝の匂いと、パンの話で十分だ。


パン屋は、王城から少し離れた通りの角にあった。

焼きたての香りが通りまで溢れていて、列ができている。

マリアは嬉しそうに並び、セリアは列の流れを観察し、リリィは「この店、昔よく来た」と微笑んだ。

ケイルは報告を終えて走って合流し、「おい、俺の分残ってるか?」と肩で息をしながら訊いた。


焼きたてのパンを頬張ると、真面目な話が全部遠くに行った。

バターが溶けて、甘さがじわっと広がって、幸せになる。

「王城のパンって、ずるいくらい美味しいな」と言ったら、マリアが「でしょ!」と胸を張った。

セリアは珍しく二つ目を手にして、リリィは笑いながら「こういう時間、いいね」と言った。


パンを食べ終えて、ベンチに座っていると、城の鐘がひとつ鳴った。

新しい依頼の合図だ。

俺は立ち上がる。

ゆっくり、確実に。

セリアが書状を受け取り、「紋章庫の別区画。

もうひとつ、眠っている扉がある」と目を読む。

ケイルが「また地下か。

今度は壊すなよ」と笑い、マリアが「任せて、歌うから!」と両手を広げた。

リリィは「並ぶ」と小さく言って、俺の隣に立った。


朝の光は高くなって、王城の石に新しい影を作っている。

影は濃いけれど、怖くない。

影があるということは、光もあるということだ。

俺は数珠の留め具を指先で撫でて、深呼吸をした。

支援は、生きるための術だ。

橋は、渡るためのものだ。

王城は、場だ。

人は、群だ。

依頼は、扉だ。

鍵は、俺の手のひらだ。


行こうか、と言った俺に、みんなが頷いた。

足音が揃う。

揃った足音は、気持ちいい。

頭を空っぽにして歩いても、ちゃんと前に進める。

そのくらいには、今の俺たちは強い。

強いけれど、焦らない。

焦らないけれど、止まらない。


王城の影の下で、俺は少しだけ笑った。

追放された朝、門の外に出たときのあの重さは、もうない。

代わりにあるのは、パンの香りと、仲間の声と、少しだけ誇らしい自分の足音。

それで十分だ。

十分じゃないときは、また編めばいい。

橋は何度だって、架けられる。

ゆっくり、確実に。

今はただ、それだけを信じて、次の扉へ向かった。


読んで下さりありがとうございました!

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Youtubeにて作品公開中!

再生リスト : https://www.youtube.com/playlist?list=PLmiEOdmheYJxDUTEWff8Qck3VJlS95rzJ

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