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パーティを追放された俺、なぜか女だけの最強ハーレムパーティを作っていた  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)


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第20話 城門前の行列で角を丸くする

第20話 城門前の行列で角を丸くする

朝の王城は、薄い雲を肩に乗せたままゆっくり起き上がって、噴水の水面が息を数えるみたいに穏やかだった。

川べりの渡し場で息を合わせた昨日の余韻がまだ城の石に座っていて、歩幅は自然と揃う。

こういう朝は、靴の裏が柔らかくて、耳の奥の音が丸い。

俺は数珠の留め具に指を軽く乗せて、胸の奥にひとつ呼吸を置いた。

ゆっくり、確実に。

今日の合図も、同じでいい。


「ユウマ!」マリアが中庭の花壇から駆けてきて、直前でぴたりと止まった。

金色の髪は蜂蜜色の細いリボンで結ばれていて、朝の光をつまんで揺らしている。

「ねえねえ、家令さんが言ってた。

今日、城門前で行列ができる日なんだって。

商人の申請とか、巡回の交代とか、いろんな列が重なるらしいの。

声が尖る日は針になるからって、呼んでたよ」

「城門の列か」ケイルが肩に杖を乗せたまま顎を上げた。

「撃たないで支える日だといいな。

列に撃つの、俺は嫌いだ」

セリアが静かに近づいて、灰色の瞳で空の肌理を確かめる。

「列は悪くない。

けれど、重なりが多いと、匂いの層が奥に沈む。

沈んだ匂いは、人の声を硬くする。

硬い声は角を立てる。

角が立った列は、足が乱れる。

支援がいる」

リリィは剣の柄から手を離して、少しだけ息を深くした。

「私が人の並びを見て、足の順番を整える。

城門前は狭い。

ぶつからないように」彼女の声は短いのに、落ち着いている。

落ち着いた声は、場に向いている。

俺は頷いて、数珠を撫でた。

列の仕事も、布の仕事だ。

押さない。

引かない。

ただ、場所を思い出してもらう。


城門へ向かう道は、朝の風に蜂蜜色が混じっていた。

通りの匂いは昨日より軽く、市場の笑いは尖らない。

城門前へ近づくほど、声の層が重なって、足の拍が不揃いになるのが分かった。

申請のための列、荷車の列、巡回の交代の列。

列は別々に並んでいるはずなのに、角で重なって、誰かの肩が誰かの腰にぶつかり、誰かの足が誰かの足の影に引かれる。

引かれると、止まる。

止まると、焦る。

焦ると、声が高くなる。

高い声は、針の前段階だ。


「支援魔法使い殿!」家令が薄い地図を胸に抱えたまま駆けてきて、息を整えて頭を下げた。

「王城から伝言。

城門前の列に布を敷け。

針は刺すな。

数字はあとからついてくる。

それから、門番の隊と商人組の案内が食い違っている。

伝統の並びと新しい流れで意見が分かれている。

あなたなら落とさないで整えられる、とのこと」

「落とさない」と俺は穏やかに言った。

城門の手前に立って、列の拍を目で追う。

申請列の拍は早い。

荷車列の拍は遅い。

交代列の拍は短い。

拍が重なるところで、角が立つ。

角は刺になる。

その前に、布を敷く。

俺は胸の奥の呼吸をひとつ深くして、列の交点に薄い目印を置いた。

誰にも見えない。

見えないもので十分だ。

交点が自分の交点だと思い出せば、拍は勝手に合う。


「歌、いる?」マリアが耳元で訊く。

「いる。

短く、静かに」と答えると、彼女は本当に静かな声で城門の石の下に歌を置いた。

声は足の影の端に薄く座って、角の硬さを悔い改めるみたいに柔らかくする。

セリアは列と列の間隔を目で整えて、「半歩、右」「半歩、前」と淡々と合図を置く。

リリィは列の先頭と最後尾の人の視線を揃えるために、短い「待つ」を挟む。

ケイルは肩に杖を乗せたまま、荷車の列の速度が急に上がらないように、肩で重さを受け止めるみたいに立つ。

立っているだけで仕事ができるのは、最近の彼の強さだ。


門番の隊長は大声を出す癖があるが、怒鳴ってはいない。

「伝統の並びはこうだ」と彼は胸を張った。

「申請は左端。

荷車は中央。

交代は右。

中央が遅れるのは昔からだ。

こうでないと、門が守れない」

商人組の案内役は、短く息を吐いて言い返す。

「人が増えた。

荷車の数も増えた。

中央が遅れるせいで左の申請列まで詰まる。

列の幅を半歩ずつ変えればいい。

中央を少し細く、左の列を少し広く。

門番の目は守るためにある。

守るだけじゃなく、歩かせるためにも使うべきだ」

どちらも間違っていない。

間違っていないから、ぶつかる。

ぶつかると角が立つ。

角が立つと、列が刺になる。

刺にならないために、布を敷く。

「守る並びは残す」と俺は隊長に向けて穏やかに言った。

「残すけれど、半歩だけ幅を変える。

守る目の前で、歩きやすくする。

商人の案内は歩かせるための目だ。

目と目を合わせるだけで、刺は消える」

セリアが門の前の石目を指先で示し、「ここを薄く」と短く結ぶ。

リリィが案内役に目を向け、「半歩の合図。

私が前で並ぶ」と簡単に約束する。

マリアは布屋で買った蜂蜜色の薄い布の端切れを列の足元に少しだけ敷いて、「歩きやすい色」と笑う。

ケイルは肩で荷車の重さをほんの少し受けて、「押さないで受ける。

受けるだけは、俺の新しい技術だ」と照れくさく言った。

隊長は自分の胸の張り方を少しだけ緩めて、「半歩」を覚えようとしている顔をした。

覚えようとしている顔は、城に向いている。


列が動き始めた。

動くのに、無理がない。

無理がない動きは、長持ちする。

申請の老人が杖を前へ出して、足を置く。

滑らない。

荷車の列は遅くない。

遅くないのに、焦らない。

交代の列は短い。

短いのに、乱れない。

乱れない列は、刺を作らない。


「助かった」と隊長が短く笑った。

短い笑いは、良い。

短いから、座る。

座った笑いは、邪魔をしない。

「守る並びは残す。

半歩、覚える」

「覚える」と商人組の案内役も素直に繰り返す。

角は尖らない。

尖らない角は、門の影に似てくる。

門の影は、場に向いている。

家令が薄い地図を胸に抱え直し、「王に伝えます」と頷いた。

頷きは布。

布は重くない。


列が整うと、門の脇で小さな騒ぎが起きた。

荷には書類の束が乗っていて、その紙が風で少しだけ舞い上がったのだ。

紙は重くなる。

重くなった紙は、人の足を止める。

止まりそうになった紙を、俺は走らないで歩いて受け止めた。

持ち上げない。

押さえない。

ただ、紙の下に薄い布のイメージを置く。

置いて、待つ。

待って、座らせる。

座った紙は、動かない。

動かないのに、邪魔をしない。

荷の男が目を丸くして、明るく笑った。

「助かった!」

リリィが横で頷いて「止まらない」と簡潔にまとめ、セリアは紙の束の並びを目で整えて「重い言葉は下へ、軽い言葉は上へ」と淡々と合図した。

マリアは紙のふちを指先で撫でて「この色、蜂蜜色と相性いい」と無邪気に言い、ケイルは「俺は紙に炎を使わない」と自分に言い聞かせるみたいに肩を叩いた。

叩いた重さはちょうどいい。

ちょうどいい重さは、場に向いている。


列の端で、子供が二人、門の影で鬼ごっこをしていた。

片方が影の濃いところでくるりと回って、もう片方がそれを真似して足を滑らせそうになった。

未来に転ぶ音が見えた。

俺は走らない。

歩く。

子供の腰の高さに手をそっと伸ばして、重さの方から落ち着いてもらう。

持ち上げない。

押さえない。

ただ、落ちない方へ場所を少しずつずらす。

転ばない。

子供は驚いて俺を見て、すぐに笑った。

「ありがと!」笑いは軽い。

軽い笑いは、長く効く。


「ユウマ、やっぱりすごい」とマリアが肩を叩く。

セリアは「門の呼吸、整った」と満足そうに目を閉じる。

リリィは「並び、崩れない」と短くまとめ、ケイルは「撃たないで役に立つ」と自分を小さく褒めた。

家令は「数字はあとから」と照れくさく笑って、隊長は胸の張り方をもう一段階緩めた。

緩めた胸は、城に向いている。


城門の外側を見渡すと、遠くの通りの角で薄い人影が立っているのが見えた。

黒い布をまとって、風に消えない肩の線をしている。

祠で見た影、渡し場で見た影、そして今は門。

近づかないのに、誰かの仕事の端に座るタイプの影。

リリィが目を細めて、「彼、またいる」と小さく言い、セリアも視線を重ねた。

ケイルは肩に杖を乗せたまま冗談を言わない。

冗談を言わないときの彼は、炎ではなく目で支える。

「俺は撃たない。

撃たないで守る。

今日は、それでいい」

家令が地図の端を指で示す。

「午前の行列が落ち着いたら、王が小広間で短い話を、と。

城門前の列、紙束、影のこと。

『針は刺さない。

布を敷け。

数字はあとからついてくる』をもう一度だけ」

「行こう」とリリィが少しだけ頬を緩めて言い、セリアは「拍は一定」と淡々と結ぶ。

マリアは「歌、薄く」と準備をして、ケイルは「俺は撃たない」とまた自分に言い聞かせる。

俺は数珠を撫で、胸の奥に呼吸をひとつ置いた。

ゆっくり、確実に。

小広間は、長い言葉を要らない。


小広間に入ると、王は窓際で門の影を見ていた。

軽い上衣だけで、朝の風の肌理を目で追っている。

俺たちが膝をつくと、王は短く笑った。

「城門の列、助かった。

列は紙だ。

紙は重くなる。

重くなった紙は、人の足を止める。

だから、紙の下に布を敷け。

影は角だ。

角は刺さる。

刺したいときは、布を厚くして、待て。

待てば、角は丸くなる。

歩きやすい城でありたい」

「布は重くない」と俺は穏やかに答えた。

「重くない布は、長く効く」

ケイルが小さく笑って「ついてくる」と復唱し、リリィは真面目に頷いた。

セリアは「理にかなってる」と淡々と結び、マリアは「門の色、布にしたい」と目を輝かせた。

王は薄く目を細めて、「それでいい」と短く言った。

短い「それでいい」は、城に向いている。


話が座る前に、侍女が戸口で手を重ねて立った。

「支援魔法使い殿。

午後、王城の記録室で紙の並びが増えすぎて、棚の呼吸が止まりかけている、と。

匂いは重くないのに、目が眠っている。

整えてほしい」

「紙は重くなる」とマリアが肩を揺らして笑い、セリアは「記録室は層が多い。

層が多いほど、整える喜びがある」と冷静に受け取る。

リリィは「人の並び、私が」と短く言い、ケイルは「俺は撃たない。

紙に炎はいらない」と肩で笑った。

俺は数珠を撫でて頷いた。

ゆっくり、確実に。

紙の布は、重くない。


記録室は、静けさの匂いがしていた。

棚は背の高さを越えて並び、紙の背の色が穏やかに混ざり合っている。

混ざり合っているのに、呼吸が遅く、自分の場所を忘れかけている背がいくつも並んでいた。

忘れかけた背は、眠る。

眠る背は、読者の足を止める。

止まる前に、布を敷く。

「こんにちは」と俺は挨拶した。

記録係の少女が目を丸くして、嬉しそうに頷いた。

彼女は図書塔で名前のない棚を作った、あの子だ。

「増えちゃって……並び、迷ってる」

「迷うのは悪くない。

悪くないけれど、紙は呼吸を忘れやすい」と俺は穏やかに言う。

「重い言葉は下へ、軽い言葉は上へ。

息の場所を挟む。

歌でもいい。

村の記録でもいい。

人の声は紙の布になる。

布は重くない」

「歌、いる?」とマリアが小さく訊く。

「いる。

薄く、短く」と答えると、彼女は声を置いた。

セリアは棚の間隔を目で整え、「半歩ずつ」と淡々と合図する。

リリィは部屋の入口で人の出入りの拍を軽く整え、ケイルは肩で空気を受けるみたいに立つ。

俺は紙の背の隙間に薄い目印を置いた。

背が自分の背だと思い出せば、呼吸は勝手に戻る。


記録係の少女が鼻を鳴らして、笑った。

「……軽い。

重い言葉は下に座って、軽い言葉は上で遊ぶ。

人が歩きやすい」彼女の肩の力が抜けた。

抜けた肩は、場に向いている。

マリアが「よかったね」と笑い、セリアは「棚、整った」と淡々と結ぶ。

リリィは「並び、崩れない」と短く言い、ケイルは「撃たないのに役に立った」と肩をすくめた。

記録室の空気は甘い。

甘いけれど、重くない。

重くない甘さは、長持ちする。


部屋を出ると、廊下の灯りがいつもより明るく感じた。

灯り自体は変わっていない。

変わったのは、角だ。

角が丸いと、光は強く感じないのに、よく見える。

よく見えるから、足が止まらない。

止まらないから、歩きやすい。

家令が早足で近づいてきて、薄い地図を抱え直す。

「支援魔法使い殿。

夕方、城下の広場で小さな演説。

王が短い言葉を置く。

『針は刺さない。

布を敷け。

数字はあとからついてくる』を四度目に」

「短い言葉は、座る回数が増える」とセリアが静かに言い、マリアは「歌、薄く」ともう一度準備する。

リリィは「並ぶ」と短く重ね、ケイルは「俺は撃たない」とまた自分に言う。

俺は数珠を撫で、胸の奥で呼吸をひとつ置いた。

ゆっくり、確実に。


夕方、広場の光は蜂蜜色に傾いていて、風の拍は低い。

王が舞台の端に立ち、短く言った。

「城の列は紙だ。

紙は重くなる。

重くなった紙は、人の足を止める。

だから、紙の下に布を敷け。

影は角だ。

角は刺さる。

刺したいときは、布を厚くして、待て。

待てば、角は丸くなる。

歩きやすい城でありたい」

誰も声を上げない。

誰も笑わない。

誰も怒らない。

言葉は重くないのに、広場の真ん中に座って、誰かの心の端の針を薄く丸める。

丸めた針は布に変わる。

布は長く効く。

マリアが最初の一声を置き、セリアが拍を数え、リリィは人の流れを見て、ケイルは杖を肩に乗せたまま目で支える。

俺は胸の奥で合図をひとつだけ重ねた。

ゆっくり、確実に。

広場は、落ちない。


王の言葉が座ると、家令が舞台の脇へそっと歩み寄り、耳元で短く言った。

「支援魔法使い殿。

古い記録に、明日の朝、王城の外の古い石橋に“角が立つ兆し”とある。

風ではない。

人でもない。

橋の石の繋ぎ目が、長い眠りから起きる日。

起きたばかりの目は、滑る。

……あなたの布が、橋にも効けば」

「橋は、渡るためのもの」と俺は笑って答えた。

「落とさないために、布を敷く。

明日も、ゆっくり、確実に」

広場を離れると、パン屋の香りが街の端から薄く流れてきた。

焼きたての甘さが疲れを軽くして、表面の塩が蜂蜜色の夕方に似合っている。

マリアは目を閉じて「幸せ」と噛み、セリアは二つ目の前でほんの少しだけ迷ってからしっかり手に取り、リリィはゆっくり味わって「……好き」と小さく言い、ケイルは「数字は百」とふざけて、家令が「数字はあとから」と照れ笑いした。

笑いは布だ。

布は重くない。

重くない布は、明日に続く。


ベンチに座って空を見上げると、薄い雲が布みたいに広がって、風がその上を優しく撫でていた。

撫でる風は、荒くない。

荒くない風は、長持ちする。

長持ちする風は、城に向いている。

俺は静かに口を開いた。

「今さら戻れと言われても遅いんだが」誰に言ったわけでもない。

言葉は自分の胸に座って、それからゆっくり空へ上がっていく。

マリアが肩をぶつけて笑い、セリアは目を閉じて頷き、リリィは唇の端を上げ、ケイルは少しだけ優しく「知ってる」と言った。

家令は何も言わず、ただ頷いた。

頷きは布だ。

布は重くない。

重くない布は、長く効く。


王城の鐘がひとつ鳴った。

新しい依頼の合図ではない。

時間の知らせだ。

時間は布だ。

布は重くない。

重くない布は、明日に続く。

俺は胸の奥で静かな約束をもうひとつ重ねた。

明日も、落とさない。

ゆっくり、確実に。

数字はあとからついてくる。

今は、それで十分だ。

城門前の行列で角を丸くした日、俺たちの笑いは小さくて、でも確かだった。


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