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パーティを追放された俺、なぜか女だけの最強ハーレムパーティを作っていた  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)


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第13話 王城の庭で芽吹くもの

第13話 王城の庭で芽吹くもの

朝の王城は、昨日の雨をすっかり飲み込んで、庭の草木が瑞々しく光っていた。

噴水の水面には小さな虹がかかっていて、石畳の隙間からは新しい芽が顔を出している。

祭りの余韻もまだ残っていて、城下からは子供の笑い声が風に乗って届いていた。

こういう朝は、歩くだけで心が軽くなる。

俺は数珠の留め具に指を乗せて、胸の奥の呼吸をひとつ整える。

ゆっくり、確実に。

いつもの合図だ。


「ユウマ!」マリアが庭の花壇から手を振ってきた。

金色の髪が朝日に照らされて、花よりも明るい。

「見て見て! 昨日まで咲いてなかった花が、もう咲いてるの。

雨のおかげかな?」

「雨は布だ。

布は重くない。

重くない布は、芽を守る」と俺は笑った。

セリアが横に立って、花壇を冷静に見つめる。

「理にかなっている。

雨は角を丸くする。

丸くなった角は、芽を押さえない。

だから芽は出る」

リリィは少し離れた場所で剣を磨いていた。

彼女は顔を上げて、「芽は、剣より強いときがある」と短く言った。

ケイルは杖を肩に担いで、「俺は芽を焼かない」と冗談めかして笑った。

焼かないのは偉い。

偉いけれど、笑える。

笑えることは、庭に向いている。


庭の奥から、王城の侍女が駆けてきた。

息を切らして、俺たちの前で立ち止まる。

「支援魔法使い殿! 庭の奥にある古い温室で、空気が重くなっていると報告がありました。

王が、あなたに見てほしいと」

「温室?」マリアが目を輝かせる。

「花いっぱい? 行こう行こう!」

セリアは頷いて、「温室は湿度が高い。

湿度が高いと、匂いが奥に沈む。

沈むと、呼吸が乱れる。

整える必要がある」と淡々と告げる。

リリィは剣を収めて、「私が入口を守る」と短く言った。

ケイルは杖を肩に乗せ直して、「俺は火を弱める。

温室は火が強いと死ぬ」と真面目に言った。

珍しく真面目なケイルは、少し頼もしい。


温室の扉を開けると、湿った空気が一気に流れ出した。

花の匂い、土の匂い、古い木の匂い。

全部が重なって、少しだけ重い。

重い匂いは、呼吸を止める。

止まった呼吸は、花を弱らせる。

俺は胸の奥でひとつ息を整えて、手のひらの紋に指を座らせた。

ゆっくり、確実に。

焦らない。


「歌、いる?」マリアが小声で訊く。

「いる。

静かに」と答えると、彼女は本当に静かに歌を置いた。

歌は湿った空気に薄い布をかけて、匂いの角を丸くする。

セリアは花の並びを見て、「この列、理にかなっていない。

日差しが偏っている」と淡々と指摘する。

リリィは入口に立って、人の流れを整える。

ケイルは火の灯りを弱めて、温度を落ち着かせる。

誰も騒がない。

騒がないから、早い。


温室の奥に、一輪だけ枯れかけた花があった。

周りの花は元気なのに、その花だけがうなだれている。

マリアが駆け寄って、「かわいそう」と呟いた。

セリアは花の根元を見て、「水が多すぎる」と冷静に言った。

リリィは「抜く?」と短く訊いた。

ケイルは「焼かない」と即答した。

俺は花の前に立って、しゃがまず、触らず、ただ呼吸を合わせた。

水は悪くない。

悪くないけれど、多すぎると重い。

重い水は、布を欲しがる。

俺は花の根元に薄い布を敷くイメージを持った。

布は重くない。

重くない布は、水を少しだけ持ち上げる。

持ち上げられた水は、花を押さえない。

花は、少しだけ顔を上げた。


「ユウマ、すごい!」マリアが笑って肩を叩く。

セリアは「理にかなってる」と短く結ぶ。

リリィは「抜かなくてよかった」と静かに言い、ケイルは「焼かなくてよかった」と笑った。

笑いは布だ。

布は重くない。

温室は布を欲しがる。


侍女が目を潤ませて、「ありがとうございます」と言った。

泣かないのは偉い。

泣くのも偉いけれど、今は泣かない方が偉い。

俺は頷いて、温室を出た。

外の空気は雨上がりで軽かった。

軽い空気は、歩きやすい。


中庭に戻ると、王が立っていた。

軽い上衣だけで、雨上がりの空を見ている。

俺たちを見ると、王は短く笑った。

「温室、助かった。

花は城の呼吸だ。

呼吸が止まれば、城も止まる。

支援魔法使い、優真。

お前の布は、花にも効く」

「布は重くない」と俺は答えた。

「重くない布は、長く効く」

王は頷いて、「数字はあとからついてくる」と短く言った。

ケイルが「ついてくる」と小さく復唱し、リリィは真面目に頷いた。

セリアは「理にかなってる」と冷静に結び、マリアは「花の色、布にしたい」と無邪気に笑った。

俺は数珠の留め具を撫でて、胸の奥にひとつ呼吸を置いた。

今さら戻れと言われても遅いんだが――その言葉は、もう強がりじゃない。

前にしか橋を架けない、静かな約束だ。


噴水の水面が虹を映して、城の石が新しい呼吸を覚えていた。

俺たちの笑いは小さくて、でも確かだった。


読んで下さりありがとうございました!

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再生リスト : https://www.youtube.com/playlist?list=PLmiEOdmheYJxDUTEWff8Qck3VJlS95rzJ

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