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パーティを追放された俺、なぜか女だけの最強ハーレムパーティを作っていた  作者: 自ら(Youtubeで朗読ver投稿中‼️)


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第10話 小広間の言葉は重くならない

第10話 小広間の言葉は重くならない

王城の小広間は、朝より少し暗くて、それが逆に心地よかった。

昼の光が石の壁で柔らかくなって、天井の梁に落ちる影が丸い。

王が「城の言葉に布を敷け」と短く告げたあの話を、今夜はもう少しだけ長く、もう少しだけ丁寧に人前で語ることになったらしい。

大きな演説ではない。

広場で声を張り上げるでもない。

ただ、小広間に椅子を並べて、城の人たちが集まって、王が落ち着いた声で話す。

そういう夜だ。

俺は数珠の留め具にそっと指を乗せて、胸の奥の呼吸をひとつ整える。

ゆっくり、確実に。

場に入る前の合図はいつだって同じで、いつだって効く。


「ユウマ、緊張してる?」マリアがのぞき込んでくる。

金色の髪が灯りの下で小さく揺れて、笑う目はいつもと同じ明るさだ。


「してない。

今日は、騒がない日だ」

「騒がないけど、ちゃんと効かせる、でしょ。

私、静かに歌う準備できてるから」

セリアは柱の陰から広間を見渡して、淡々と口を開く。

「人の並びは悪くない。

椅子の列は理にかなっている。

けれど、入口の近くにだけ角が残っている。

人が入ってくる場所は、布を厚く」

リリィは小さく頷いて、ドアの脇で立つ位置を少しずらした。

「来る人の足が止まらないように、私もここ。

必要なら、並び直してもらう」

ケイルは肩に杖を乗せて、珍しく真面目な顔で笑った。

「俺は今日は撃たない。

撃たないの、嫌いじゃない。

撃ってる時より楽しいかもしれない」

「楽しいの基準がずれてる」とマリアが肩で笑い、セリアは「撃たない日は、見る日」と静かに補う。

ケイルは「見る」と短く復唱して、杖をちゃんと床に置いた。

王城の小広間はそれだけで少し息を整えた。


王が入ってきた。

豪華な衣ではなく、軽い上衣だけ。

年を重ねた顔はやわらかく、しかし目は鋭い。

鋭いのに、刺してこない。

刺さない目は、場を乱さない。

王は椅子に座って、周囲が落ち着くまで言葉を待った。

待つ王は強い。

強いのに派手じゃない。

俺は手のひらの紋を撫でる。

光らない。

光らなくていい。


「あのね、王の言葉、楽しみ」マリアが耳元で囁く。

俺は小さく頷いた。

セリアが目で合図を送って、入口の角に意識を置く。

リリィがさりげなく視線を回して、遅れて入ってくる人に目配せする。

ケイルは背筋を伸ばして、話を聞く準備を整えた。


王の声は低く、よく通る。

「城の言葉は、紙になる。

紙は重くなる。

重くなった紙は、人の足を止める。

だから、紙の下に布を敷け。

針は刺すな。

刺したいときは、布を厚くして、待て。

待てば、角は丸くなる。

歩きやすい城でありたい」

短い言葉が部屋に落ちた。

重くないのに、床に座る。

座った言葉は、動かない。

動かないのに、邪魔をしない。

俺は胸の奥でひとつ息を吐く。

よし。

場は整っている。

整っているときに限って、小さな針が隙間から顔を出す。


入口の近くで、誰かがため息をついた。

深く、重く、わざと聞かせるため息。

聞こえてよかったとでも言いたいみたいなため息だ。

ため息の主は、王城の実務を取り仕切る中堅の役人らしく、肩に小さく自慢が乗っている。

自慢は悪くない。

悪くないが、今は場の角になる。

「紙に布なんて、分かりにくい」と彼は小声で漏らした。

小声なのに、角度がわずかに尖っているから、隣に座る人の耳を刺す。


「ユウマ」セリアの目が俺に向く。

言葉はいらない。

俺は席を立たない。

立てば目立つ。

目立つ必要はない。

胸の奥でひとつ息を整えて、手のひらの紋に指を座らせる。

布の端を、ため息の周りに薄く置く。

置いたことは誰にも見えない。

見えないけれど、ため息はそれ以上尖らない。

役人の肩がわずかに下がった。

刺すため息は、刺さない吐息に変わった。


王は続ける。

「数字は必要だ。

だが、数字は橋の上に立つ。

橋が落ちれば、数字は役に立たない。

支援は、生きるための術だ。

橋は、渡るためのものだ。

城は、場だ。

人は、群だ。

扉は、依頼だ。

鍵は、あなたの手だ」

ケイルが横で小さく笑った。

「鍵はお前の手、って言われたな」

「鍵は私の手でもある」とリリィが真面目に受け止める。

マリアは小さく拍手をして、セリアは目を閉じて頷いた。

王の言葉を受け止める人の呼吸が揃っていく。

揃う呼吸は、場を強くする。

強いのに、静かだ。


役人がまた小さく動いた。

今度はため息じゃない。

椅子の位置をずらして、隣の人に話しかける気配だ。

「布よりも、剣で切れば早い」その言葉は、仕事の現場では正しい時もある。

けれど、今ここでは角だ。

角は尖る。

尖ると、誰かの足が痛む。


俺はそこへ布を重ねる。

重ねると言っても、何かを覆い隠すわけじゃない。

言葉の周りに、歩幅の合図を置くだけだ。

歩幅を合図すれば、走る人も少しだけ歩いてくれる。

「剣で切る」には「いつ切るか」「どこを切るか」「切ったあとの布はどうするか」を静かに想像させる。

想像は、角を丸くする。

役人の声は次の言葉を探して迷い、結局、言わないで終わった。

言わないことは悪くない。

言えないことではない。

言わない勇気もある。


王は短い間を置いて、再び口を開いた。

「お前たちの仕事は、紙を増やすことだけではない。

紙を軽くすることだ。

重くなった紙は、歩きにくい。

軽くなった紙は、歩きやすい。

歩きやすい城は、強い城だ」

「紙を軽くする……」書記官の少女が、最前列で目を丸くする。

「私、筆圧が強いっていつも言われる。

軽く書く、難しい」

「難しいけど、できる」とセリアが短く言う。

彼女は軽さの作法を知っている。

「字は同じでも、呼吸が違う。

呼吸を軽くすれば、字も軽くなる」

マリアがそっと手を挙げた。

「王さま、歌でも紙は軽くなる?私、歌うの、好き」

王は笑って、短く頷いた。

「歌は布だ。

布は紙を傷つけない」

広間の空気は柔らかい。

柔らかいからといって、緩むわけではない。

柔らかい場の方が、言葉はよく座る。

座った言葉は、邪魔をしない。

俺は胸の奥でひとつ息を吸って吐いて、入口の角をもう一度だけ撫でる。

入ってくる人の足音が揃う。

揃った足音は、気持ちいい。


そのとき、扉がひとつだけ強く開いた。

勢いのある若い騎士だ。

顔は真面目で、目は少し熱い。

熱い目は、悪くない。

ただ、場に強い熱は合わないことがある。

「王!」彼は声を上げてしまった。

上げてしまった、と自分でも分かった瞬間に、熱が恥ずかしさへ形を変える。

恥ずかしさは尖りやすい。

尖る前に布を敷く。


「落ち着いて」とリリィが先に声をかけた。

彼女の声は静かで、まっすぐで、強すぎない。

騎士は足を止めて息を整えた。

王は首を傾げて笑った。

「話してみよ」

「城門で、子供が転びそうになりました。

石の段差に……」騎士は勢いを失った声で続ける。

「私、石をならした方がいいと家令に言いに行ったけれど、すぐには動けないと。

数字の優先順位が違う、と。

私は、……布の話をしようと思ったのですが、うまくできなくて」

王は微笑んで、「布を敷け」と短く言った。

家令が入口の脇で苦笑する。

「敷きます。

数字の優先順位に布の列を足します」彼は昨日の夜、針を抜いた人だ。

針を抜いた人は布を覚える。

覚えた布は、重くない。


騎士は肩の力を落として、「ありがとうございます」と言った。

彼はまだ若い。

若いのに、恥ずかしさから戻るのが早い。

戻るのが早い人は、強い。

強さは派手じゃない。

俺は胸の奥でひとつ息を整えて、入口の角をもう一度撫でた。

場は落ち着いた。


王は話を締める。

「歩きやすい城でありたい。

紙は軽く。

針は刺さず。

布を敷け。

数字は、あとからついてくる」

「ついてくる」とケイルがまた小さく復唱する。

彼は悪ふざけに見えるけれど、場に合わせて声の大きさを変えられる男だ。

セリアは目を閉じて「終わった」と結ぶ。

マリアは手をつないで「王さまの言葉、好き」と素直に言い、リリィは「私も」と静かに乗せた。


話が終わっても、誰も急がない。

椅子の足が床で擦れる音が小さく、足音が揃っている。

入口の角は丸いままだ。

俺は手のひらの紋を撫でて、胸の奥にひとつ呼吸を置いた。

落ちない。

落とさない。

今日も、それだけでいい。


広間の隅で、役人がひとり立っていた。

さっきのため息の人だ。

彼は自分の胸をさすって、目を閉じていた。

針はもうない。

あるのは、少しだけ重い紙だ。

重い紙は軽くすればいい。

俺は近づいて、声を落とす。

「紙、重い?」

「重いです」と役人は正直に言った。

「仕事の紙は増えていく。

減らすのは、怒られる。

増やした紙を、軽くするなんて、どうやればいいのか……」

「紙は、言葉の束だよね」俺は笑う。

「束の順番を変えるだけで、軽くなる。

重い言葉は下に、軽い言葉は上に。

重い紙は、布の上に。

布は、怒らない」

役人は目を見開いて、やがて小さく笑った。

「やってみます」

「やってみよう」とセリアが横から声を重ねる。

「理にかなっているはず。

理にかなっていないなら、理の並べ方を変えればいい」

リリィはまっすぐ頷く。

「怖いなら、怖いって言って。

並ぶ人がいる」

ケイルは肩を叩く。

「数字はあとからついてくる。

怒られたら、俺が笑わせてやる」

マリアは役人の袖を引いて、「布の色も選ぼう」と意味の分からないようで分かることを言って笑った。

役人の顔に、少しだけ朝の市場みたいな色が戻る。

色が戻ると、紙も軽くなる。


王が席を立って、俺たちの前で足を止めた。

「支援魔法使い、優真」

「はい」

「王城は、お前のやり方で歩きやすくなる。

焦らず、落とさず、静かに整える。

お前は、鍵だ。

鍵は扉を開ける。

扉は依頼だ。

扉の向こうに布を敷け」

「敷きます」と俺は短く答えた。

言葉を長くする必要はない。

王の言葉は短いけれど、重くない。

重くないから、長く効く。


小広間を出ると、廊下の灯りが少し明るくなった気がした。

灯り自体は変わっていない。

変わったのは、空気の角だ。

角が丸いと、光は強く感じないのに、よく見える。

よく見えるから、足が止まらない。

止まらないから、歩きやすい。


「ユウマ」リリィが袖を引いた。

「今の王の言葉、紙にする?」

「紙にする。

でも、軽くする」

「軽くするって、難しいね」

「難しいけど、やる」

マリアが俺の反対側の袖を引っ張る。

「パンの前に、タルト!」

「タルトは二つまで」とリリィが線を引き、セリアは「二つまでが理にかなってる」と冷静に背中を押す。

ケイルは「俺は三つ」と宣言して、笑いが広間の外へ流れ出す。

笑いは布だ。

布は重くない。

重くない布は、長く効く。


中庭へ出ると、夜風がやわらかかった。

噴水の水面は静かで、城の石は今日も呼吸している。

俺は数珠の留め具を撫でて、胸の奥でひとつだけ言葉を思い出す。

今さら戻れと言われても遅いんだが——言う必要はない。

もう、みんな知っている。

俺が前しか見ていないこと。

俺が橋しか架けないこと。

俺が落とさないこと。


パン屋の灯りは暖かくて、焼きたての香りが夜の空気に溶けていく。

マリアは目を閉じて「幸せ」と言って噛み、セリアは二つ目の前でほんの少し迷ってからしっかり手に取り、リリィはゆっくり味わい、ケイルは「数字は百」とふざけ、俺は塩気だけを舌に乗せて静かに息を吐く。

支援は、生きるための術だ。

橋は、渡るためのものだ。

城は、場だ。

人は、群だ。

扉は、依頼だ。

鍵は、俺の手だ。


王城の鐘がひとつだけ鳴った。

新しい依頼の合図ではない。

時間の知らせだ。

時間は布だ。

布は重くない。

重くない布は、明日に続く。

俺は胸の奥で静かな約束をもうひとつ重ねた。

明日も、落とさない。

ゆっくり、確実に。

数字はあとからついてくる。

今は、それで十分だ。


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再生リスト : https://www.youtube.com/playlist?list=PLmiEOdmheYJxDUTEWff8Qck3VJlS95rzJ

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