チームガレージに行ってみよう!
――翌日の放課後。
今日は一年生レースが目前に迫っていることもあって通常授業は行われず、シミュレーションとミーティングを徹底的に行っていた。
今日のシミュレーションでは実際に予選と本選で使用する作戦の確認がメイン。
前の合同シミュレーションを元に変更した作戦を浅桜さんと確認していた形となる。
「……はぁ、疲れた」
長いようで短い一日が終わって、私は大きく息を吐き出した。
ホームルームが終わって、クラスメイト達は束の間の談笑をしている。
放課後にも、今回のシミュレーションで得たデータを元にミーティングをすることになっていた。
少ない時間だったとしても、クラスメイトとの雑談を楽しんでいるようだった。
「巴月、ちょっといいか?」
「ん、カガコーじゃん。えっと、何か用事?」
荷物をまとめていた私に、背後から声がかかる。
振り返るとカガコーが少し神妙な顔つきをしていて立っていた。
返事をした私に、カガコーは言葉を続ける。
「放課後のミーティングのあとなんだが、お前時間あるか?」
「時間? んー……無いことはないけど、どうかしたの?」
要領を得ないといった私の様子に、カガコーは頭の後ろをガシガシとしながら言葉を付け加える。
「ちょっとな。浅桜のマシンの調整について、意見を聞きたいんだ。そんなに時間は取らせないから、ミーティング終わりにチームのガレージに来てくれると助かるんだが」
「アタシのマシン?」
と、そこに浅桜さんが割って入ってくる。
すでに背中にはカバンを背負って、ゼリータイプの栄養補助食品を口に加えていた。
「お、浅桜か。ちょうど良いところに来たな」
「ちょうど良いところ?」
カガコーは頷く。
「お前のマシンの調整に関して意見が欲しいんだよ。それで巴月にミーティング後に時間があるかを聞いてたんだ。もし暇なら、巴月と浅桜の意見が貰えると助かる」
「調整……」
顎に指を当てて、浅桜さんは思案する。
何か用事でもあったのかな?
「もし時間がないなら、私だけで行くよ? 自主練とか他の用事があるなら、そっちの方に行ってもらっても大丈夫だし」
「いや、行くよ。本番前のトレーニングはオーバーワークになってしまうから、今日は休もうと思ってたところだから」
浅桜さんの言葉に、カガコーは「お、じゃあ決まりだな」と笑みを浮かべる。
「そしたら、ミーティングが終わり次第、チームのガレージに来てくれ」
「分かった。勝手に決めちゃったけど、巴月さんはそれで大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
私と浅桜さんの了承を確認して、カガコーはくるっと背中を向けて整備科の生徒の方へ戻っていった。
「それじゃあ巴月さん、ミーティング後に集合! 遅刻厳禁だからね!」
「分かった。そっちもねー」
浅桜さんはそう言い残すと、くるりと身を翻して教室の出口へ歩いていった。