49.【犠牲(sacrifice)】
彼女の家に連れて行って貰った。
彼女の母親と、彼女の娘が寝ていた。
いや、死んでいたのだ。
「殺したの、私が。殺してくれと言われたから。」俺は、気が狂っている人だったかと思った。
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
ここは、『擬の国』。
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
俺には聞こえる。殺してくれ、と。
どこの次元でも聞こえている。
跳んで来たのは、洞窟のようだった。
表に出ると、女性が砂浜を歩いていた。
私を見ると、服を脱ぎ始めた。
「いや・・・。」私が両手で、止めるような仕草を見せると、「ああ、じゃ、脱がして。幾ら貰えるの?1日の食料分だけでいいわ。」と、投げやりに言った。
少し戸惑ったが、「旅行者だが頭を打ったらしく、よく覚えていないんだ。」と俺は言った。
彼女の家に連れて行って貰った。
彼女の母親と、彼女の娘が寝ていた。
いや、死んでいたのだ。
「殺したの、私が。殺してくれと言われたから。」俺は、気が狂っている人だったかと思った。
「気は狂っていないわ。彼らは、レイプしたの。私の母を。そして、娘を。私が動けないようにして。目を閉じないようにして。楽にしてあげるのは、それしか無かった。コレでも女医だったから、血があまり流れないように殺すことは出来たわ。」
「何故、その・・・彼らは?」
「私が拒んだから。娼婦のようにレイプされるのを母達に見せようとしたの。私が逆らったら・・・。」
「逆のことをされた、か。」
俺は、自分の正体を明かした。
「アンタの声が多分、引き寄せたんだと思う。状況を話してくれ。隣国人に支配されたのか?」
「そう。男は皆奴隷労働。女は性労働、いや、性のオモチャ。好きな時に飽きるまで遊ぶ道具。原因は、隣国人絶対優遇政策をした、宝貝進。彼がこの国のトップ、大総領。彼は、隣国乃愛の国の、通称『竜宮城』に行ってから、考え方が180度変わった。友人の大臣石動もね。彼は、ある日、世界に向けて発信したわ。『先の大戦争の責任は、全て、この『擬の国』の責任だ。そして、隣国乃愛の国に従属し、末代まで民族ぐるみで償い続ける、と。』
「皆、それに従っていたの?」「途端に、警察、自国救助隊の鎮圧が始まった。この日の為にスパイが大勢送り込まれていた。スパイで無い警察官、自国救助隊員は皆殺しにあった。新聞社、テレビ局、皆スパイか乃愛の国信者に乗っ取られていたから、乃愛の国の『立ち上がれ法』によるクーデターは、暫く外国のメディアも気づかなかった。そして、気が付いた時は、国のあらゆる場所が占領されて行った。学校は、乃愛の国語の教育が始まり、この国の言葉も奪われて行きつつある。彼らは、私達『擬の国』民族を『下賤民』と呼び、蔑んでいるわ。毎日のように旧政府の政治家や事務員は『料理』されたわ、野蛮人達に。媚びへつらうことで『お目こぼし』や『贅沢な生活』を夢見ていたのに、ただの『内蔵収納道具』になり、生きることも奪われ死ぬことにも制限が加わることになるなんて、ね。」
「アンタが生き残ったのは女医だからか・・・まさか?」
「そうよ。私は、政府のお抱え『オペ』レーター。生きることも死ぬことも彼らの気分次第。」
俺は腕時計を握って念じた。
俺は、大総領が『核爆弾』発言をする前に跳んだ。
彼が『会場』に行く前に、遭った。
彼に『未来』を見せてみた。
彼は『闖入者』を追い払え、と喚いた。
俺は腕時計を握って念じた。
乃愛の国。『接待の間』に通される前、彼に『未来』を見せてみた。
「ただの接待じゃないか。貴様は誰だ!変な手品にはかからないぞ。」
俺は、『変な手品』で彼を跳ばした。
ある家の茶の間。
「数子。病院行く時間じゃないの?」母親の育子が言った。
数子はテレビのニュースを見ていた。
ニュースでは、行方不明だった、大総領が北極海の流氷に乗っている光景が映っていた。
「あの人、何で、あんな氷の上で寝ているの?ママ。」
「神様のいたずら、よ。」
俺は、数子の笑顔を初めて見た。綺麗な笑顔だった。
もう、跳ぶ時間かな?
―完―
「気は狂っていないわ。彼らは、レイプしたの。私の母を。そして、娘を。私が動けないようにして。目を閉じないようにして。楽にしてあげるのは、それしか無かった。コレでも女医だったから、血があまり流れないように殺すことは出来たわ。」
「何故、その・・・彼らは?」
「私が拒んだから。娼婦のようにレイプされるのを母達に見せようとしたの。私が逆らったら・・・。」
「逆のことをされた、か。」
俺は、自分の正体を明かした。




