39.【魂(soul)】
何か水島さんは、『敗戦の日祈念式典』で話す予定だった、って小耳に挟んだんだけど、やらなかったの?」
「欠席したんですよ。
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
ここは、『魂の国』。
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
俺には聞こえる。殺してくれ、と。
どこの次元でも聞こえている。
「敗戦の日」、今日は8月16日。
え?時間軸がまたまた、ブレた。
前の次元では、式典の直後だったが。
国のトップは『80年前談話』とやらを言ってしまったか。
日付を何故把握出来たか?俺は家電量販店の中にいた。
TVのコーナーまで行き、ニュースで昨日の様子を確認した。
どうやら、この次元では、与党の重鎮が国のトップを思いとどまらせることができたのかな?あのばかばかしい『戦後80年記念談話』を。
長く見ていると、販売員が近寄って来た。
俺は迷わず『南極ぼけ』の話をした。
店員は、にっこり笑って、「新居」に相応しい大型テレビを推奨した。
セールストークで一区切りついたところで、「何か水島さんは、『敗戦の日祈念式典』で話す予定だった、って小耳に挟んだんだけど、やらなかったの?」
「欠席したんですよ。控え室で居眠りして。いやあ、多忙なのは分からなくもないが、大事な式典で既に居眠り3回してますからねえ。皆、肩撫で下ろすと同時に、またかよ、って感じです。もう落ちる所まで落ちたなあ。安房野元総会大臣だった頃がピークだったなあ。で、お支払いは?」
俺は財布の中身をチェックする振りして、「いけない。クルマにおいてきちゃった、クレジットカード。ちょっと、取って来ますね。」と言い、エレベーターに向かった。
「お待ちしております。」と、販売員は深々と頭を下げたが、俺はエレベーターに乗ると、すぐ上の階で降りて、別のエレベーターで一階に向かった。
ふと見ると、ゴミ箱に新聞の号外が突っ込んであった。
記事を見ると、『とうとう、代表選挙前倒し』という大見出しが見えた。
じゃ、もう俺は用なしかな?と思っていたら、黒ずくめの集団が信号待ちしていた人々を浚った。俺もである。
女子中学生らしき少女が泣いている。「買物に来ただけなのに。」
もっともだ。
ある山中。巨大な太陽光パネル。所謂メガソーラーの下に基地はあった。
何の基地か?
ご丁寧にも、入口に看板があった。
『魂の国統治完東本部』、と書いてある。
まるでSF映画だ。
入口を入ると、案内標識があった。標識の方向に、その部署があるという訳だ。
『収容課』と書いてあるソレに従って、俺達は『連行』された。
「『魂の国』を嫌いながら、真似ばかりしている。独創性なんか無い。沙流の国らしいわ。」と、女子中学生は吐き捨てるように言った。
女子中学生は、政治家香川宗佑の大姪、香川俊子。詰まり、たまたま信号待ちしていたのではない。彼女を浚う時に、丸ごと集団拉致されたのだ。
俺達は、何部屋かの『収容室』と呼ばれる部屋に幽閉された。
臭い。それ以上は語るまい。
彼女の連れて行かれた部屋で、彼女はすぐに全裸にされた。
撮影機器がすぐ側にある。
俺は、ある細工をした。
9月30日。国家安全疑似堂の側にある。与党臣民党の『臨時代表選』が行われた。
TVの生中継が行われた。
代表候補者は、現職柴本茂雄、そして、香川宗佑。他の候補者は既に辞退していた。
新代表は、すぐに決まった。香川宗佑だ。
香川は、その場で剤務省関係者50人を更迭、刑事訴訟の手続きを行った。野党関係者も逮捕連行された。
生中継の最中、ある映像がTVを通じて流れた。
隣国人、野党関係者、与党の関係者、剤務省関係者による『集団〇〇』の様子だった。
そこに現れたのは、香川と香川のSP達だった。
事件に携わっていない、臣民党議員の何人かは柴本に票を入れなかった。
実際は、俺が作った虚像だ。俊子も、巻き添えで拉致された人々も、いつの間にか消えていた。
夜。香川家。
「南極ぼけの話なんかしてゴメンね、俊子ちゃん。」
「いいの。オジサンは、気落ちしないように慰めてくれている、と思っていた。」
「どうやって、映像を作ったのか知らないが、俊子は本当にレイプされかかったんですか?」
「ええ。貴方は、所謂マネトラ・ハニトラに填まるひとじゃなかった。だから、洗脳するか強請るしかなかった。あなたは、洗脳にも負けなかった。暗殺された盟友と同じようにね。俊子ちゃんが俺を呼んだのかと思ったが、案外、貴方の盟友の魂が呼んだのかもしれない。この次元の、この国は、お任せします。」
俺は、姿を消した。
「大叔父様。魔法使いって、本当にいたのね。」
「魔法使いじゃない、『神様』だよ、俊子。」
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
俺は、神様じゃない。強いて言えば、神様が作った『修理屋』だ。
さあ、次の世界が待っている。
―完―
俺は財布の中身をチェックする振りして、「いけない。クルマにおいてきちゃった、クレジットカード。ちょっと、取って来ますね。」と言い、エレベーターに向かった。




