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36.【がんじがらめ(Tied up】

彼は高齢者に謝罪し、高齢者を売り場に返した。

帰って来た俺は、「危なかったね。バッグに穴が開いていたら、『未遂』だよ。俺が売り場に返しておいた。」と言った。


 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ここは、『智の国』。

 俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。


 俺には聞こえる。殺してくれ、と。

 どこの次元でも聞こえている。


 跳んで来たのは、とあるスーパー。

 ある高齢者が自分のバッグに商品を入れた。

 所謂、万引きGメンに見つかった。

 警備員室に高齢者は連行された。

 だが、商品は万引きGメンがバッグを逆さにしても出てこなかった。

 バッグは穴が開いていた。


 彼は高齢者に謝罪し、高齢者を売り場に返した。

 帰って来た俺は、「危なかったね。バッグに穴が開いていたら、『未遂』だよ。俺が売り場に返しておいた。」と言った。


 近くのファミレス。

 高齢者は、何日も、いや、何食も食事をしていない様子だった。

 俺は、南極ぼけの話をした。

「それは、どうもご苦労様でした。」

「それで、世間の様子を聞く相手を探していたんだ。」


「今ね。あ、岩酢水さん。大変なことになっているんですよ。」

 彼は堰を切ったように話し出した。

 この国、『智の国』の外事省の事務次官が殺された。

 最初、政府は自殺と発表した。

 だが、その直後、SNSで彼の『遺書』機密文書が公表された。

 彼は、隣国「器の国」のみを交易の優先国にする書簡を目にして、世間に告発することにした。

 その『契約書』は30年前のものだった。

 もし自分が死んだら、殺されたと思って欲しい。『遺書』には、そう書かれていた。

 その公文書のコピーは、隣国「器の国」以外の大使館、領事館に届いた。


 政府は、特に外事省巻僚や外事大臣は、取り繕うとした。

 その公文書には、『智の国』の各新聞社が「器の国」メディアに対して『漏れなく』ニュースを共有する、という趣旨の『宣誓書』も含まれていた。

 詰まり、外事省主導で、メディア連携をする約束の文書だった。


 政府は、『外国人ファースト』を『共生』という言葉で誤魔化していた。

『共生』は、『強制』であり、『寄生』だった。

 各地で、外事省解体デモが起こった。

 大規模なデモや運動にも拘わらず、メディアは一切報道しなかった。

 メディアは、漏れなく政府巻僚の『天下り』であった。

 その高齢者もデモの参加者だった。

 高齢者はリーダーでは無いにも拘わらず、取り調べを受けた。

 帰宅すると、家は焼失していた。

 消防は『火の不始末』と発表した。


 高齢者は、捕まるのを覚悟で万引きしようとしたのだ。

『監獄』を『終の棲家』にする為に。


 俺は、次官が暗殺された時間軸に跳んだ。

 次官の家を、数人の男が訪れた。

 男達の1人がチャイムを鳴らした。

 応答がない。


「チャイム、壊れているそうですよ。」

「あんたは?」

「ああ、これきり生命の岩酢水と言います、どんぞよろしく。」と、俺は名刺を配り、家の中に入った。


 半時間後、男達は押し入った。次官はいなかった。

 男達の1人が名刺を見た。『枯葉』だった。

 男達が出てくると、警察官に現行犯で逮捕された。


 野次馬の1人が、「特殊詐欺らしいよ』と言った。


 あのファミレスに、俺と次官はいた。


「あの文書が盗難にあった時、あんたは、この国にいなかった。日記以外の文書は、外国人記者が告発した。退官する?」

 次官は頷いた。

「俺が出来るのは、ここまでだ。ここの勘定と、後の事は頼むよ。」


 トイレに行った俺は、再会せずに跳ぶことにした。


 俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。


 書類一枚で『拘束』。お役人はやはり、頭が堅いな。ああ。ブンヤもか。


 ―完―




高齢者は、捕まるのを覚悟で万引きしようとしたのだ。

『監獄』を『終の棲家』にする為に。


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