表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

「恋じゃないけど、隣にいてほしいの」

「カメラは空も、君も映す」

作者: 七星ぺろり

【おはなしにでてるひと】

瑞木 陽葵みずき・ひより

昼休み、校舎の屋上。

ひこうき雲が一本だけ、白く伸びていて、

それがなんだか“いい感じの被写体”に見えた。

――誰に見せるでもないのに、思わず言葉があふれるのは、

その空を“わたしの大切な何か”に変えてくれるから。


荻野目 おぎのめ・れん

屋上のドアを開けたら、

スマホを構えながら空に話しかけてる陽葵の姿。

その光景が、あまりにも“らしくて”、

自分のスマホを静かに構えた。

――この一枚は、心のアルバムにも入れておきたくて。


【こんかいのおはなし】

昼休み、

屋上の柵にもたれかかって、

空を見上げていた。

 

真っ青な空に、

白いひこうき雲が一本だけ。

 

スマホを取り出して、

構えて、

そっとつぶやく。

 

「……いいね」

 

カシャ。

 

「すばらしいよ」

 

カシャ。

 

「ここのアングルからの君も、素敵だよ~」

 

カシャ。カシャ。

 

自分でも、ちょっと笑っちゃうくらいテンション高め。

でも、空って、たまに“言いたくなる空気”になるんだよね。

 

「……なんのポートレート?」

 

背後から、静かな声。

 

「わっ!?ちょっ、いつ来たの!?」

 

「ちょうど今」

 

蓮が、スマホを持ったまま、

屋上のドアから出てきて、

そのまま私の方を見てた。

 

「モデルに語りかけながら撮影って、

なかなかの上級者だな」

 

「や、これは……空がさ、ちょっといい顔してて……」

 

「うん、知ってる。

……陽葵も、いい顔してた」

 

「……なっ、なにその台詞。誰の影響?」

 

「本能」

 

そう言って、蓮はスマホを構え――

 

カシャ。

 

「うそ、撮った!?」

 

「今の顔、保存価値あり」

 

「だ、だめっ……変な顔してたかも……」

 

「大丈夫。

“この空の下、いちばんいい顔”してた」

 

ふたり、

顔を見合わせて、

ふっと笑う。

 

そのとき、

校内放送のチャイムが、

昼休みの終わりを告げた。

 

「……じゃ、教室戻ろっか」

 

「うん……でも、消してね?その写真」

 

「ごめん、クラウド同期済み」

 

「わたしの照れ顔、世界に飛んでったの!?」

 

「世界どころか、

俺のフォルダ直行です」

 

「やめて~~~!!!」

 

そんな笑い声と、

まだ残るひこうき雲と、

昼休みの名残りの光。

 

シャッターよりも静かに、

ふたりの“今”が刻まれていく。


【あとがき】

ひこうき雲を“モデル”として扱う陽葵、

そして、その陽葵を“被写体”にしてしまう蓮。

この視線の連鎖こそが、

青春の“ささやかな奇跡”なんですよね。

空と笑顔が重なった、昼休みのグラデーション、どうぞ焼きつけてください。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ