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第八話 修学旅行

 あれからも毎日死者を出した。毎日休まることなく。

 正直、あれから謎の究明に関しては全く成果を得ることは出来なかった。

 だが、時間は着々と過ぎ、そのたびに死傷者が出る。

 その度に心が痛んだ。ああ、私は無力だと。

 それにあれからたびたび嫌な夢を見た。

 死神に関する夢を。



 だけど、修学旅行がやってきた。まだ何も課題は解決していないが、難しいことは忘れて楽しもう。

 そう思う。


「さあ、楽しむぞー!!!」


 由美が空港でそう叫んだ。それを彩香が、「早いって」と、頭をごつく。今日もいつも通りだなと言う思いで、それを傍観していた。だが、私自身心はこれからの旅行に対するわくわく感で満ち溢れていた。


「さあ、皆。楽しもう! だが、その前に楽しむために複数個確認しときたいことがある。絶対に羽目を外し過ぎるな。これだけは言っておきたい。もし、君たちの誰かが途中ではぐれたら、それが先生たちが嫌なことだからな。それともう一つ、絶対に周りの人たちに迷惑をかけてもいけないし、絶対に、問題行動は起こすなよ。宿でも暴れ過ぎは厳禁だ。あくまでも学生らしく楽しむように……では日程と持ち物の確認だが……」


 そんな長ったらしい先生の話が始まって行く。もうわかってるってと言いたい気持ちだが、この説明も修学旅行の一部だと思ったら、これも醍醐味かと思った。

 そして、飛行機に搭乗する。


「隣の席だね、愛華」

「そうだね、由美」

「綾香は可哀そうだったね」

「うん。一人だけ、別の席で……」


 そして後ろを振り向く。私と由美は入り口付近だが、彩香だけ後ろの方の席だ。しかも隣は拭き担任の女性の先生だ。

「まあでも二時間後には会えるしね」

「うん。そうだね」


 そして飛行機の中では、一つ映画を観た。有名アニメ映画だ。二人でその感想会をしていると、楽しくて仕方がなかった。そして沖縄に着いた。


「くそ、お前たちだけずるい!」


 そう、早速彩香に言われた。そんなこと言っても運なんだからどうしようもないというのに。


 そしてそこでも色々と長い話を聞いた後、早速一つ目の目的地、鍾乳洞に着いた。


 鍾乳洞、そこには大きな洞窟だ。石灰石が地下水などによって溶けて出来たそうだ。

 そこの光景に感極まったが、二人は興味がないようだった。綾香に関しては、「愛華いこーぜ」とばっかり言っている。


 まったくここで一時間くらいいる予定になっているのに。その旨を言ったら、


「私が楽しみにしてるのは明日の海だから。あ、バナナボートっていうやつね」


 前言ってたやつか。


「由美は?」

「私も!」


 はあ、こいつらは本当。自然よりアトラクションじゃん。


「だから一日目で体力を使うわけには行かないんだよ。ね! 由美」

「うん!」


 全く。こいつら。鍾乳洞の自然の豊かさを感じ取ってよ。


 そして、二人の有言実行通り、一日目は大分緩い感じで回った。

 他のいくつかの観光地も二人はそこまで興味がなさそうだった。

 今日は海に入らない予定だったし、仕方がない。他の三日間が勝負だ。


 そして宿に戻った。

 宿は大きめのホテルで、三人一組で止まるらしい。つまり私たち三人で泊まることが出来る。


 宿について一息ついていると、急に死角から枕が飛んできた。


「ねえ、枕投げしよ? 彩香、愛華」

「いいね!」

「するなら、合図してからしてよ」


 そして私は弓に向かって思い切り枕を投げつける。それが弓の顔面に思い切り当たり、その勢いで、由美がベットから落ちる。


「やったね」

「そっちからしてきたんでしょ?」

「私のこと忘れんなよ!」


 彩香が枕を投げる。私に向かって。そして私も仕返しとばかりに彩香に投げ、枕投げはカオスと化した。


「ハアハア、疲れた」

「こんなに運動したの久しぶり」

「そうだね。由美、愛華。楽しいな」

「そうだね……醍醐味って感じがするよ」

「じゃあ、明日もしようぜ」

「いいね。それ。私も賛成。由美は?」

「私も!」


 そして私たちは色々話し、そのまま寝る。今日の疲れをいやすために。ベッドはダブルベッドならぬトリプルベッドで、それぞれ三人で引っ付いて寝るようになっている。

 私たちは仲がいいからいいけど、ぼっちの子とか気まずいだろうなと、思った。それは私たちには関係ないけど。



 その日の夜。私は夢を見た。悪夢だ、それはまさに私が人を殺している夢だった。なぜこんな夢を見てしまっているのだろう。私は疲れているのかな?

 それとも、何かのメッセージ?

 確か聞いたことがある。考えていたことが夢に現れると。まさに今の状況がそれなのだと思った。夢と自認しているから夢を終わらすのは簡単だった。

 すぐに意識を閉ざすことが出来た。





 翌朝、私は生ぬるい感覚がした。手をふと上にやる。すると、そこには赤い液体がついていた。


「きゃああああああああああああああああああ」


 私は叫んだ。人生で一番の大声だろう。

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