98、孵卵器
朝、子供達のキャッキャと楽しそうな声で目が覚めた。
「ふぁーっ……」
いつもより起きるの遅かったのかな?と、時計を取り出し見てみると、いつもより早い時間だった。
……あれ?じゃぁ子供達が起きるの早いのか?何してるんだろ?
ベッドから抜け出し、身支度を整え様子を見に外に行くと、昨日リオが作った遊具で遊んでいた。
「おはよぉ」
「「あ、リオ、おはようー!」」
まだ空も白み始める少し前、若干薄暗い中なのに子供達は元気いっぱいだ。
外のアスレチックやブランコで遊んでいる。何時から遊んでいたのだろうか?
年上の子供達も、アスレチックの近くに置いていたテーブル席でリバーシーとバランスタワーをしていた。
「朝からみんな元気だね」
「うん!早く遊びたくて、早起きしたの!」
「そうなんだ。遊具気に入ってくれたみたいで良かったよ!気をつけて遊んでね!」
「「はーい!」」
良かったと言いつつも、起きるの早すぎだろうと欠伸を漏らし、食堂の方に向かう。
「「リオ様、おはようございます」」
「みんな、おはよぉ」
食堂に行くと、料理を担当してくれている奴隷のロレナ達が挨拶をしてくれた。
「子供達もう外で遊んでたよ。めっちゃ早いよね」
「はい。私達が起きた時にはもう起きていましたよ」
「え?!」
「余程、外の玩具を気に入っていらっしゃるのでしょうね」
「それにしても……メリナ達より早起きって……」
「ふふ、今日は疲れて、お休みになるのも早いかもしれませんね」
「そうだね。昼間の仕事も無理しないように見といてもらうよう伝えとかなきゃ」
「そうですね」
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リオは朝食を食べ終わると、牛と鶏の様子を見に行く。
ウィリーとジョシュも行くところだったので一緒に向かった。
2人は鶏小屋に入り、卵があるか確認してくれる。
「今日は3つ卵がありますね」
「わぁー、ちゃんと産んでるんだね!」
「リオ様がフランキ?という物を作ってくださると聞いたのですが……?」
「あ……忘れてた……」
ちょうどその時サンちゃんも様子を見に来たようで声をかけられた。
「リオ、様子見に来たの?」
「うん。卵、今日は3つだって!」
「昨日は2つだったから増えてるね!」
「サンちゃん、これ有精卵か無精卵か分かる?」
「うん、鑑定したら分かるよ!」
「え!凄っ!じゃぁ孵卵器早くつくんなくちゃ!」
「リオ忙しそうだし、時間ある時でもいいよ?」
「うん!今日は時間あるよ!」
「そうなの?じゃぁよろしくな」
「構造だけもっかい教えて」
「あぁ、えっと、ここがこうなっててこんな感じ」
「ふむふむ……。ありがとう」
「また分かんなかったら聞いて!俺も分かるかわからないけど」
「うん、ありがとう。じゃぁ、牛と鶏よろしくねー!」
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一旦家に帰って今日は孵卵器を作ることにした。
リビングのソファーに座り、テーブルに沢山の紙とペンを取り出しカリカリとデザインと構造を描いていく。
大きさもどうしようかと考える。
鶏は卵が孵化するのに、21~25日かかるみたいとサンちゃんに聞いてきたのだ。
1日に2個ずつ孵卵器に入れるとしたら、最初に入れたのが孵化するまでに25日計算で50個。
3個ずつだと75個だ。
50個入れれるものを2個作ったらいいかな?
デザインが完成すると適度な大きさの物を2個、クラフトで作成する。
それに、中の温度を一定にするための仕組みと、定期的に卵を転がす仕組みを付与しないといけない。
リオがデザインした孵卵器は、下がローラーのようなものがズラリと並んでいるデザインだ。
ローラーとローラーの間に卵を並べられるようになっている。
リオはまだ付与魔術は扱えないので、魔法陣を刻むことにした。
魔石に魔法陣を刻んでいく。熱を発生させる魔法陣だ。温度も36~37度を保てるような陣にしたい。
36~37度ってどのくらい……あ、体温!心臓の辺りの温度ならそのくらいかな?
心臓辺りの温度をキープするように……と。
カリカリカリカリ。
「出来た!……ちょっと発動させててみようかな?その間にもう一個……。」
できたものを、魔力を流し発動させると、もう1つ作り始める。
カリカリカリカリと魔法陣を彫る。
「できた!こっちも一応動かしてみて……と」
次に、孵卵器の下のローラーが一定時間で動くようにしていく。
1時間に1回、90度動くようにって言ってたよね?
木の玉をクラフトし印をつけて上に乗せる。
玉が乗っている箇所のローラー2本をクルクルと回していく。
玉に付けた印が90度動いた地点を覚えておく。
「よし!1時間ごとにこれだけ動くように……」
ローラー1本ずつに魔法陣を刻んでいく。
重力魔術で動かす操作を、時空魔術でタイマーの機能をしてくれるように魔法陣を組む。
よし、コレを刻んで……。
卵は横に10個並ぶように幅を調整し、奥に5列並ぶようにしてある。
ローラー2本の間に卵が乗るような作りなので、5列分でローラーの数は10本だ。
孵卵器は2箱ある。
ローラーの横に刻んでいるがかなりスペースが小さく刻みにくい。
細かい作業に、ちょっと苦戦しているようだ。
数分後……
「はぁー……やっとできた。疲れた……」
これで、ちゃんと動くか魔力を込め、発動させてみる。
……え、これ1時間待たないとダメなんじゃ……。
パタっ……
「はぁぁぁぁぁ……」
しょうがないので1時間待つことにした。
玉を数個木で作り、印をつけて乗せておく。
さっきのヒートの魔法陣を刻んだ物はいい感じの温度になっていた。
こっちは良さそうだね!
どこにつけよう?……蓋につけるのがいいかな?
蓋は中が見えるように手前半分はガラスをはめ込んである。ガラスの奥の箇所を凹ませ魔石を入れれるケースを作る。
……これでいいや!
待ってる間何しようかな……暇だしポーションとマジックバッグでも作ろうかな?
動作確認をする為に1時間も待たなければならなくなったので、暇つぶしだ。
1時間後
カタンッと、音が部屋に響いた。
「お?ちゃんと回ったかな?」
カチャッ
孵卵器の蓋を開けて見ると、中に入れていた木の玉は印がほぼ90度動いていた。
多少ズレてるのもあるけど……まぁ大丈夫でしょう!
よし!
「完成!」
サンちゃんまだ牛のとこいるかな?ちょっと見てもらおう。
出来た孵卵器2つをマジックリングに仕舞い、外に行く。
あ、いた!
「サンちゃーん」
「ん?あ、リオ!どうしたの?無理そうだった?」
サンちゃんは牛のブラッシングをみんなと一緒にしていた。
「出来たよ!」
「は?早過ぎない?」
「ちょっと見てもらおうと思って、持ってきたから見てくれる?」
「うん……」
「ここに出していい?」
「うん、いいよ」
ゴトッと、マジックリングから取り出して、近くにあった台に置いた。
「どう?こんなんだったよね?さっき見せてくれたの」
「おお!凄いな!こんなの!こんなの!」
カチャッと、上の蓋を開け。
「ここにヒーターつけてて、こっちのローラーは1時間毎に中の玉が90度くらい動くようにしてあるよ!」
「へぇ。完璧!早速卵入れててみる?」
「うん。でも、ノアちゃん、料理で使いたいって言うかな?」
「どうかな?でもまだ数が少ないからな……」
「そうだよね。一応、同じの2個作ってて、50個ずつ卵入るサイズにはしたよ」
「……どんだけ孵すの?」
「売れるくらい!」
「あー……売るならそれくらいいるか……」
「それに毎日いっぱい取れるようになったら、ノアちゃんのお店で卵を使った料理も出せるかなと思って!」
「あぁ、それはいいかもね!今はまだハンバーガーもホットドッグも珍しくてお客さん多いけど、数ヶ月もするとみんな飽きてそこまでじゃなくなりそうだし。そのタイミングで新商品出せたら、またしっかり集客出来そうだな」
「うん!しかも卵は珍しいし、あまり売ってないって言ってたよ!」
「へぇー。じゃぁ話題性もあってちょうどいいな」
「うん」
孵卵器はどこに置こうか、と話しながら家の方に向かう。
赤い屋根の家が1番みんな集まるから、そこのリビングか食堂にしようということになりリビングに向かう。
カチャッと、リビングのドアを開けた。
「……ここ、昼間は人いないよね?卵孵った時に気づかないかな?」と、リビングを見渡す。
「んー……なら、食堂の方がいいかもな」
「うん。厨房近いから。厨房にはいつも誰かしらいるもんね?」
「じゃぁ、そっちにしようか」
結局食堂の厨房に近い箇所に、孵卵器専用のテーブルを設置し、そこに置くことになった。
「ここなら通るのにも邪魔にならないから大丈夫かな?」
「そうだね。ぶつかって落としたら卵割れちゃうからね」
とりあえず、3日間で産んだ卵のうち、有精卵の6個を孵卵器に入れてみることになった。
「ふふ、楽しみー。早く産まれないかな?」
「そうだね。産まれた時のために、ひよこを入れる小屋も作っとかないとだな」
「え?鶏小屋じゃダメなの?」
「それがダメみたいなんだよな……」
また保温できるケースが必要なようだ。
産まれたばかりの頃は体温調節が上手くできないようで、暖かくしておいてあげないと死んでしまうこともあるのだとか。
「調べたら
* 0~3日:33℃
* 4~7日:30℃
* 8~14日:27℃
* 15~21日:24℃
* 22日~:12~25℃
って書いてあったから、この温度のヒーター作れる?」
「多っ!……う、うん……頑張る」
今日は鶏の雛の小屋作りで一日潰れた。午後からもずっと作っていたのだ。
1番苦戦したのが、温度調整用のヒーターだ。
33度ってどのくらいだよ?とそれぞれの温度に調整するのが難しかったのだ。
温度計があれば……と何度も思いながら、適当に温度を設定していく。
途中で様子を見に来てくれたサンちゃんに温度がー。と泣きつくと、鑑定で簡単に解決した。
……あんなに苦労したのに、最初からサンちゃんに聞けばよかった……。
これは何度になってるよ。と見ただけで分かるなんて……鑑定便利すぎ。いいなぁ……
余談だが、鑑定は元々覚えているスキル以外にも、複合属性で覚えることも出来る。
だが、虹彩属性と雷属性と闇属性を覚えないといけないのだ。その道のりは長く、光属性を属性レベル100まで上げた上位属性が虹彩属性、風属性と火属性をレベル5まで上げると雷属性が覚えられる。
リオが鑑定を使うには、光属性のレベルが足りないのだ。
ひよこ用の小屋の場所は、鶏小屋のすぐ横に、温度順になるように並べて、サイズも後半になるにつれ広くなるように作成した。
卵が孵るのはまだ先だが準備は完璧だ!
いつでも生まれておいでー!
その日の夜、みんな集まって晩御飯を食べようと準備をしていると、ルードに引き止められた。
「リオ様、少しいいですか?」
「うん?どうしたの?」
「今日、商業ギルドに納品に行った時に言われたのですが、スラムの裏組織がリオ様の事を探しているようです」
「裏組織が?なんでだろ?」
「それってさぁ、昨日リオがボコボコにしたヤツらの組織なんじゃね?」
話が聞こえていたようでアランが眉間に皺を寄せる。
「ブラックスコーピオンだっけ?そんな名前の組織の人?」
「そこまで詳しくは、商業ギルドではわからないようでしたが、リオ様はしばらく街の中を出歩かない方が良さそうだと伝えて欲しいと言われまして……」
「ふーん。そうなんだね。ありがとう。じゃぁ、しばらく家でゆっくりしとくよ!」
「はい、その方が良さそうです。かなり戦闘能力が高い者が集まっている危険な組織のようなので」
「昨日の人達は弱かったから下っ端かな?」
「や、リオが強すぎたんじゃね?」
「え?……そうかな?」
「知んねーけど」
「えー」
とりあえず、しばらく引きこもることにしよう。
特に街に行く用事も今のところは無い。
商業ギルド、冒険者ギルド、ザヴィオンさんの所には、誰か代わりに納品に行ってもらえばいいや。今もルードが行ってくれてるし!
魔物狩りなら、クレイと夜に行けるし、門の外ならさすがに大丈夫だろう。
しばらく昼間は引きこもり、何しようかな?と考えながら、みんなと食事を始めるのだった。
ルード:はぁ…リオ様が、訳の分からない裏組織に狙われることになるなんて…
私はどうやってリオ様をお守りしたら…
とりあえずまず街には行かないようにして頂きましょう。
はっ!ついでに、休暇を取ってもらえるのでは?
リオ様はいつもいつも、あっちにこっちにと働きずめですからね!そうです!そうしましょう!
箱庭の中に入ればゆっくり休むこともできるでしょうし!むしろ、リオ様を休ませる為に神様がご準備してくださったのかもしれません!
しばらくゆっくりされると言っていましたしいい傾向ですね!
いつも読んでくださりありがとうございます。
人数増やしすぎたので、ここで少しずつ紹介していきます。
話の中でも名前は出てきますが、見た目の説明が入っていない場合もあります。ご了承ください。
ララ 9歳。
薄い緑の瞳で濃い金髪の女の子。
レイナとは双子のようだ。
レイナ 9歳。
濃い緑の瞳で濃い金髪の女の子。
ララとは双子のようだ。
2人はとても仲が良くて、よくシンクロしている。
顔も体格や背丈もそっくりだ。




