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83、気晴らしは狩り

今日はあと、冒険者ギルドに行ってゴブリンとオークの依頼の受注だけしたらおしまいだ。

……その予定だったのだが、冒険者ギルドに着くと予定が変わってしまった。

ドアを開けて中に入ると速攻(そっこう)で、ギルド職員に呼び止められ受付に引っ張って行かれ時間はあるかと聞かれる。

大丈夫だと答えてしまったがために、大量の怪我人を治す羽目(はめ)に……


先日怪我人を治療したのが冒険者の間だけでなく街中で広まってしまったそうだ。

今も既に何人かいると別室に案内され、順に治していく。

治している間に次から次から怪我人が運び込まれているようで、治しても治しても終わりが見えない。

合間に治療院の人には見て貰えないのかと聞くと、料金はもっと高額で1日に見てもらえる人数も限られているとか。

なんか人数はあんまり沢山治療出来ないっていうのは前にも聞いたかも……。などと考えながらひたすら治療し、帰ったらマナポーションを作って治療院に売りに行こうと心に誓うのだった。


冒険者ギルドに着いたのはお昼前だったのに、今は(すで)に日が傾きかけた夕方だ。

最後の人を治し終わると、フラフラしながら怪我人のお会計を(にな)ってくれていたスタッフの所に向かう。


「あー……えっと……大丈夫ですか?」


「大丈夫じゃないです……お腹空いた……」と、泣きそうだ。


「あ……お昼まだだったのですね……」リオの様子に、えーっと……と困り顔だ。


「うん。お会計ありがとうございます」


「え、ええ……お振込でよろしいですか?」


「はいお願いします。……帰ります。お疲れ様でした」


「は、はい。お疲れ様でした」


コツコツコツコツと、階段を降りていくと、階段を降りたところで別のギルドスタッフに捕まった。

ギルドマスターが会いたいと言っているそうだ。

クタクタだから断りたいと言ったが少しだけお願いしますと頼み込まれ仕方なく了承した。

代わりにと、オークとゴブリンの依頼受付をしておいて欲しいとギルドカードを渡し、ギルドマスターの部屋に案内された。


コンコン

「リオさんをお連れしました」


「はい。どうぞ」


ガチャ

「失礼します」

「こんにちは。お久しぶりです。なんの御用ですか?」


「こんにちは。……随分お疲れのご様子ですが大丈夫ですか?」


「大丈夫じゃないので帰っていいですか?」


「え?や、ちょ、ちょっとだけ、すぐなので、そちらのソファーにお掛け下さい」


「……はい」


ギルドマスターはこそりと、案内してくれた受付嬢に声をかけている。

リオさんどうしたのですか?

それが、先程まで怪我人の治療をして下さっていまして……。

え"?午前中からしていたのではなかったですか?

はい。人数が多くて……。


ギルドマスターと受付嬢がコソコソ小声で話をしているので、時間がかかりそうだと、リオはご飯を食べることにしたようだ。

焼いたお肉が乗ったお皿を取り出し、モグモグと食べ始めた。


「!!り、リオさん、お待たせしてすみません」

それを見て焦るギルドマスター。


「はい」モグモグ


「えーっと……」


「それで、なんの御用ですか?」モグモグ


「あ、それが、午前中に商業ギルドにマジックバッグを卸されたとか?」


「そうですね」モグモグ


「冒険者ギルドにも卸していただくことはできないかと思いまして……」


「いいですよ」モグモグ


「本当ですか!金額は商業ギルドと同じ額でも大丈夫ですか?」


「はい。分かりました。何個必要ですか?」モグモグ


「えー……10個は可能ですか?」


「分かりました。いつお持ちしましょうか?」モグモグ


「今日はお持ちですか?」


「はい」モグモグ

テーブルに並べ、確認してもらう。


「……魔物の皮で出来た鞄なのですね。少し拝見させていただきます。

ふむふむ……素晴らしい出来ですね。

ありがとうございます。お支払いは振込でもよろしいですか?」


「はい。お願いします」モグモグ


「……後ですね、ペルカの街の領主であるコンラッド・アシュフォード侯爵様が、是非リオさんにお会いしたいと仰っていまして、会いに行って頂けますか?」


「……コンラッド・アシュフォード侯爵様?……遠慮することは出来ますか?」


「え!?……えっと、お断りはされない方がよろしいかと……」


「……どんな方ですか?」


「貴族の方だから構えているのでしたら、そこまで心配されなくて大丈夫かと。かなり気さくで良い方ですよ。私も付き合いは長いですが、街の人のことをとてもよく考えてくださる立派な方です」


「そうですか……日にちはいつですか?」


「詳しい日程は確認して明日お伝えするのでギルドに来て貰えますか?」


「服装は何を着て行けばいいですか?あと、何か手土産を持っていった方がいいですか?」


「服装はそのままで大丈夫だと思いますよ。冒険者にもとても理解がある方なので。手土産はそうですね。あると喜ばれると思います」


「そうですか。では明日聞きに来ます」


「はい。お疲れのところありがとうございます」


「お疲れ様でした」


疲れて話し方も淡々としている。それも察したのか、ギルドマスターは話を手短に切り上げてくれた。

ギルドマスターの執務室でお肉を食べながら話していたこともお(とが)めなしだ。

リオはそのまま帰ろうとして、受付嬢に引き止められ、ゴブリンとオークの討伐依頼受注完了したことを伝えられギルドカードを渡された。


「頼んだの忘れてました!ありがとうございます!」


「いえいえ、帰ってゆっくり休まれてください」



お礼を行ってギルドを後にする。

宿までの帰り道にある屋台で買い物をしながら宿に帰ると、晩御飯を8人分受け取り亜空間の家に帰った。


「リオ、遅かったですね」


「「おかえりなさい」」


「ただいまー。クタクタだよぉ」


ご飯の準備もクレイを中心にしてくれており、ほぼ終わっていたので、宿で受け取ってきたご飯も並べ、食べながら今日の出来事を話した。冒険者ギルドでかなりの人数の治療をしたことを話した時は、みんな若干引き気味で、途中で断っても良かったのでは?と言っていた。

みんなの方はマジックバッグはかなり使い心地が良かったと、すごくすごく褒めてくれた。

ミーシャとシュバルツにお願いしていた子供達の勉強と訓練も間に休憩を挟みつつ最初にしては上手く教えてくれたようだ。

実際してみると必要な物が数点あったようで、また買いに行ってくれるそうだ。ついでに、ミーシャとルードにお金の管理やお給料の支払いの管理もお願いした。

ルードには明日から商業ギルドに商品を卸に行ってもらうのもお願いした。

2人とも不安だと言っていたが、困ったら聞いてと、とりあえず丸投げした。

ガンツには、鍛治工房がどんな作りの建物がいいか、デザインや間取りを教えて欲しいと紙とペンを渡しておいた。かなり細かく絵も描いて置いて欲しいと伝える。ガンツは嬉しそうに受け取り、あれもいるしこれもいるしと構想を練り始めたようだ。


食後はみんな自由に過ごして、休んでと伝え、クレイに狩りに行くか聞く。


「リオがしんどくなければ行きたいです!」


「うん。疲れてるのは精神的にだと思うから、気晴らしに行こ!」


「はい。沢山倒してスッキリしましょう!」


ということで、西の森に置いてあるゲートから出て、森の中を散策する。


「あ!そういえば、これ渡すの忘れてたよ!」


「……なんですか?透明の骸骨?」


「ゼンに貰った通信魔道具」


「え?……これが?」


「うん。ここ押して、魔力を流すと……」


カタカタカタカタカタカタカタカタッ


「ぅおっ!?びっくりしました……なんですか?この音……」


「着信音?骨がなる音」


「………」クレイはなんとも言えない表情で骸骨を眺めている。


「まぁまぁ、髑髏の頭の方見て」


「おお!リオが映っています!」


「今隣にいるから声は直接も聞こえてるけど、コレで通信できるみたい。

みんなの分も預かってるんだけど、誰にもまだ会ってないんだよね……みんなペルカにいないのかな?」


「どうなのでしょうか?最初の街でと待ち合わせしていたのですよね?」


「うん……一応……違う街に行ったとか?ペルカの街にも来てたのは来てたみたいなんだけど……」


「まだペルカの街の中でも行ったことがない場所にいるのかもしれませんよ?」


「そうだよね。最近なんか色々やる事とやりたい事あって、街の中も決まったルートしか通ってないから、また余裕が出来たら探そうかな」


「余裕が出来ることがあるのですか?」


「え?余裕できるでしょ?ずっと続くと過労死(かろうし)しちゃうー」


「カロウシ?」


「働きすぎで死んじゃうってことだよ」


「な!?ダメです!リオ、死なないでください」と、目をうるうるさせて抱きついてきた。


「わ、泣かないでよー、よしよし。ゼンが丈夫に作ってくれてるから大丈夫だよ」


クレイが涙目になってしまった。頭をぽんぽんと撫でて慰める。


夜の森の中、大きな声で話していたせいか、魔物が寄ってきていたようだ。


ガサガサガサガサッ

「グォアアアアアア」


ヘルハウンドが現れた。大きな口を開け、飛びかかってくる。


~ヘルハウンド~

Bランクの魔物

真っ黒で硬い体毛と皮膚の犬の魔物。体長は5メートルほどもある。

鋭い爪や牙、口から炎のブレスを吐き攻撃してくる。


タタタッ

「「わぁ!」」


「グワァアアアアア」

噛み付いて来るのを避けたが、口から炎を吐き追撃してくる。


「シャドーバインド」


「レーザービーム」


「グォアアアアアア」

レーザービームに炎のブレスを吐き、攻撃を相殺してくる。


「へ?マジ? それなら、リフラクト」


~リフラクト~

敵を光で包み、光で包まれた敵は一定時間魔力が使えなくなる。


「レーザービーム」


チュインッ


「ギャン……」


テッテレー


「さすがBランクですね。なかなか強かったです」


「魔法使って来る魔物は、まだちょっと苦手かも」


「そうですね……。もっと上手く対応する方法があればいいですが……」


「実戦あるのみ?」


「そうですね」


「でも西の森でもBランクの魔物出るんだね」


「そのようですね。気をつけて進みましょう」


「うん」


この日は他には強い魔物は出てこなかった。

50匹程の上位種はいないゴブリンの巣を3つと、オークを5匹見つけ瞬殺して家に帰った。


ローカスト:リオさん、今日はクタクタになっていましたね……あんな状態で引き止めて、少し悪いことをしましたね。

にしても、彼女は本当に何者なのでしょうか?ギルドスタッフに少し聞き込みをしてもらいましたが、良い話しか出てきませんでしたね……

あまりにも何でも出来るので怪しいかと思っていましたが……素性を隠さないといけないような子なら、アイテムボックスをそこら辺でポンポン使ったり、大量に魔物を討伐したり、ゴブリンの巣に捕まっていた人を助けたり、自ら進んで冒険者を治したりと、目立つことはしないでしょうし……それに、食べ物の買っている量がすごいとの声が多かったようですが、コレが1番怪しいですね……あんな細い体でそんなに食べるわけないですからね……

それに今日も……まさか、マジックバッグが作れるなんて……

はぁ……怪しいというか、不思議な子ですね……しばらく様子を見ることにしましょう……








読んで下さりありがとうございます!

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