7、転生2日目-2
ゲートの開き方を教えてもらう時に、思いがけず魔力操作の練習ができたので、後は魔術の練習だ。
皆初級魔術は使えるようになったと言っていたので、早く追いつきたい。
とりあえず、空が少し白んで来たのでもう少し明るくなるまでは、果物の収穫をすることにした。
だが、せっかく魔力操作も覚えれたので、そちらももっとスムーズに扱えるように練習もしたい……
そうだ!両方したらいいじゃん!
魔力操作に慣れるために、魔力を身体の中をぐるぐる移動させながら果物狩りをする。魔力操作に気を取られ果物狩りに気を取られとなかなか難しい……
リオが、んー……と、唸りながら果物を取っているため、クレイがその様子にハラハラした顔で、果物を取りながらチラチラと見てくる。
「ぁ……」と、気を使って声をかけるのを遠慮しているのだろうが、ソワソワしすぎて、ちょいちょい漏れる声と視線が逆にすごく気になる。
そうこうしているうちに日も登ってきたので、果物狩りを中断して部屋に戻ることにした。
取れた果物をクレイから預かり、魔法収納腕輪に収納すると、ゲートを抜け部屋に戻ろうとクレイに声をかけたが、クレイはもう少し果物を取っておいてくれるとのことで、そこで一旦別れる事になった。
1人でゲートを抜け、部屋に戻ると昨日みんなで集まっていたリビングの方に向かう。
ドアを開けるとサンちゃんとサンちゃんの従魔のガルーダがいた。
「おはよう、サンちゃん」
「おはよう、リオ」
「サンちゃんの従魔ちゃんもおはよう」
「グルるるる」
笑顔で挨拶すると、サンちゃんも従魔も挨拶を返してくれた。
「リオ、この子はミシルって名前にしたから、よろしく」
「ミシル!可愛い名前だね。よろしくミシル!触ってもいい?」
「グルルル」
ミシルの方に歩いて行きながら尋ねると、ミシルは嬉しそうに頭を擦り寄せて来てくれたので首筋や頭を撫でる。
サンちゃん達の従魔は人の言葉は話せないが知能はとても高いようだ。私たちが話している言葉も理解しているように感じられる。
ミシルはかなり大きい鳥のような見た目で体高は足を折って座っているのに、私の身長より頭一つ分ほど高い。座っていなければもっと高いだろう。
ミシルの羽毛はふんわりと柔らかく、赤、オレンジ、黄色が混ざったとても華やかな見た目だ。首筋の羽毛は特に柔らかく手が手首あたりまですっぽり埋まるほどふわふわとしていた。
「やばぁー……気持ちいい」
バフっ
「グルッ……?」
ふわふわの感触に我慢できず、首にぎゅっと抱きつき顔面からふわふわの羽毛にダイブすると、ミシルは少し驚いたように声を漏らしていた。
「めちゃ気持ちいい。この子欲しい」
ギューッと抱きしめたまま呟くと、サンちゃんが慌てている。
「え、や、ダメダメ。ミシルは俺の相棒だからね」
「ん……だよね」
「まぁ、触り心地最高だからな……リオの気持ちも分からなくはないよ」
「うん……めっちゃふわふわ」
「ミシルが嫌がらなければ幾らでも撫でてあげて」
「うん」
トロンとした顔でミシルに抱きついているリオを少し笑いを漏らしながらサンは見ていた。
「グルるる」
ミシルも撫でられるのは好きみたいで頭をグリグリと擦り付けてきた。
少しの間ふわふわの触り心地を堪能しているとランちゃんとジオが従魔と一緒に部屋に入ってきた。
「リオもサンちゃんも早いな、おはよう」
「まだ寝みぃわ、おはよ」
2人とも眠そうに欠伸をしている。
「おはよう、2人とも眠そうだな」
「ランちゃんジオおはよう、従魔ちゃん達もおはよう」
「クルルるる」
「クァーーん」
ランちゃんとジオの従魔達も返事をしてくれる。
「可愛い。その子達もふわふわ……名前なんて言うの?触ってもいい?」
昨日はあまり従魔達とは絡めなかったので、今がチャンスとばかりに、従魔達を触ろうとする。
ミシルに抱きついたまま、ランとジオの従魔を見ながら聞くと。
「こいつはクァール、名前はフエって名前にした」
フエの頭をガシガシと撫でながらジオが答えてくれる。
「この子はスコル、名前はヒュールって名付けたよ。リオ撫でてあげて!すっごいふわふわだから!」
ヒュールの紹介が終わると、フエもヒュールも近づいて来てくれた。左手でフエの、右手でヒュールの首すじを撫でると、ふわふわの毛に手が埋もれていく。
「わぁ……やばぁ……両手が幸せ……」
フエは特徴的な太く長い髭を両頬から1本ずつ生やした豹のような出で立ちで、見た目は毛も長くは見えなかったのにとても密度のある柔らかい毛が生えていた。体高はお座りした状態で私と同じか少し高いくらいの高さだった。
ヒュールは赤い毛で毛の長さも10cmくらいはありそうな長毛で見た目は狼のようだった。首周りだけ白色で、白いスカーフを巻いているように見える。体高はお座りした状態で私より頭1つ分くらい高いくらいの高さだった。
リオはデレデレと顔を緩めて2匹を撫でる。
短い毛と長い毛で、両方違う感触で、でも両方気持ちいい感触でうっとりしてしまう。永遠に撫でていられそうだ。
どこ触ってもふわふわと心地よい触り心地にウットリしながら、フッとクレイのことを思い出した。
「クレイも髪の毛はフワフワだけど、頭にしか毛がないんだよね……」
どこを触ってもモコモコのふわふわの体を堪能しながら羨ましそうに呟くと、それを聞いた3人が吹き出した。
「ブッ、や、ちょ、リオ、ヴァンパイアの身体中に毛生えてたらやべぇから!」
「フハッ、……雪男みたいになるじゃん……?」
「……クレイのあの整った顔で胸毛、腕毛、スネ毛ボウボウ……。全身ってなると……背中毛もか……?」
サンが顔をしかめながらもし毛が生えてたら……と想像し呟いた。
サンちゃんのコメントにはランちゃんもジオもそれはやべーわと大爆笑だ。
リオもその状態を想像して、確かに……と、納得する。それは確かにちょっと嫌かも……うん、クレイは今のままがいいね……と、みんなの従魔みたいに触り心地がいいふわふわでは無いが、クレイは今のままのクレイがいいな!と、納得するのだった。
それからしばらく4人で話していたが、なかなかノアちゃんが部屋に来ない。
「……ノアちゃんはまだ起きないのかな?」
皆に聞いてみる。聞いてみたが、まだ誰も見かけてないようなので寝ているのだろうか?
「リオ見てきてよ」
「うん、男の俺らが行くより、リオの方がいいな」
「そうだね、女の子同士の方が寝起き見られても平気だろ」
「え?ランちゃんは?」と、ホムンクルスに転生して身体は女性に変わったランちゃんに、二ヤリ顔で言ってみる。
「?!え、や、俺男だし……?」
そりゃ身体は女になったけど……と目を泳がせながら焦っている。
「今はランガも女だけどなー、アハハ」
「そうだけど……や、そぉじゃなくて……」と、渋い顔だ。
「ランちゃん女の子になったのに、名前ランガのまま?」
「そう言われたら、みんなも名前どうするの?」
確かにサンちゃんの言う通り、今お互い呼びあっているのはゲームの中での名前で、本名でも無い。
私は実は梨桜が本名で、そのままリオなんだよなぁ……言ったこと無いけど、と考えていると。
「俺はジオのまま。この名前名乗ろうかと思ってるよ。ゼンの記憶の感じだと日本人名って変に浮きそうじゃん?」
「あー、確かに。なら俺もサンのままにしようかな?変えてもどうせサンちゃんって呼ばれそうだしな」
「確かに!」
「んじゃ、俺は……ラン……ならいいか?ランなら女の体でも違和感ない?」
「うん、いいんじゃね?」
「みんなそのままかぁ……リオってこのままでもいけるかな?」
「大丈夫じゃないか?」
「うん!ランと大差ないよな!」
「んじゃ、私もそのままにしよかな?」
「なら、ランガだけちょい改名だな!」
「改名ってほど変わってないけどな」
「じゃぁ改めて、ランちゃん!せっかく女の体になったじゃん??見たん??」にやにやしながらジオが聞く。
「ちょ、リオもいるのに……こんなところで何聞いてんだよ!」
少し頬を赤く染め焦りながら、ちらりとランちゃんがこちらを見る。
「あー……リオ、ノア呼んできてー」
ジオがあからさまにリオを追い出そうとする……
「もぉ……」
と、ジト目でジオを見ると、目をそらされた。
はぁ…
ジオは相変わらずだなと思いつつ、んじゃノアちゃんの様子見てくるよ。と部屋を出た。ノアちゃんの様子を見る為、ノアちゃんが休んでいる部屋の方に向かう。
えーっと、確か昨日、私の2つ隣の部屋に入っていったはず……
ここだと思うんだけど……
コンコン
ノックしてみる。
が、返事も無いし、特に音もなくシーンとしている。
あれ?部屋が違うのかな?もっかい……
コンコンコンと、今度は先程より少し強めにノックをして、ノアちゃんいる?と、声をかけてみた。
ガン!!バタバタバタバタ!ドン!ガチャガチャガチャン!
部屋の中ですごい音が響いた後、バーン!と、ドアが開き、ノアが顔を出した。
「わぁ?!」
「あ!りーおー……良かったァ……」
焦った顔で飛び出してきたノアは、リオの顔を見ると焦った顔から一転、ふにゃっと顔を緩ませ抱きついてきた。
「ノアちゃんおはよう。凄い音してたけど大丈夫?」
「ぅん……私、朝弱くて……寝坊して、会社に遅刻したかと思ったぁー……」
焦ったー……と、ふわぁと欠伸をしながら、また眠そうに目を細めている。
そのままぎゅっと抱きついて体重を預けて来るので、抱きしめて、すごい音がしていたが怪我など無いかと確認するが、怪我は特にしていなさそうだ。
ノアの後ろから従魔も出てきた。ノアとは違いゆったりとした足取りで歩いてくる。
「にやぁーぉん」
「従魔ちゃんもおはよう」
従魔達って、人の言葉理解してるよね……反応や動きが分かってる感じだもんね……クレイ以外の従魔達も喋れたら良かったのにな……
「ノアちゃん」
「うむぅ……むにゃむにゃ」ギューっ
「ふふっ、ノアちゃん可愛い。ねぇ従魔ちゃんの名前ってなんて言うの?」
寝ぼけながら抱きついてきて離さないノアちゃんの反応が可愛く癒されながら頭をぽんぽん撫でながら聞くと、だんだん意識がはっきりしてきたようで、ゆっくりと話し始めた。
「んーと、セリオンって名前にしたんだよ。種族はアダンダラって言うんだって、おっきい猫みたいで可愛いでしょ?」
ふにゃりと笑って答えてくれる。
「うん、凄い可愛い。触ってもいい?」
「にやぁーぉん」
聞くと、ノアちゃんが返事をする前にセリオンから返事が返ってきた。ゆっくり近づいて来てくれ、頭を滑らすように擦り付けてくる。
ノアを正面から若干左にずらし、右手でセリオンの頬を撫でる。頬から下に、首すじを撫でるとゴロゴロと喉を鳴らして手に頭を擦り付けて来てくれる。
「はぁ……可愛すぎる……触り心地も最高!ちょー気持ちいい」
セリオンの毛はそんなに長くはなくフエと同じか若干長いかな?くらいの長さだった。他の子に比べしっとりとしており、手に吸い付くような感触だ。
体高も1番低く、私の胸辺りまでしかない。普通の動物だったら充分大きいが……いまは比較対象が皆の従魔しかいない。皆の従魔の中ではいちばん小柄だ。
頭の大きさも体高に合わせて小さい。
毛の色がとても綺麗で薄い紫とグレーの混ざった色と言ったらいいのか……ヘアカラーでいうところのパープルアッシュ?ラベンダーグレイ?のような……表現が難しいが、しかしとて綺麗な色だった。
しっぽは長く、先が二股に別れていた。
ふわふわの毛を堪能しながら聞く。
「ノアちゃん、服は着替える?そのままでいいの?」
「うん、着替えず寝ちゃったからこのままでいい」
「みんな揃ってたから、あっちの部屋行こっか」
「うん」
まだ眠そうにしながらも返事はあったので、ノアちゃんを左手でハグしたまま支え、セリオンを右手で撫でながら移動する。
ノアちゃんはまだ眠いのか若干フラフラしている。しかし、かなり体重をかけられても、支えるのは全く問題なかった。このホムンクルスの身体が凄いのだろう。普通ならこんなに寄っかかられたらこちらもフラフラとなりそうなものだが全くよろけもしない。片手で抱き上げるのも可能なのでは?と思うほどだった。
セリオンの喉下は歩きながらは撫でにくいので、今度は頭から背中にかけてのふわふわを堪能する。
他の従魔もだけど、ほんとに高ランクモンスターなのかな?と思うくらい毛は柔らかく触り心地がいい。
防御力高いなら硬くて毛先とか尖っててもおかしくなさそうなのに……。 いや、今の方が嬉しいけど。などと考えつつ、サンちゃん達がいる部屋に着いた。
ドアを開けると中がドタバタと騒がしい。
何をしているのかと思ったらランちゃんが胸を押さえてジオから逃げ回っていた……
ジオの手の指はワキワキと動いており手の動きが怪しい……漫画やアニメで見るようなエロオヤジのそれである……
「……ジオ!」
その様子を見て、眉間に皺を寄せたリオの声が低く部屋に響いた。
ビクッ
部屋にいる全員が驚き、従魔達もびくりとし、こちらを向く。
「ッ……ヤベッ……」
ジオがこちらを気まずそうに見るので。
「ジオサイテー」
ジト目を向けると、調子に乗り過ぎたと思ったのか、ジオはランちゃんに謝っていた。
ジオ:ちょ、ちょぉランちゃん触らして!
ラン:は?
ジオ:ちょっとだけ!
ラン:なんでだよ!嫌に決まってんだろ!
ジオ:ええじゃん!リオもノアんとこに追いやったし!
ラン:や、リオがいるとかいないとかの問題じゃないし!
サン:リオがいたらジオ怒られるもんな……
ジオ:ゔっ……
サン:リオには弱いよな……
ジオ:うっせぇ!
ラン:えー、リオの事好きなん?(ニヤニヤ)
ジオ:は、はぁ?!違ぇし!……ランちゃん隙あり!
ラン:ちょ、わ!やめ、やめろ!(バタバタ)
ジオ:ええじゃん!減るもんじゃなし!(バタバタ)
ラン:何が悲しくて男に胸揉まれねぇといけねぇんだよ!
ジオ:ええじゃん!ええじゃん!そんな巨乳見たことないけぇ!ちょっとだけ!
ラン:サンちゃーん助けてー!
サン:リオじゃないから、ジオを落ち着かせるのは無理だな……
ジオ:リオでも無理よ!
ラン:リオー!リオ何とかして!
ジオ:(ビクッ)は?…………いねぇじゃん!
サン:な?
ラン:リオ効果、すげぇ…
ジオ:ッ〜〜〜!!!
ここまで読んで下さりありがとうございます。