69、リオがキレた理由
受付の方に向かうと、何やら人だかりができていて、さっきのお姉さんが囲まれていた。
遅いなと思って見に来たが囲まれていたせいで、こちらに戻って来れなかったようだ。
どうしたのかと近づいていき、近くにいた冒険者の人に聞いてみる。
「何か揉め事ですか?」
「あぁ、あっちの冒険者の人達が……」
「あ!!」
全部聞き終わる前に、輪の中心にいた冒険者の1人がこちらを指さして声をあげる。
「あんただろ?赤髪のすげー美女って!」
「え?確かに私も髪は赤いけど、なんの話し?」
「こないだバイロンの大怪我を治したって治癒士を探してんだよ。あんたじゃねぇのか?」
「バイロンって誰?知らないなぁ」
「え?あんたじゃねぇの?おい、マルコス、お前が治してもらったのも違うやつか?」
「え、あの、リオさんこんにちは。先日はありがとうございました」
「あ!こないだの!背中はその後大丈夫そう?」
「はい。おかげさまで、背中だけでなく他の箇所も調子がいいです」
「それは良かった」
「はぁ?じゃぁバイロンの怪我治したのもあんたじゃねぇか!なに、嘘こいてんだよ!」
「ちょ、モーセそんな言い方……」
「あんたを探してたんだよ。俺らのパーティに入れてやろうと思ってな!」
「結構です」なんだこのチンピラみたいなのは……とリオは即答で断った。
「……は?今断ったのか?
俺らはBランク冒険者パーティ黒翼の剣だぞ!お前みたいな治癒士なら戦えるやつにくっついて行くしか能がねぇだろ?特別に入れてやるって言ってんのがわかんねぇのかよ!」と、ドヤ顔で言ってくる。
「は?……誰?怪我が治して欲しいならヒール1回5000ゴールドで治すよ?」と、リオは呆れ顔だ。
「はぁ?マジで俺らを知らねぇのかよ!?」
「はぁ……知るわけないじゃん!初対面だよね?
……ねぇ、あの人達有名なの?」と、深い深いため息を吐いている。
知ってて当たり前というように言ってくるので隣にいた人に聞いてみた。
「え、ええ、まぁBランクパーティがペルカの街には今、5組しかいないので、知ってる人の方が多いですね」
「ふーん、そうなんだ。ペルカの冒険者パーティは疾風の牙しか知らなかったよ」
「はぁ?!あんな獣ヤローがいるとこと一緒にするんじゃねぇ!」
「はぁ?獣ヤローだぁ?!」
コツ コツ コツ コツと、靴音を鳴らし前に進んでいく。
ふわふわの耳としっぽが大好きなリオは、獣ヤローだと馬鹿にした表現をした男にキレた!
身体中から魔力を放ちながらゆっくりもふもふの尻尾と耳をバカにしたモーセに近づいていく。
まっすぐ目を見て、一瞬たりとも目をそらさない。
あまりの殺気と威圧にモーセはヒイッと息を吸い込み、上手く呼吸が出来ない。先程まで治癒士だからと威圧的な態度を取っていたのはなんだったのかと思うほど、ハァハァと呼吸が乱れ、体はガクガクと震えだし、歯がカチカチ音を立て始めた。腰に下げた剣を抜こうと剣に手を添えるが、手もガクガクと震え過ぎて力が入らず抜けないようだ。
リオはまだ近づいて行っているだけで何もしていないのに、だ。
ただ、かなりの魔力が漏れ、威圧と殺気はすごく、顔と顔の距離が20センチほどまで近ずいたとき、モーセは白目を向いて口から泡を拭きながら意識を飛ばした。
周りにいた人達も自身の体を抱きしめるように腕を擦り、青い顔をしている。漏れだした殺気と魔力に当てられたのだろう。
そして、モーセが倒れるのを見て、愕然としていた。
「「……」」
口も悪く、態度もデカいが、実力でBランクになった実力者だ。それが殺気と威圧だけで気絶させられるなんて……と。
「……はぁ、近づいただけで気絶するなんて、ほんとにBランクパーティなの?」リオの方は、まだ何にもしてないのにこんなにあっさり気絶するなんてと呆れ顔だ。
「リオ!」
「アッシュ!いたの?」
「あぁ、リオがブチ切れするちょっと前からな。ハハハッ」
「え?まだ切れてないよ。ちょっとイラッとしただけだよ」
「ハハッ、あの殺気でか?……でもありがとな。グレイグの為に怒ってくれて。なぁ、グレイグ!」
「ちょ、呼ぶなよ……」
「恥ずかしがってんのか?」
「テルゾ黙れ!」と言いながら、顔は真っ赤だった。
「だって私の耳としっぽを馬鹿にされたんだもん!そりゃ怒るよ!」フンフンと鼻息荒く怒っている。
「いつからおめーのになったんだよ!」
「えへっ」
「でも……ありがとな……。その……う……嬉しかった……」と、恥ずかしそうにお礼を言ってきた。
「お礼はしっぽでいいよ!」
ギューっ もふもふ なでなで
「ひゃうん!ちょ、やめ、あ"ーーーー!」
「今日もいい毛並み!最高!」
「わ、わかった!わかったから!一旦離せ!」
肩をグイグイ押すが引き剥がせない。
「もぉちょっと!」
「あ、あぁ、ちょ、あんまりグリグリ……っ……すんな!も、あぁ……いいだろ!あぁぁぁ……」
数分後
「ふぅ、満足!」と、リオは満面の笑みだ。
「いいなぁ……」
珍しく、テルゾも言葉を漏らす。
「リオ……俺にも耳としっぽがあったらあんなんしてくれた?」
アッシュも羨ましそうに聞いてくる。
「うん!フワフワだったらね!」
「「いいなぁグレイグ……」」
「良くねぇ!!」と、グレイグは顔を真っ赤にしていた。
「それで?何揉めてたのかな?」
アッシュが聞いてきたので経緯を説明した。
ギルドマスターまで出てくる事態になってしまった。
モーセは勧誘とは受け取れない悪行だと言う判断をくだされ、処罰が下されるそう。
リオはただ怖い顔で近づいただけとの判断でお咎めなしとなった。
話の延長で、回復魔術をかけて欲しい人がいたら、リオが朝依頼受付しに来た日なら夕方また来るから待っていて貰うこととなり、ギルドの方で料金表を作成してくれることになった。
アッシュ達に回復魔術まで使えるのかよと驚かれた。
グレイグにもふもふさせてくれたお礼だとリンゴを3人に1個ずつ渡して別れた。
今日はまたふわふわのしっぽを堪能させて貰ってご機嫌だ!
あのアホにしっぽをバカにされ怒っていたのもチャラになるほど触り心地が良かった。
家に帰って晩御飯を食べながら今日の出来事を話す。
2人の時より4人の方が話すことも沢山あり盛り上がる。
まだシバとイオスとは出会って2日目だけど、随分打ち解けたと思う。
ご飯のあとに、クレイと出かけてきていいか聞いてみた。
2人でお風呂に入って寝れるか聞くと大丈夫との事で、今日は夜の狩りに出かけることにした。
グレイグ:……はぁ…
テルゾ:グレイグどした?
グレイグ:どうしたもこうしたもねぇよ!
テルゾ:尻尾?リオに撫で回されて感じちゃった?
グレイグ:は?!な、ば、そ、そんなわけねぇだろ!
テルゾ:グレイグ顔真っ赤だぜ?
グレイグ:うっせぇ!俺ら獣人の尻尾は敏感なんだよ!
テルゾ:ほぅ…で?
グレイグ:それをアイツはグリグリ触りまくりやがって…
テルゾ:気持ちよかったのか?
グレイグ:……
テルゾ:え?マジ?!くぅー羨ましいぜ…
グレイグ:おい!
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