52、果物は人気なようです
街に着いて3日目、今日もいつものように起きて準備をして、クレイに声をかけ朝食を貰いに行く。
少しルーティーンが決まってきた。
食堂で朝食を貰おうと声をかけると、また果物を売って欲しいと言われた。
めっちゃハマってるな。と思いつつ何がいるか聞くと、桃がとても美味しかったからまた欲しいと言っていた。桃を3つ売り、オマケに今日はぶどうを付けてみる。すごい色だと驚いていたが、これも甘くて美味しいと伝え、部屋に戻ろうとすると、昨日階段ですれ違った商人風のおじさんからまた声をかけられた。
「おはようございます」
あ、昨日のおじさんだ!
「あ、おはようございます」
「今日もこちらにお泊まりだったのですね」
「はい。しばらくここでお世話になる予定です」
「そうですか。私は行商人をしているホーセンというものです。」
やっぱり商人だったんだ!
「あ、私はリオです。冒険者です」
「え?冒険者ですか?」
「はい。見えませんか?」
「そうですね、私はあちこちの国もまたいで行商をしておりますが、あなたのように美しい方には初めてお会いしました。それに、とても戦闘が出来そうな感じには見えませんでしたので……。魔法使いですか?」
「わぁ、めっちゃ褒めてくれてありがとうございます。魔術も使いますよ」
「そうですか。えっと……先程、宿の方に渡していたものはなんですか?」
「ん?桃とぶどうのこと?」
「モモ?ブドウ?それはあの紫色をしていたものですか?」
「あぁ、紫のはぶどうです。良かったら食べてみますか?」
「へ?た、食べ物なのですか?」
「そうですよー!はい」
「え?どこから取り出して……?」
ぶどうをひと房渡して、食べ方を説明する。周りの紫のところが皮で剥いて食べると伝えると、その場でパクリと1つ食べた。
「な!?……こんなに美味しい食べ物があったなんて……色んな国に行きましたが初めてです」
「そうなんですね!他の国も野菜や果物はここの国と同じ感じですか?」
「え?そうですね!気候などで少しずつ違ったりはしますが、似た者も多いですね」
「へぇーそうなんですね」
「あの、このブドウはまだ沢山お持ちなのですか?」
「はいありますよ!これアイテムボックスなんです。中に沢山入ってますよ。違う町に売りに行くんですか?」
「あ、アイテムボックスですか!……先程もそこから出てきたのですね。……もし良ければ、そうしたいと考えているのですが……。お譲り頂けますか?」
「あるのはあるんですけど……ぶどうは、あんまり日にちが経つと痛むかもしれないので、持ち運びには向かないかもしれませんよ?」
「……そうですよね…。10日以上持ちそうな物はありませんよね?」
「んー……。日持ちするのだと……野菜になるんですけど、ニンジン、じゃがいも、さつまいもはどうですか?」
1つずつ取り出して渡してみる。
「これも見たことの無い……野菜ですか?」
「ちょっとトマスさんに茹でて貰いましょ!」
食堂の厨房に逆戻りだ。
トマスさんに渡し、柔らかくなるまで茹でてもらい、それぞれ切って味見をしてもらう。
ホーセンさんだけでなく、トマスさんとマーサさんも味見をしていた。
「「んん!!!美味い!」」
「これなら上手く管理すれば1~2ヶ月は大丈夫ですよー。ただ、じゃがいもは芽が出てきたら、芽の根元も取り除いて食べないとお腹痛くなることがあるので気をつけてください」
「珍しい作物を沢山おもちなのですね……。あと1週間ほどはこちらにお世話になり、その後また行商に出ようと思っているので、1週間後にこちらをお譲り頂いてもよろしいですか?」
「はい。分かりました!」
「よろしくお願いします」
ではまた。と挨拶して部屋に戻る。
「ただいまー!」
「おかえりなさい!」
「さっき行商人の人と話したよ!1週間後にさつまいもとじゃがいも売ることになったよ!」
「へぇ、そうなのですか!どこに売りに行くのでしょう?」
「隣の街だって」
「近いのですか?」
「日持ち10日以上って聞かれたから、セルジュの街かな?馬車で7~10日、馬を走らせても5日位はかかるらしいよ?」
「結構離れているのですね」
「うん、この街に慣れてきたら他のとこにも行ってみたいね!」
「そうですね!」
朝食を食べ終わると、今日も何か依頼受けに行ってくる。と亜空間を出る。
食器を返そうと、食堂に向かうと、マーサから声をかけられた。
「リオさん。ちょっといいかい?」
「はい?どうかしましたか?」
「さっき商業ギルドの人が来て、リオさんに商業ギルドに来て欲しいと伝えてくれって言っていたよ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
「いえいえ、気をつけて行っといでね!」
「はい。あ、これご馳走様でした」
お皿をマーサさんに渡して、宿を出て、まずは商業ギルド……ではなくお米を取りに行く。
2回行ったらさすがに道覚えてるね!今日は早く帰ってお米炊いてみようかな!
「こんにちはー!」
「あぁ!お嬢ちゃん!」
「お米引取りに来ました」
「そうかい!それより、昨日くれた果物!あれは何だい?」
「ん?昨日……リンゴのことですか?」
「リンゴというのかい。とても甘くて美味しくてねぇあんなに甘い果物初めて食べたよ……」
うっとりと目を閉じ、思い出しているのか、動かなくなってしまった。
「えっと……大丈夫ですか?」
「ハッ!あれはもう少し分けてもらうことはできないかねぇ?お金は払うからさ!」
「はい。いいですよ」
「アレはいくらするもんなんだい?」
「昨日商業ギルドに売りに行ったら1つ3000ゴールドで買ってくれましたけど……」
「3000……そりゃあんだけ美味しかったらそれくらいするだろうね……。3000か……え?!商業ギルドでって卸値かい?!」
やっぱり果物1つに3000ゴールドは手がなかなか出せないようで買うか悩んでいるようだ。
さらに商業ギルドに卸したということは、他の店で買ったらそれ以上かい!と驚愕していた。
「お世話になってるので、1000ゴールドでいいですよ。いくついりますか?」
マーサさんに売ったのと同じ金額で提案してみる。
「ほ、本当にそんなに安くしてもらっていいのかい?」
「はい。今お世話になってる妖精の奏亭の女将さんにもこの金額でお渡ししてるので。商業ギルドの人には内緒ですよ!」
「もちろんだよ!ありがとう!じゃぁ5個貰えるかい?」
「はい。あと、お米取りに来たんですけど……」
「!!そ、そうだったね……忘れてたよ。こっち来とくれ。」
「はーい」
お米や藁を受け取り、また新たに精米をお願いして、今度は商業ギルドに向かった。
「こんにちは。リオといいます。呼ばれてきたのですが、誰が呼んでいるのか分かりますか?」
「こんにちは。リオ様ですね。確認致しますので少々お待ちください」
商業ギルドに入り受付の人に声をかけると、お姉さんは奥に確認をしに行った。
店内を見回すと、今日は時間が早いせいか、商人風の人が沢山いる。
受付はほとんど埋まっており、あちこちで話をしている人たちもいた。
ガヤガヤとした店内を見るが、人族ばかりで獣人はいないようだ。
グレイグみたいな犬耳の人とかいないな……
「お待たせ致しました!」
ギルドの人が戻ってきて、昨日の部屋に案内してくれた。
「リオさん!お呼び立てしてすみません」
「あ、セノーデルさんこんにちは。どうかしたんですか?もしかして果物痛んだりしてました?」
「いえいえ、とても綺麗な状態でしたよ!」
「なら良かったです」
「今日来ていただいたのは、果物とポーションを追加で卸していただきたくて、そのお願いのためです」
「あ、そうなんですね。どのくらいいりますか?」
「ありがとうございます!では……」
果物はこの街の領主や貴族の人に全部売れてしまってもうないのだとか。
ポーションも入荷を待っている人がかなりいたようで、在庫はほぼ残っていないそうだ。
たった一日で凄いなと思いつつ、希望個数をアイテムボックスから取り出していく。
昨日お願いしていたガラス砂も、もうどこからか仕入れてきてくれていたようで部屋まで運んできてくれた。
料金は相殺してもらい残りを受け取る。
また明日もポーションや果物の在庫があったら来て欲しいと言われたが、同じ果物ばかり売り続けると自分で食べる分が無くなってしまうので、他の物でも良ければと、サンプルにマンゴーとスイカ、みかんを渡して、また明日来ますと商業ギルドを後にした。
ホーセン:今日再びお会いした美女、リオさんと言うそうなのですが、冒険者と聞いて驚きました。手足が細いだけでなく、あの細い腰、大きな胸とお尻…は!いかんいかん…いえいえ、別に卑猥なことを考えていたわけではありませんよ!本当です!
それにしても、リオさんがお持ちだった果物や野菜…美味しかったですね…アレを譲って頂けるなんて…勇気をだしてお声かけして良かったです。
あれは売れますよ!間違いなく!私の目に狂いはありません!
どれだけ儲けられるか、今から楽しみです!ぐふふふ
読んで下さりありがとうございます。




