5、異世界転生-5
クレイと2人で果物をせっせと収穫していく。
「この果物全部取っちゃったら次取れるのって1年後なのかなぁー?」
「どうでしょうか?リオの魔力の味がするという事は、リオの魔力を吸収して育っているのでは無いかと思われるので、案外1年も経たず実をつけるかもしれませんね」
「そぉだといいなぁー。年2回とか?3回とか取れるともっと嬉しい!私の好きな果物ばっかりだし。いっぱい食べたい!」
話しながら果物狩りをしていて、ふと思った疑問も聞いてみることにした。
「そういえば、クレイってヴァンパイアって言ってたけど、昼間寝なくても大丈夫なの??」
「そうですね。特に昼寝ないとダメということはありませんよ?」
「そうなんだね!」
「はい。私は数日寝なくても特に問題はありませんし、寝るとしても3~4時間ほどですね……」
「睡眠時間短いんだね」
「元々その様です」
「日にも当たってるけど.それも大丈夫なの?」
「ゼンの家は結界が張ってある様で日の光も大丈夫です。昼間行動すると目に刺激が強すぎる為、夜行動するか日の当たらない所にいるのですが、この亜空間の中も明るいですが特に目に刺激を感じないので問題なさそうです」
「そうなんだ!そういう理由だったんだ。日に当たると灰になるのかと思ってたから、ちょっと心配してたんだよ」
それなら良かったと、リオがクレイに言うと、クレイは驚きに目を見開く。
「……は、灰になるんですか?」と顔を青くしている。
「あ、ならないのか!?」
「私は灰になどなりませんよ?リオの前の世界のヴァンパイアは、灰になるのですか?」
恐ろしいですね……と、驚愕している。
「んーと、前いた世界のヴァンパイアは空想上の生き物で、実在はしてなかったんだよ」
と、苦笑いしながら答えた。
とても不思議だ……ゼンに沢山記憶を貰ったけど、ここの世界には空想上の生き物って言われてた生き物もいっぱいいるんだよね……
「ゼンの家から外に出るのはやっぱり不安かも……」クレイの話を聞きながら、色々考え、ぽつりと言葉が漏れた。
「リオ……外には危険な魔物も多いですが、私がリオを守ります。必ず!」
「クレイ……ありがとう!」
頼もしいな……と、お礼を伝えながらハグして頭を撫でてあげると、ぎゅっとハグを返してくれた。
背はリオより少しクレイの方が高いのだが、反応やコロコロ変わる表情が弟のようだと、リオは感じていた。
リオは4人妹弟の長女だ。日本にいた時は26歳だった。4歳下に妹、さらに3歳下に弟、末っ子はさらに5歳下で、年齢からは考えられないほど甘えん坊だった。
中学生なら反抗期があっても良さそうな年齢だが、人懐っこくかなり甘えん坊でちゃっかりしていた。友達にはそんなに甘えん坊な面は見せていなかったようだが、家では末っ子なのをいいことに、甘えてオネダリしたら何でも言う事を聞いてもらえると思っているのでは?という感じだった。その弟とコロコロ変わる表情の雰囲気が似ている。
その後もたくさんお互いのことを話しながら果物を全部取り終わる頃には日が沈みかけて空が赤く染まって来ていた。
「……この亜空間……夕日パターンもあるんだ……外と同じ感じになるのかな?」
綺麗だね……と赤く染った空を眺める。
建物なども何も無い空間なので空を遮る物もなく空がとても広く綺麗に見えた。
「木の実も取り終わりましたし、外に出てみましょう」
クレイに誘導され、亜空間から外に出る。
亜空間を出て裏庭に戻ると、そこも空は赤く色づいていた。
みんなと合流すると、練習しようって言った言い出しっぺがサボってどこにいってたんだとめっちゃくちゃ質問攻めにあったが、果物を取ってたとりんごを渡すと、みんなナイス!やるじゃん!と言い、かなりご機嫌になっていた。みんな現金だ……
みんなの方はどうだったか聞くと、魔力操作は順調で、基本の6属性の初級魔法は習得できたと言っていた。
魔術の属性レベルをあげるにはひたすら魔術を使うしかないそうだ。属性レベルは100まであげることができ、レベルに応じて使える術も変わってくるそう。
かなり大変そうだ。ただ、リオも含め5人全員魔力量はかなり多いので、1日に何回までしか魔力がもたないので練習ができないという事はなく、時間さえあればいくらでも練習できるので、練習さえすれば習得は普通の人より早いはずだとゼンが言っていたそうだ。
普通なら1日中練習出来るほどの魔力がある人はいないのだそう。魔物を倒してレベが上がり魔力量が増えるか、マナポーションでもあれば別だが……と言っていたそうだ。
私は今日は果物狩りで魔力操作や魔術の練習は出来なかったので、明日から頑張ろうと思う。早くみんなに追いつかなくちゃ……
みんなで部屋に戻った時にゼンがみんなにもマジックリングを渡してくれた。
皆、チートアイテムキター!と大喜びだ。
ゼンは食事をしなくても生きていけるようで、ゼンの家には食べ物がなかった。
私は大量に収穫してきた果物をみんなで分けることにし、ゼンも欲しいというので6等分することにした。
1本の木に約50個、それぞれの木が5本ずつ、6種類……
1人250個ずつくらいか……取るのも大変だったけど分けるのも大変だった。
「リオが取ってきた果物なかったら、俺ら飯抜きだったんじゃね?!」
ジオがリンゴを齧りながら、眉間に皺を寄せている。
「……確かに……」
サンちゃんも従魔にも分け与えながら苦笑いだ。
「この桃、今まで食べた中で1番甘くて美味しいよー!あ、こっちのぶどうも!柿もあまぁーい!」
「にゃぁーおん!」
ノアちゃんは、従魔と果物を堪能するのに夢中のようだ。ノアちゃんの従魔のセリオンもにゃぁーにゃぁーと嬉しそうに食べている。
「魔物も血抜きして解体したら肉は食べれるみたいだし、明日はちょっと実戦してみる?果物だけの飯って毎日はちょっと物足りないしな……」と、肉も食べたいとランちゃん。
「あ、それなら、私今日の練習参加してないから、明日は魔術の練習したいから、別行動していい?」
そう伝えると、そうだったな!頑張ってな!と、快く了承された。
「ゲームの時もリオが1番クラフト系上手かったから魔術覚えるのも早そうだよね」
ノアちゃんに言われ、そうだったかなぁ?と思いつつも、
「魔術の実践とゲームのクラフトって……違いすぎない?」と苦笑いする。
サンちゃんとランちゃんも確かに……とウンウン言っていた。
こうして、転生初日、みんな思ったより疲れていたようで、少し早めに寝ることにした。
ゼンが全員と従魔達にも清潔の魔術をかけてくれ、それぞれが目覚めた部屋を泊まるのに貸してくれることになり解散する。
部屋に向かう前、明日は魔物を狩りに行くということで、ゼンが全員に追加でアイテムを渡してくれた。
フード付きのローブ、膝下位のロングブーツ、今着ている物よりしっかりした服とズボン、ネックレスと指輪。
服以外はどれもマジックアイテムだそうで、性能は保証すると笑っていた。
本当はここから出立する時にくれる予定だったそう。
フード付きのローブはヒュドラの革で作られたローブだそうで防御力も高く、温度湿度の調整まで付与されたものだとか。
ネックレスは余剰魔力を自動で貯めておいてくれる効果があるそう。
指輪は魔力の回復速度をあげてくれるものらしい。
ブーツにも素早さが上がるような付与がされていると言っていた。
服とズボンには特に付与は無いが、肌触りがとても良い生地で仕上げられていた。
部屋のドアを開け、中に入る。最初に目覚めた部屋だ。その部屋は、真っ白な壁の部屋でドアを開けて正面に小さな窓、その左にベットが置いてあるだけの小さな部屋だった。
ベットに座り、ふぅ……と、一息つく。
色々なことが1日でありすぎて考える余裕がなかったけど、……1度死んだのか……
事故の時はオフ会の帰りでお酒も飲み酔っていた。 バスに乗った所までは思い出せるけど……乗ってすぐ寝ちゃったのかな……?
改めて思い出そうとしてみるが、同じところまでしか思い出せない。……事故にあった事も思い出せない。なので、1度死んだと言われてもあまり実感がわかなかった。
痛かった記憶があるのも嫌だけど……と、1人で考えながら苦笑いだ。
しかし、死んだというのは変えることのできない事実で……家族にも友達にも会社の同僚にも、もう会えないのか……と思うと胸がぎゅっと苦しくなり、涙が滲んでくる。
「リオ……?」
クレイが心配そうに声をかけてくれる。
「ん……?」
目を擦りながら、パッと顔を上げクレイを見た。
「大丈夫ですか?私はそばにいますよ。これからずっと、リオを守りますから……」
クレイの優しい言葉に、視界が歪む。
「……っ……ぅ……ぅ……うぅ……」
優しく抱きしめられ涙が溢れて止まらなかった。
クレイは私が泣き疲れて眠るまでずっと優しく抱きしめて背中をさすってくれていた。
クレイ:リオ……泣いていましたね……
前世の記憶があるというのは、どの様なものなのでしょうか…
あんなに泣いていたという事は悲しいのでしょうか…
大切な人と会えなくなったから…?
……もし……もし、リオと会えなくなったら……うぅ…それは悲しいです…きっとこんな気持ちだったのですね……
私はこんな気持ちになるのは嫌です!必ず!必ず!リオとずっと一緒にいます!
ここまで読んでくださりありがとうございます。