327、ビンゴ大会
「それじゃぁ始めるよー!」
楽しそうなノアちゃんの声が響いた。アシスタントはサンちゃんとミーシャがしてくれるようだ。
はーい!と元気な返事をする子供達。それよりさらに元気な返事をするクレイや従魔達……
クレイも従魔達も椅子が並べである場所より前でワクワクが隠せない様子で地べたに座っている。もちろん従魔達もビンゴカードを大事そうに持っていた。
ビンゴマシーンの前で今か今かと待ち構えているようだ。
ノアちゃんはビンゴのやり方を説明すると、早速ガラガラとビンゴマシーンを回し始めた。
……景品がキーホルダーだけなの、しくったかな……?
みんなのあまりにも楽しみにしている様子に、もっと豪華な景品を用意すべきだったかと内心焦るリオ。
だが、ガラガラとビンゴマシーンを回して数字を読み上げ、あった!あー、無かった……と、言っているのがもう楽しいようだ。
ノアちゃんが読み上げた数字があった時のテンションの高さといったら、何かの大会で優勝でもしたかという程だ。
大福を食べるのも忘れて、次の数字が読み上げられるのをワクワク、ソワソワしながら待っている。
ビンゴ大会初めてだと、こんなテンション上がるんだなぁ……
私も最初にした時ってこんなんだったのかな……?
キャッキャと楽しそうな子供達、大人達、客人達。
リオは初めてビンゴ大会を経験したのは小学生の頃だ。
子供会の行事で経験したのが最初だったと思われる。
んー……小学生の低学年の時だったと思うけど、あんまりよく覚えてないなぁ……
あんなにテンションが上がっていたかどうか思い出せないようだ。
でも、みんなは凄く楽しめてるようで良かった。
数字が読み上げられる度に、「うあああ!」「やったぁー!」と大騒ぎするみんなを見ながらほっこりした気持ちになるのだった。
横でゼンもうむむむむと楽しそうに唸ってるし、ビンゴ大会やって良かったなぁ!
しばらくビンゴマシーンから出た数字が読み上げられ、15個目を超えた頃だった。
「よっしゃぁ!!ビンゴー!!!」と、ハイテンションな声が響いた。
一番最初にビンゴになったのはジオだった。
ドヤ顔で「俺がいっちばーん!!」と周りの人に自慢して回っている。
やり慣れててもテンション高い人がいたわ!!と、驚いたのも束の間。
「ちょぉ、リオ、景品ないん??」
そう少し離れた場所から叫ぶように尋ねられた。
「あるよ」
「ビンゴ大会には景品がつきもんだろ!ちゃんと用意しとけよー」
「……あるよ?」
「だから……え?なんて??」
「だから、あるって!」
「マジ?!」
「うん、豪華景品じゃないけど」
「うぉぉ、マジかぁ!よっしゃぁ!!」と、ガッツポーズをするほど喜んでいる。
ジオは本当に子供みたいな性格だなぁ……と思いながらその様子を見ていると、あからさまに周りの人もソワソワし始めた。
景品があるという事に反応したようだ。
「景品欲しい」「何が貰えるの?」と、コソコソ話している。
ビンゴ大会は数字が揃ったらなにか景品が貰えるというのはみんな伝え忘れていたようだ。
リオが心配していた景品の豪華さは全く問題ではなく、みんな純粋にビンゴを楽しんでいたようだ。
「次の数字言うよー」と、ノアちゃんが声を張り上げる。
私はまだ穴が少ししか空いていないビンゴカードを、ゼンに預け、景品を渡すために前に歩いて行った。
ジオに「景品はなんだ?」とキラキラした目で見られ、「コレだよ」と渡すと「なんだキーホルダーかよ」とその顔はガッカリしたものに変わっていた。
「いらないならいいよ」
「いや、いるいる!ごめんって!」
「前にノアちゃんと作ったんだ」
「マジ?手作り?」
「手作り……というか、スキルで?」
「あー!……犬か」
「犬は嫌?猫もあるよ」
「フエに似たのはないん?」
そう言われ作っていたキーホルダーを種類ごとに並べていく。
「フエに似たのは……無いかな……」
ジオは、どれにしようかとしばらく悩むと、並べた物の中から気に入ったものを選び、すぐに魔法鞄に付けていた。
ジオは魔法腕輪をゼンに取り返して貰ってからも鞄の方もずっと使っている。
何を入れているのかは知らないが、中身を入れ替えるのが面倒臭いのだと言っていた。
ジオが鞄にキーホルダーを付けるのを見ていた子供達は「わぁ、いいなぁ!」「可愛いー」「俺も欲しい」と口々に言い、かなり羨ましそうだ。
他のデザインもあったぞとジオに教えて貰うと、みんな早くビンゴになって景品を選びたいと、尚更ビンゴに熱中していくのだった。
まさか、従魔達までキーホルダーを欲しいって言うとは思わなかったな……
キーホルダーを貰って喜んでいたのは子供達だけではなかった。
大人達はもちろん、遊びに来ていたコンラッド様達や各街のギルドマスター達もとても喜んでくれた。
さらに、クレイやフエ達従魔も。
マホの従魔はさすがにビンゴ大会には参加してなかったが、フエ達は一緒にやっていた。
なので特注で作ってもらった鞄にキーホルダーを付けてご満悦だ。
ちなみにオニキスもクレイ達に混ざってビンゴゲームに参加していた。あれにはかなり驚いた。数字も読める様なのだ。
賢い子だとは思っていたが、まさかここまでとは……
オニキスは鞄は持っていないので、貰ったキーホルダーはリボンで首元につけてあげた。
かなり気に入ったようで、見せびらかすように胸を張ってツンと顔を上げてみんなの前を歩いていたのはとても可愛かった。
こんな調子で少し多めに作っていたはずのキーホルダーの数は少し足りず、見本用のサンプルにと避けていた物まで全部出す事になってしまった。
サンプルに避けていたが、使っては無いし、まぁいいだろ……
キーホルダーを可愛いと鞄に付けてみたり、選んだデザインを見せあったりしている子供達やうちの奴隷達と違う反応をしているのが、またもや商業ギルドのマスター達だ。
「これはどうやって作るんだ?」
「こんな金具の構造を見るのは初めてだねぇ」
「素晴らしい!素晴らしいですよ!これは間違いなく売れますねぇ」
そんな事を言いながら絡まれた……
どうやって逃げようかと苦笑いを返しながら辺りを見ると、ガンツと目が合った。
「……!!」
ニヤリと笑いかけると、ガンツは目を見開いた。
金具の構造は、金属や加工に詳しいドワーフに聞くのがいいのではないかと、ガンツ達がいる方を指さした。
パッとそちらを見る商業ギルドのマスター3人。
げっ、やっぱり、嫌な予感がしたんだ……と、顔を青ざめるガンツ達。
ふぅ、これで質問攻めから逃げられるなと、したり顔のリオ。
「リオー!この、裏切り者ー!!」「俺らが作ったんじゃ無いのにー!」と叫びながら、ギルドマスター達から逃げるように走っていくガンツ達。
それを追いかけるギルドマスター達。
リオはいい笑顔でケラケラ笑いながらヒラヒラと手を振るのだった。
全員がビンゴになると、ビンゴ大会は終わりにした。
まだやりたいと言っている子もいたが、もう一度となるとなかなかに時間がかかる。
ビンゴに熱中し過ぎて今大福を食べているが、もうすぐ夕食の時間だ。
日が傾いて来たので、次の準備だ。
サンちゃんとライトアップの準備もしていた。
「夜はやっぱりこれだよねー」
「リオは花より団子かと思ってたわ」
「えー、サンちゃん!酷いよー」
「あはは、ごめんごめん、でも食べるの好きだろ?」
「それはみんなそうでしょ?」
「……それもそうか?」
そんな事を言いながらセッティングが終わった頃には、薄暗くなってきていた。
「いくよー!」
「うん!」
そう声をかけ、魔力を流してライトをつけた。
明かりは数本ある桜の木を四方八方から照らし出している。
薄桃色の桜の花が、光に照らされとても美しい。
空の青が濃くなって来ると尚更光に照らされた桜の花が引き立てられていく。
その様子に、あちこちから「凄いー!」「なんて美しさなの……」「きれーい」「昼とはまた違った美しさだな」と感嘆の声が上がっている。
「ライトアップしてよかったね」
「そうだな」
このライト、電球で作られたものではなく魔道具だ。
ゼンに作り方を聞いて、サンちゃんが設計を書いてくれ、リオのスキルで作ったものだ。
魔力を込めると何度も繰り返し使える。
魔法は本当に便利だなぁ……
今日の晩御飯も屋台料理だ。
お腹が空いた子から、お昼に食べた物とは違うものを選んで美味しそうに食べているようだ。
今日はもう思い思いの過ごし方をして、眠くなった人から家に帰るのだろう。
「サンちゃん、何か食べいこ!」
「そうだな、ライトはこれで大丈夫そうだしな!」
2人で何食べよっかなーと話しながら屋台の方へ向かっていると、コンラッド様に引き止められた。
「サンとリオに相談があるのだが……」と、神妙な面持ちで言ってきた。
いつもとは違う雰囲気に、どうしたのかとサンとリオは顔を見合わせる。
とりあえず、話を聞いてみることにした。
お腹すいたからと、少し待ってもらい屋台の料理を山ほど受け取って来ると、コンラッド様をはじめ、ジョヴァニー様やクリストフ、商業ギルドのマスター達、冒険者ギルドのマスター達が集まっている席に行く。
今日は結構このメンバーで何か話し合いをしていた様だったが、何かあったのだろうか?
私達にはあまり関係ないことかなと、気にせず遊んでいたが、まさか呼ばれるとは……と、少し厄介事の予感を感じながらサンちゃんと一緒に席に着く。
神妙な面持ちで話された相談事とは、ゲートを使って各街同士を行き来できるようにして欲しいと言うものだった。
「え?!やだよ!」
「な?!リオー、そこをなんとか……」
「誰でも使えるようにするって事でしょ?」
「う、うむ……」
「ダメ!絶対!」
「やはり無理か……」
「……そうだよな……はぁ……」
「それならリオ、サン、何か代案は無いかな?」
今は街同士を行き来するのにかなりの日数を要するし、魔物に襲われる危険性も高い。
特にペルカの街とアヒンの街は地図上だと隣同士だがその距離は隣とは言えないほどに遠い。
死の森も近く行き来出来る者も少ないので何とかしたいとの事だった。
それを集まってからご飯を食べている時や遊んでいる時以外は話し合っていたそうだ。
……いや、それほとんど遊んでたって事じゃ……と思ったが、聞き流して何かいい方法はないかと考える。
「サンちゃんどう?」
「んー……確かにそれだと箱庭経由になるけど、ゲートを抜けてって方法は1番楽だよな……」
「えー、サンちゃんまで……」
「専用の建物を建ててその中にゲートを置いて行き来してもらうとしても、勝手に建物の外へ出る人が現れる可能性もあるからな……」
「うん」
「やはりそうだよな、見張りを立てるとしても、確実に防げるかと言われると……」と、クリストフも難しそうな顔をしている。
「魔物に襲われないだけなら何とかなるけど、日にちも短縮するのは無理だよねー……」んー……と考えながらポロリとそんなことを言うと。
「は?!」
「魔物に襲われないようにできるのか?」
「それはどんな方法だ??!」
「うわっ?!……みんな思いつくような方法ですけど……?」
みんなで身を乗り出して聞いてくるのでリオは驚きに目を見張る。
「もったいぶってないで、早く教えてくれ」
「そうだよ、早く教えておくれ!」
「う、うん、えっと、地下道を作ったら魔物には襲われないんじゃないかな?」
「地下道……だと?!」
「な?!」
「それは……」
「リオ!ペルカからアヒンまで地下道など作ろうと思ったらどれだけかかると思っておるのだ!」
「あー、結構遠いですもんねー?」
「そうだぞ!土魔術の使い手を総動員したとしても……1……いや、2……」
「ですよねー、2ヶ月くらいはかかりそうですよね」
「「……は?」」
「「……え?」」
「「……な?」」
「ふ、二月じゃと??!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、2年ではなく?」
「え?!」
「「え……?」」
話が噛み合わなさすぎて、しばしの沈黙が続いた後、コホンッと咳払いをしてコンラッド様が話し出した。
「リオ、本当に二月程で地下道を通せるのか?」
「広さにもよりますけど……」
「馬車2台が通るほどの広さだとどうだ?」
「大丈夫だと思いますよ」
「おお!そうか!」
「でも、私はしませんよ?」
「は……?!な、なんだと?」
「いや、だって、良い案は無いかと聞かれたんで答えただけですからね」
「うっ……」
「私はこう見えても色々忙しいんですよ」
「む……」
「穴掘るだけなんだから誰でも出来るでしょ?」
「あ、穴掘るだけって……お前なぁ……」
「リオ、今は忙しくとも、冬はどうだ?」
「え?冬?」
「そうだ!」
「確かに冬は雪が凄くて街の外には出られないからねぇ」
「確かに!冬の時期に地下道を通してもらえれば、春からは行き来ができるようになるな!」
「え?え?ちょ……」
「冬の予定はまだ無いのだろう?」
「……今のところは……」
それなら決まりだ!どのようにするか?と、地下道を通すための話し合いが始まってしまった……
まだやるとは言ってないのに……あの様子だと何を言っても無駄なんだろうな……はぁ……
リオの意見はどこへやら、勝手に予定を決められるのだった。




