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323、箱庭の来訪者

結局、デビッドの着いて行くという言葉の通り、リオと豹の牙の3人は2階にあるギルドマスターの執務室に通された。


4人がけのソファーを勧められて座るが、ガタイのいいデビッドがかなり幅を取っていて狭くてぎゅうぎゅうになりそうなので、リオはマジックリングから椅子を1つ取り出してそちらに座った。


デビッド達の向かいのソファーをスタンリーさんに勧められたが、スタンリーさんの横に座るのもな……と、椅子で大丈夫だと断った。

デビッド達は「そんな椅子どこから出てきたんだ?」と驚いていたが、どこからだろ?と適当に流して、本題に入ることにした。


スタンリーに声をかけるだけの簡単な用事のはずが、豹の牙に、いや、主にデビッドに絡まれかなり時間がかかっている。リオは早く家に帰ってお花見に参加したいのに……とため息を吐いた。


改めて、下で何を揉めていたんだい?とスタンリーに尋ねられ、リオは事の成り行きを話した。

あーでこーでしつこくてー!と話すリオに対して、しつこくねぇよ!ケチケチすんな!と反論してくるデビッド。

スタンリーを始めステファンとケンドールも2人のやり取りを見て苦笑いだ。


どうやらデビッドは興味が湧いたことに対してはとことん貪欲なようで、納得するまで諦めない性格のようだ。

今回デビッドが興味を覚えたのは、リオとスタンリーがなぜ知り合いなのか?ということもだが、色々謎が多いリオ自身に興味があるようだ。

段々話は逸れ質問内容がリオの出自のことにまで飛び火していた。


さすがにここまで行くとステファンがいい加減にしろ!とデビッドの頭をペシッと叩いていた。


話せば話すほどデビッドには話が通じなかった。

なので、スタンリーさんを家でするお花見に誘いに来た事を聞くと、家にまで着いてくると言い出した。


ええー?!と嫌そうな顔をするリオの横で、こうと決めたらテコでも動かないのだとケンドールが呆れた顔をしていた。


そして結局デビッド達3人も着いてくることになった。

スタンリーが豹の牙は最近実力を伸ばしてきている信頼のおけるパーティだと後押しするので、断りずらかったのだ。

何かあればスタンリーが責任を取るという事で話が纏まってしまった。


仕方ない……こうなったら、性格が合いそうなジオにお世話を任せよう……うん、それが良さそうだ!


リオは帰ったら即ジオに丸投げする気満々で、行く準備のできた4人を連れて家に帰るのだった。



◇◇◇◇◇


「リオ、遅せぇじゃん」

「先に始めてたよ」

「あれ、スタンリーさん!と、そっちの人達は?」

「呼ぶの領主様達だけじゃなかったんだな?」


箱庭に入ると、スタンリーも豹の牙の3人も、凄い!何だここ?とかなり興奮していたが、早く行くよ!とリオは声だけかけて桜の木のある方へスタスタと歩いて行った。

4人も周りをキョロキョロと興味深げに見渡しながらも着いてきた。

そして、屋台で料理の準備をしていたジオ、ノアちゃん、サンちゃん、ランちゃんに声をかけられた所だ。


4人で海鮮の網焼きの準備をしているところだったようだ。網の上に大きな貝や串に刺さったエビやイカを並べている。

横に並ぶ屋台の方は、もう既にいい匂いがしている。

リオは屋台をちらりと見ると生唾を飲み込み、早く紹介して屋台に行こうと、さっさと連れてきた人達の紹介を始めた。


「こちらはルゼルの冒険者ギルドのギルドマスター、こっちは豹の牙だよ。んで、こっちは私の兄弟であっちからジオ、ノア、サン、ランだよ」

リオはサクッと紹介するとまた屋台の方をチラッと見ている。


「「よろしく!」」サンちゃん達は声を揃えて言った。


「初めまして、僕はスタンリー・ジェンキンスだよ、気軽にスタンリーと呼んでね。サンは久しぶりだね」


「はい、お久しぶりです」

「「よろしくお願いします!」」


「俺は豹の牙のリーダー、デビッドだ、よろしくな!」

「俺はステファンだ、よろしく」

「ケンドール、よろしく」


「「よろしく!」」

「いらっしゃい!」

「楽しんで行ってな!」


「すげぇいい匂いだな」

「うん」

「やべぇな」

自己紹介が終わると、豹の牙は食べ物の匂いに意識が持っていかれているようだ。屋台の料理が気になって仕方ないという様子でソワソワしている。


「だろ?美味いもんばっかだから、いっぱい食ってくといいぜ」

「だな、リオの奢りだろ?」


「え?!……まぁいいけど」


「おっしゃ!」

「サンキュー!」

「ありがと」

奢りと聞いて上機嫌だ。

リオは、無理やり着いてきて遠慮のない人達だなと少し呆れた顔をしていた。


「腹減ってるなら、あっちが早いな」

「海鮮の方はまだちょっとかかりそうだ」

「酒は?飲めるん?」


皆はとても歓迎ムードだ。


「そういうことで、ジオ、その3人よろしく!」

これはチャンスとばかりに、豹の牙が返事をする前に3人をジオに押し付けようと声をかけた。


「は?え?俺?!」


「うん、ジオどうせビール片手にずっと海鮮食べてそうじゃん?」


「そ、そんな事ないけぇ」


「そう?」


「ッ……多分……」


「俺らは呑放題(それ)がいいな」

「朝から酒飲めるとか最高だな」

「ああ」

「確かにいいね、ギルドの仕事抜けてきた負い目が少しあるけどね」


「え?スタンリーさんはこっちだよ?」


「え?!僕は別なのかい?」

リオにこっちだと言われると、スタンリーは箱庭に入った時よりも驚いた顔をしていた。


「領主様に会いたいって言ってたから呼んだんだけど?」


「あぁ!!そうだったのか!」


「あー、そういうこと?」

「コンラッド様達ならあっちにいたぞ?」


「ありがとう、行ってみる!」


リオはスタンリーを連れて、ランちゃん達が教えてくれた方へ歩いていく。



あちこちで子供達の遊び回る楽しそうな声が響いており、走り回る子供達の中にゼンも混ざっている。


え、ゼンも走ってる……楽しそうだからまぁいいか。


大人達はもう既にお酒を片手に談笑している。その中にクレイの姿もあった。サンちゃん達の従魔も一緒のようだ。

マホの従魔達は、数匹だけ傍におり、他の子は少し離れたところを走り回っていたり、子供達と戯れていたりしているようだ。

花の咲いている畑も近くにあり、走り回るには少しスペースが狭そうだ。


そんな中、リオが昨日用意していた赤い布の掛けてある長椅子に座って話し込んでいる集団があった。

かなり真剣な顔で話している。


あ、いたいた!


「おはようございます」


「おお、リオ!」

「遅いではないか!」

「先に飲ませて貰っているよ」


真剣な顔で話し込んでいたのはコンラッド様、クリストフ、ジョヴァニー様、それから3人が連れてきた人達だった。


「はい、どうぞどうぞ……」


「ん?そちらは?」


領主様達の横に、領主様達が連れてきただろう人達がいたので、挨拶をしようとすると先にコンラッド様にスタンリーさんの事を聞かれた。


「こちらはルゼルの冒険者ギルドのギルドマスターです」


「初めまして、スタンリー・ジェンキンスと申します。お会い出来て光栄です」


「ほぅ、君がルゼルのギルドマスターか、よろしく頼む」


リオはこれでスタンリーに頼まれていた領主様達との顔繋ぎは出来たなと満足気にお互い挨拶を交わしているのを見ていると、おそらくコンラッド様に連れてこられたのだろうローカストに話しかけられた。

領主様達の傍には、護衛の騎士達以外に各街の商業ギルド、冒険者ギルドのギルドマスターが座っていたのだ。

真剣な顔で話し込んでいたので、お互いの街の商談なんかをしていたのだろうか?


「リオ、久しぶりですね」


「ローカストさんこんにちは、そうですね」


「最近は何をしていたのです?たまにはペルカの冒険者ギルドにも来てください」


「最近は冒険者の仕事じゃない事を色々頼まれてバタバタしてたんですよ」


「そうなのですか!魔物の討伐なんかは全然してないんですか?」


「あー……してない事も無いですね」


「ゼバンもリオが全然訪ねてこないと寂しそうにしていましたよ」


「え、ゼバンが?じゃぁ近々ゼバンに会いに行きますね」


「……ゼバンには会いに来るんですね?」


「ん?」


「私には会いに来てくれないじゃないですか?」


「いや、ギルドマスターに気軽に会いになんて行けないですよ」


「構いませんよ、会いに来てください」

とてもいい笑顔で言われた。


「え……」


「なんか嫌そうな顔ではありませんか?」


「い、いや、そんな事はないですけど……」


「本当ですか?」


ゼバンは話しやすいし友達に会う感覚で会いに行っていたが、ローカストは違う。それが顔にバッチリ出ていたのだろう。ローカストにジト目を向けられた。

焦ったリオは話を変えることにした。


「そういえば、凄ーく大きな魔物も解体して貰えますか?」


「大きいって、どのくらいです?」


「凄く凄ーく大きいです!」


「凄くでは分かりませんよ……しかし、場所が確保出来れば可能でしょう」


「本当ですか?」


「ええ、リオが沢山の魔物を持ち込むので解体のできる者を増やしたのですよ。最近はリオがあまり魔物を持ち込まないので暇そうにしていますけどね」


「あー、そうなんですね、最近は行ってもダンジョンだったから、解体の必要が無かったんですよ」


「なるほど、そういう事でしたか!」


「はい」


「それで、その大きな魔物は一体何の魔物ですか?」


「サメ?多分サメです」


「へ?サメ?」


「空を飛んでたんですよ」


「え……」(サメが……?)


「倒すのも苦戦して、大変だったんです」


「へ……?」(リオが苦戦したのですか?!)


魔法腕輪(マジックリング)に入れたまま忘れてたのをさっき思い出して」


「そ、そうなのですね」


「私が見た魔物の中では1番大きかったです」


「な?!1番?!そんなサイズなのですか?!り、リオ、いつ頃持ってきますか?こちらにも準備が必要そうです」(リオはメガスパイダーを倒したはずです?それよりも大きかったということでしょうか?……街中では無理かもしれませんね、帰ったら準備しておかなくては……)


「え?んー、近々?」


「……分かりました、ゼバンにも伝えておきます」(帰ったら場所の確保と解体用ナイフと人手の確保と……後でセノーデルにも相談しなくては)


「はーい、よろしくお願いします」




さてと、とスタンリーを見ると、領主様達と談笑している。

領主様達だけでなく、他のギルドマスター達とも上手く馴染めていそうだ。最初にガチガチに緊張していた硬い表情と違って、今は楽しそうに話しているようだ。良かった。

ペルカの街からは冒険者ギルドマスター、ローカスト、商業ギルドマスター、セノーデル。

アヒンの街からは冒険者ギルドマスター、ロドリゴ、商業ギルドマスター、ファビアン。

セルジュの街からは冒険者ギルドマスター、ハロルド、商業ギルドマスター、ロザリンダ。

仕事は大丈夫だったのだろうか?と心配になるほど、トップが全員が集まっていた。

リオが呼んだのでは無いので領主様達が呼んだのだろう。


んー、まぁ、領主に呼び出されれば断りずらいよな……


リオは若干仕事の邪魔してすみませんという気持ちで、ローカストさん以外のギルドマスター達にも軽く挨拶をして、屋台の方へ戻っていくのだった。




屋台の方へ歩いていると、足元で「にゃぁ」と鳴き声が聞こえた。

「ん?」

声のした方を見ると、オニキスがしっぽの先をフリフリと揺らしながらこちらを見あげている。


可愛い!


大きな目で見上げる上目遣いに顔をデレッと崩してオニキスを抱き上げた。


「屋台の方に行くけど行く?」


「にゃ!」


オニキスを抱いたまま屋台の方へ戻ると、オニキスを見てデビッドが叫んでいた。

「なーーー?!そ、そいつは……」

「え……あ、あの時の猫か?!」

「うっ……」

豹の牙の3人はかなり驚きと少しの怯えが見え隠れする表情で警戒している。


それを見て、ノアちゃん達がどうしたのかと疑問の声を漏らしていた。

3人は、その疑問の声に、若干恥ずかしそうに訳を話すと、ノアちゃん達に爆笑されていた。


「私の家にいるって言ったじゃん……」

リオも呆れ顔だ。


「にゃ!」

オニキスは、またヤルのか?とでも言いたげに可愛いふわもこの指先から鋭い爪を立てて見せている。


「い、いや、そうなんだが……」

オニキスの爪を見て、3人とも引っかかれた場所を無意識に押さえている。


「謝ったら許してくれるかもよ?ね?」


「にゃぁ!」


「ほんとかよ?」とステファンが胡乱げな顔をした。

「早く謝るぞ!」ステファンの言葉を遮るようにデビッドは1歩前に出た。

「え?おい、デビッド?」


「こないだはすみませんでした!」かなりの声量で、オニキスに頭を下げた。


「にゃぁ!」


「……えっと?なんて?」


「わかんない」


「おい!リオー!」


「あはは」


「にゃぁ」


「ん?」


リオがなんて言ったか分からないと言うと、オニキスはしょうがないなとでも言いたげに、リオの腕からぴょんと飛び降り、デビッドの足元にトコトコと歩いていくと、足をテシテシと叩いた。


「え……?」


「にゃぁ!」


「許してあげるって言ってるみたいだね」


「本当か?ありがとな!ほら、お前らも謝れ!」


デビッドに言われ、ステファンとケンドールは困惑しながらもオニキスに謝り、デビッドと同じように足をテシテシと叩かれていた。


「よし!和解出来たようだし、お花見を楽しもー!」


「にゃぁー!」


「いや、リオの場合お花見ってか、食いだおれじゃないか?」

「うん、食べる気満々の顔してるよね」


「いいじゃん!楽しみにしてたんだよー!」


「サザエみたいなん焼けとるで!」


「本当?美味しそう!」


「ビールかけて焼いたけ、美味いよ」


「え?ビールなんかかけたの?」


「おう、日本酒でも良かったんじゃけど、ビール持っとったけビールかけたんよ」


「え?飲みかけの?」


「そんな嫌そうな顔すんなや!ビールでしても酒蒸しみたいになって美味いけ、食べてみ!」


「うん……」


「大丈夫じゃけ、ビールはアルコール入っとるけ殺菌されとるけ」


「うん……うん?」


「リオそんな潔癖じゃないじゃろ?」


「うん、まぁそうだけど」


受け取ったサザエみたいな貝はかなりの大きさだった。この世界の物は何でも大きい。このサザエのような貝も1つ1つのサイズが子供の頭くらいの大きさがある。

足元でにゃーにゃーと叫んでいるオニキスの分も貰うと、箸で身をクルクルと巻貝の中から取り出し、フーフーと息をかけて冷ましてから、ヨダレを垂れそうな顔で待っているオニキスに差し出した。


パクリと1口齧るなり「にゃーーーー!!!」と幸せそうな声が響いた。


「美味かったみたいだな」あはは


「うん、私も……ん!美味しー!」


「だろー!」


「うん、この弾力、噛めば噛むほど溢れる旨み、少しビールの風味がするのがまたいい!それに、ちょっとつけた醤油が、最高だよ!!」


「にゃぁ!!」


サザエのような形の貝は味もサザエのような旨味でとても美味しかった。日本で食べていたサザエよりも身はとても柔らかかった。


サザエみたいな貝以外にもホタテのような貝、アワビのような貝、エビやタコやイカや魚と、沢山の海鮮を用意してくれていた。そのどれもがとても大きくて食べごたえがありそうだ。

大人達が順番に担当してくれている屋台の方も、1種類ずつ貰ってきて、皆が座って話している屋台の前ではなく、後ろ側にテーブルと椅子を取り出してオニキスと食べ始めた。


ノアちゃん達も机欲しいと言うので、ランちゃんが増やしてくれていた。


屋台は焼きそば、たこ焼き、とうもろこし、肉串、唐揚げ、フライドポテト、餃子、浜焼きを準備してくれていた。

お好み焼きかな?と思っていた鉄板は餃子だったようだ。

それからデザートもあった。

りんご飴、いちご飴、クレープ、綿あめだ。

お祭り感が凄い!


浜焼きを堪能しながら次は何を食べようかなと考えていると、ノアちゃんにお昼はお花見の定番を用意しておいたから程々にねと注意を受けた。

お昼も楽しみだ!


浜焼きを堪能して、たこ焼きをフーフーしながらオニキスに食べさせていると、サンちゃんが、「そういえば、あの子らは誘わなかったのか?」と声をかけてきた。


「あの子ら?」誰だ?と首を傾げていると。


「ルゼルの街で従業員確保したって言ってたろ?」


「あーーーーー!!!!」


「え?どした?」


「すっかり忘れてた!」


「あー……」


「誘いに行ってくるよ!」


「お、おう、一緒に行こうか?」


「んーん、大丈夫!いってきまーす」


「リオ、お昼までには戻れる?」

席を立つとノアちゃんに尋ねられた。


「うん、片道15分くらいだからすぐ戻るよ」


「了解!気をつけてねー」


「ありがとう」


リオは急いでルゼルの街へ向かうのだった。

ローカスト:セノーデル!大変です!

セノーデル:ん?どうされましたかな?

ローカスト:リオがとんでもなく巨大な魔物の解体を依頼してくるそうなのです

セノーデル:へ?とんでもなく巨大な?ですか?

ローカスト:ええ、近々持ってくると言っていましたので、今から販路の確保などを頼みたいのです

セノーデル:ほほぉ、一体なんの魔物ですかな?

ローカスト:サメのような魔物だと言っていました

セノーデル:サメ……ですか?

ローカスト:いつもと同じ買取条件だと、魔石と肉以外は買取でと頼まれると思うのです

セノーデル:サメ系の魔物は骨も歯も皮も有用ですからなぁ

ローカスト:そうでしょう

セノーデル:すぐに買い手はつきそうですね

ローカスト:普通のサイズなら、それでいいでしょうが、巨大なのですよ

セノーデル:巨大と言われても、想像が着きませんからねぇ

ローカスト:リオが今まで見た中で1番だと言っていたのです

セノーデル:へ?……それは尚更想像がつきませんね……

ローカスト:想像がついてもつかなくても何とかしてください!

セノーデル:え?や、ちょ、ローカスト?

ローカスト:そちらは任せましたよ!

セノーデル:いや、そんな、無茶苦茶な……





いつも読んでくださりありがとうございます!

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