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29、出立の決断

茹でたじゃがいも、トウモロコシ、生のキュウリやトマト、果物をお腹いっぱい食べ、魔物狩りに行く準備をする。

ローブを羽織(はお)り、(やり)を手に持ち出発する。


「今日はどっち行く?」


「ガラス用の砂がまた欲しいと言っていましたよね?」


「うん、今日あるだけ全部瓶にしちゃったから。まだ使ってない瓶はいっぱいあるんだけど、街へ向けて出立するまでにまた取りには行きたいなー」


「では今日行っておきましょう。もうそろそろ出立するつもりなのでしょう?」


「……うん。だけど、街までちゃんと行けるかすごく不安で、なかなか気持ちが固まらないの……」


「お友達がみんな出ていってしまったから不安なんですね」


「うん……(みんな)怖くなかったのかな?あんなに魔物がいっぱいなのに」


「どうでしょうか?ジオは楽しみが勝っていた感じでしたね?」


「あはは、そうだね。ジオは早く行きたいって騒いでたもんね!」


「他の方も楽しみにはしていそうでしたが……?」


「そうだよね。私、こんなにビビりで心配症だったんだって、初めて知ったよ……日本にいた時はそんな事……そもそも日本は、魔物なんか居なくて、外に出るのも安全で……」


「リオ……」


歩を止めてしまったリオを心配そうにクレイがギュッと抱きしめる。


「大丈夫ですよ。私はずっとそばにいます」


クレイは周りを警戒しつつ、リオが落ち着くまで抱きしめ背中をさする。

普段はあまり不安な感情を表に出さないので珍しい。

みんなが街へ向かってしまって、早く出立しなければという焦りもあるのかもしれない。




「ありがとう……落ち着いた。へへっ、ごめんね」


「いえ、全く問題ありません。……今日はやめておきますか?」


「んーん、大丈夫!今日最後の調整して、明日出立しよ!」


「え!?……随分急ですね。……よろしいのですか?」


「うん!まだ、街に着いてからちゃんと生活していけるのかとか、まず街までたどり着けるのかとか、色々心配だけど、クレイがいるもんね!」


「ッ……はい!」


最高の笑顔を向けられて、クレイはドキリと心臓を鳴らす。

リオ……可愛すぎます。と抱きしめる手に力を入れた。


クレイの心情など知らないリオは気合いを入れている。


「よし!とりあえず、川まで行くぞー!おー!」


「ふふ、はい」



川までの道は、昨日木を切り見晴(みは)らしが良くなっている。

また木も採取しつつ進んでいく。


カサっ


カサカサッ


少し前の方の木の葉が揺れている。


「リオ、何かいます!」


「なんだろ?」


警戒しながら周りを見ていると、前方だけでなく横の木の葉も揺れる。

ガサガサ

バッ「キキィー!」


猿が飛び出してきた。


「シャドーバインド」


1匹拘束すると、続いて前方からも飛びかかってきた。


ダッ「キキィー!」


「シャドーバインド」



「ライトボール。……ライトボール」


「キャイン」「ギャン」


「倒せた?」


「はい!命中力が随分上がりましたね」


「へへ!ありがとう!この魔物は……ヨザルかな?」


~ヨザル~

Dランクの魔物

夜にのみ行動する珍しい猿の魔物。牙と爪が強く素早い動きで攻撃をしてくる。


「2匹だけで良かったですね」


「うん。集団で襲って来ることもあるらしいからラッキーだったね」



昨日木を切って見晴らしが良くなっているので、今日は昨日より随分(ずいぶん)手前(てまえ)から川が確認できた。


「あ、川見えてきた!」


「ほんとですね!」


ガサガサガサガサ バキバキバキっ


「グァァアアアア」


「ッ……!シャドーバインド」


狩り初日にも出てきたブルーオーガだ。


ギチギチ ミチミチッ

「グァァアアアア」

拘束を外そうと暴れている。



「ライトボール」


ズパッ

「グロロォ……」

ドスーン


テッテレー


「リオ、ナイスです。最初は外していたブルーオーガも眉間に1発ですね」


「は、外してたのは忘れてよー。そ、それより、さっきのヨザルの時はレベルアップ音しなかった気がするんだけど?」


もー、と恥ずかしそうに焦っているのをごまかすように話題を変える。


「確かに……。レベルもだいぶ上がっていましたから次のレベルに経験値が足りなかったのかもしれませんね」


「あ、そか!倒せば毎回レベル上がるわけじゃないんだね!」



ブルーオーガとヨザルの血抜きをしてくれるというのでクレイに預け、リオはガラス用の砂の採取を始める。


ザクザクと細かい砂を中心に収納に放り込んでいく。


「ん?石も資材として使えるの?えっと、石垣や石畳…いいじゃん!じゃぁこの辺のもついでに取っていこ!」


砂をかなりの量とったあと今度は石も拾っていくようだ。

川下に向かって石を拾い、収納にほうりこみながら進んでいく。

ヒュっと、手を伸ばした石の上を影が走った。

なんの影だろう?と上を見ると大きなコウモリが飛んでいた。


~エノルメコウモリ~

Cランクの魔物

かなり大きい種類のコウモリで体長は1メートル、大きいものだと2メートルにもなる。

素早さは早く、風魔術を操り攻撃してくる。



「キィキィ」

シュンッ


タッ「わぁ!」


ズバァーン


コウモリから風の刃が放たれる。

驚き、横に飛び退けると地面に当たり、地面が()ぜた。


「キィー」

バシュッ


タッ

「ちょ……!」


バァーン


避けたそばから、今度は風の玉が飛んでくる。


バッ「ライトボール」


風の玉を避け、振り向きざまにライトボールを飛ばすが外れてしまった。


「シャドーバインド」


「キィー……?!キ??」


また風の玉を打ち出そうとしたが、玉は途中で霧散(むさん)して、コウモリはクレイの影に拘束される。


「リオ!今です!」


「ライトボール」


ズパッ

「キ……ッ……」

ドサッ


テッテレー


「リオ、大丈夫でしたか?」


「うん!大丈夫!ありがとう。」


「ふぅ、良かったです。何故こんなに移動していたのですか?振り向くといなくて驚きました……」


「あー……ごめん。石も資材になるみたいだったから石拾いながら移動しちゃって……」


「うっ……つ、次からは気をつけてくださいね!」


「はーい!」


ごめんーと手を合わせ、上目遣(うわめづか)いで謝るリオに、顔を少し赤らめフィッと目線を逸らしながら注意する。


そして今日はもう家に帰ることにした。

帰り道、明日はいつ出発するかという話になった時、クレイが新しい魔術を覚えたのだとリオに伝える。


闇属性Lv15で習得可能になる[シャドークイック]という魔術だ。

シャドークイックは影の中を移動できる魔術だ。

クレイが魔力から生み出された為か、クレイの影とリオの影が繋がっているとの事。

亜空間にいるか、リオの影の中に居れば、昼間でも移動できそうだ。


「それなら昼間も進めるね!」


「はい、ただリオに負担をかけてしまいますが……」


「ん?私はどっちみち歩かないとダメなんだから全然大丈夫だよ!」


話している間に家に着いた。

帰りは魔物には遭遇しなかったようだ。


ゼンに明日出立しようと思っていることを伝えると、急な話にも関わらず、そうか。と優しく頭を撫でてくれた。

いつもそっと背中を押してくれる言葉や行動がほんとに優しい。

暖かい気持ちになりながら、部屋に戻り休むことにした。

ゼン:リオも出立する決意を固めたようじゃのぉ…せっかく賑やかになったと思うたら次々と旅立って行くのを見送るのは少々寂しいもんじゃの…

リッチになる前から1人じゃったし、もう寂しいなんて思う事もないかと思うておったが…

どこ子も良い子ばかりで情が移ったのかのぉ…





読んで下さりありがとうございます。


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