23、クレイの罪悪感(クレイ視点です。)
おやすみなさい。とベッドに入りしばらく。
隣からすぅすぅと寝息が聞こえてくる。
パチッと目をあけ、そっと隣を見る。
「リオ……」
今日は朝早くから、夜も遅くまで動き回っていて疲れたのだろう、よく眠っている。
血を貰うのを忘れてお腹がすいてきた。でも眠ったばかりのリオを起こす訳にもいかない。
首筋に牙を立てたら気づくだろうか?
目を覚ましてしまうだろうか?
じっと見つめていると、上を向いて寝ていたのが寝返りをうち、横向きになった。ガーネットのような赤く艶のある美しい髪が肩から後ろに流れ落ち、細い首筋があらわになる。
心臓がドクンと跳ね、ゴクッと喉を鳴らす。
はぁ……はぁ……
首筋に近づきすーっと息を吸う。
「いい匂い……」
ずっと嗅いでいたいような魅力的な匂いがする。
それはクレイだけが感じる魔力の匂いなのか、血の匂いなのか、はたまた別の匂いなのか……。
しばらく首元でスー……ハー……スー……ハー……とその魅力的な匂いを堪能しているとくすぐったかったのか、ただの寝返りか、リオが再びコロンと仰向けになる。
「ん……ぅ……」
起こしたのかと、ドキドキしながら見ていると、またすぅすぅと気持ちよさそうな寝息が聞こえてくる。
ホッと胸を撫で下ろし、またどうしようかと見つめる。
口と口を合わせて魔力だけ吸収させてもらおうか……
でも血が貰えた方がありがたい……口から魔力を貰うのと血を飲むのでは満腹度が全然違う。
手や足からでも血を吸えないことはないが、手や足だとかなり大きく傷を入れないと血がなかなか出てこない。
首筋に牙を立てた方が小さい傷で痛みも少ない……はずだ。
意を決して、顔の近くに肘をつき覆い被さるような体勢になり、反対の手で顎に触れクイっと少し横を向かせ、首筋に顔を近づけていく。
ドクンドクンと心臓がうるさい。
ゆっくり口をあけ、牙を尖らせ首筋に噛み付く。
ぴゅくっと血が吹き出した。
ジュッ……ジュッ……
あぁ……なんて……甘美な味わいなんだろう……。
甘くねっとりとしていて……。
それでいて爽やかで後を引く……ずっと味わっていたい……そう思わせる魅惑的な味だ。
染み渡る……身体のすみずみまで……。
「んぅ……」
リオの声に、パッと口を離し、起こしてしまったかとドキンドキンと心臓が跳ねる。
目は開かず、反応もなくなった。
垂れかかった血をペロリと舐め取り、まだジュッ……血を啜る。
気づかれないよう、起こさないようにいつもより吸う力も弱めて吸う。
ペロッペロッと傷を塞ぎ証拠隠滅。
きっとバレてもそれくらいのことではリオは怒らないだろう。
対面初日に勝手に飲んだと謝った時も怒られなかった。
しかし許可を取らずに肌に牙を立て血を飲むことがクレイは悪いことをしている気分だった。
こういうのを罪悪感と言うのでしょうか……。
明日からは寝る前に忘れないよう血を分けてもらおうと心に誓うのだった。
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